伸びるアンテナなぜ消えた? 時代の変化でシャーク式主流に! アンテナの存在理由とは
かつて、クルマのアンテナといえば伸びるタイプが主流でした。しかし、最近ではルーフにサメの背びれのような「シャークフィン」タイプがほとんどです。なぜ、長く伸びるアンテナは姿を消したのでしょうか。
クルマの歴史とともに変遷を遂げてきた「ラジオアンテナ」。
かつては、手で伸ばすタイプのものが主流でしたが、現在は「シャークアンテナ」と呼ばれるタイプのものに変化しつつあります。その理由はどこにあるのでしょうか。
あるときは愛車でのドライブを彩る音楽を車内に響き渡らせ、またあるときはドライバーにとって必要不可欠な情報を提供してくれるカーラジオ。現在では多機能なディスプレイオーディオのひとつの要素となっていることが多いカーラジオですが、いまだに根強い人気を誇っています。
そんなカーラジオに欠かせないのがアンテナです。いうまでもなく、ラジオは電波を拾わないと聴けません。高いビルや山などの遮蔽物の間を走る際や、高速走行時でも、安定して電波を拾うために感度の良いアンテナは必須です。
かつてカーラジオそのものが高級品だった時代は、ルーフやリアボディからそそり立つラジオアンテナは高級車の象徴的存在でした。バブルの頃は「ブーメランアンテナ」と呼ばれる大型のものが一部で流行するなど、アンテナは愛車を彩る重要な要素のひとつだったのです。
そんなクルマのアンテナですが、近年ではその形状も変化しつつあります。
かつてもっともポピュラーであった、運転席側のAピラーに格納されドライバー自身が手で伸ばす「のびーるアンテナ」(正式名称はロッドアンテナ)は、いまや商用車や一部のモデルの廉価グレードを除いて、ほとんど見かけることがなくなりました。また、1990年代から2000年代にかけて高級車を中心に見られた電動格納式アンテナも、現行車種では採用が皆無です。
それらに代わって近年台頭しているのが「シャークアンテナ」もしくは「シャークフィンアンテナ」と呼ばれる、その名の通りサメの背びれのような形状のものです。
2005年にレクサス「IS」で採用されたのを皮切りに、高級車を中心に一気に浸透し、現在では軽自動車でも採用されているものもあります。
シャークアンテナのメリットとして挙げられるのは、「デザイン性」と「多機能性」です。
シャークアンテナについて、国産メーカーの担当者は次のように説明しています。
「最強のカーアンテナに求められるデザイン要件は『小型』です。従来のアンテナにありがちな洗車・駐車時の取り外しや折り畳みといったユーザーの手間をなくすとともに、簡略化・小型化によるデザイン性の向上などを目的としています」
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ロッドアンテナのような「いかにもアンテナ」というデザインは見た目も美しくないばかりか、その先端がボディサイズを超える場合には高架下や駐車場などで引っ掛けてしまうおそれもあり、さらには、空気抵抗を受けやすいために静粛性などにも影響します。
その点、シャークアンテナであれば、ボディにマッチしたデザインにできるとともに、固定されていることから破損の心配も皆無です。加えて、空気抵抗も抑えられるために、静粛性や燃費性能という点でも有利です。
しかし、シャークアンテナのもうひとつのメリットである「多機能性」は、これからのクルマにとってより重要といえます。