トヨタ新型86登場! 直系の先祖「AE86」はどんな車だった?
じつはAE86型は大ヒットしたわけではない?
AE86型 レビン/トレノに搭載されたエンジンは、新開発された1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジン「4A-GEU型」で「レーザーα」と呼称。1.5リッターSOHCの「3A-U型」をベースにボアを77.5mmから81.0mmに拡大して1.6リッター化し、吸排気各2バルブの16バルブDOHCヘッドを組み合わせ、可変吸気システム「T-VIS」が搭載されました。
出力はクラストップとなる最高出力130ps/6600rpm、最大トルク15.2kgm/5200rpm(グロス)を発揮。
組み合わされたトランスミッションは当初5速MTのみでしたが、GTアペックスとGTには高性能エンジンを手軽に楽しみたいニーズに対応するため、後に4速ATが設定されています。
また、最高出力85馬力の1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンの「AE85型」もラインナップ。スポーティな「SR」や、女性ユーザーをターゲットとしてパワーステアリングやバニティミラーなどを標準装備した「レビン GLライム」と「トレノ XLリセ」も存在しました。
サスペンション形式は全車フロントがマクファーソンストラット、リアがラテラルロッド付4リンクのリジットアクスルで、リアサスペンションはすでに時代遅れ感がありましたが、構造が単純で耐久性が高く、プライベーターでも容易にショックアブソーバーの交換ができるなどのメリットがありました。
さらに、リジットアクスルは路面追従性や限界性能は高いとはいえませんでしたが、リアタイヤがスライドしてもコントロールしやすい特性で、FR車の醍醐味である「アクセルで曲がる」を存分に楽しめる挙動を実現。
ブレーキはGTアペックスとGTVがフロントをベンチレーテッドタイプとした4輪ディスクを採用し、GTのみリアブレーキがドラムです。
ちなみにAE86型はシリーズを通じてスペックはほとんど変わっていませんが、マイナーチェンジは2度おこなわれ、前期のI型、II型、後期型の3タイプに分けられ内外装の意匠などが変更されています。
ユニークな装備としてレビン GTアペックスには冷却水温によって開閉するフロントグリルの「エアロダイナミックグリル」があり、前期型のみに採用。
また、モデルライフ末期の1986年には最初で最後の特別仕様車で、ブラックの外装色に内装の意匠も専用となる「GTアペックス“ブラックリミテッド”」が、トレノ3ドアのみ限定400台で販売されました。
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高回転型エンジンがもたらす心地良いフィーリングと、GTアペックスで940kg(レビン2ドア、5速MT車)と軽量な車体が相まって、AE86型 レビン/トレノは発売と同時に若者から高い支持を得ました。
しかし、1984年に登場したホンダ「シビックSi」などFFのライバル車が台頭したことで、1987年の生産終了までAE86型 レビン/トレノは決して大ヒットしたわけではありませんでした。むしろFF化された次世代のAE92型の方が販売台数的には好調だったほどです。
ところが、軽量コンパクトなFR車を惜しむ声もあり、生産終了後に再評価され人気が再燃。
さらに峠のバトルを描いたコミック「頭文字(イニシャル)D」が1995年に発表さると、主人公が乗る白黒ツートーンカラーのAE86型 トレノが作中で活躍したことで人気がさらに高まりました。
その結果、国内のみならず海外でもAE86型が人気となり中古車の価格が高騰し、近年の旧車人気も加わって現在は200万円台が標準的な相場で、良質な個体ならば400万円台から500万円台と異常な状況です。
シリーズ最後の軽量コンパクトなFR車であるAE86型は、まさに記録より記憶に残る1台です。AE86型のDNAはしっかりとGR 86にも受け継がれていることでしょう。
この記事では幻となってます、本当の3代目TE55型(53年排ガス規制対策車)レビンに乗ってました。