伸びるアンテナなぜ消えた? 時代の変化でシャーク式主流に! アンテナの存在理由とは
アンテナはもはやラジオのためではない?
多くの人は、クルマのアンテナは基本的にはラジオのためのものと考えているかもしれません。
しかし、クルマそのものが多機能化している昨今では、アンテナに求められる機能も高度・複雑化しています。
近年のトレンドとなっているシャークアンテナが初めて採用されたのが2005年のISであることは前述しましたが、実はこの時点ではラジオ用のアンテナではありませんでした。
当時レクサスが提供していた専用のテレマティクスサービス「G-Link」用の通信アンテナとして用いられていたのです。
その後、ラジオアンテナ専用のシャークアンテナも開発されましたが、現在では多くのシャークアンテナが複合的な機能を持った多機能アンテナとなっています。
前述の担当者は次のように話します。
「デザイン面の小型化以外に最近のアンテナでは『広帯域』も重要な要素です。現在のシャークタイプは、さまざまな周波数帯の電波に対する安定した受信性能を確保しています」
つまり、デザイン性も重要な要素である一方で、通信システムなどの多機能化によって、従来型のロッドアンテナではそれらの役割を果たすことができなくなっているというのも、シャークアンテナの採用が増えている背景といえるのです。
一方、シャークアンテナにもデメリットは存在します。もっとも大きな点は、コストです。
複雑な構造を持ち、なおかつボディカラーに合わせた塗装も必要なシャークアンテナは、シンプルなロッドアンテナに比べて数倍のコストがかかります。そのため、コストパフォーマンスが重視される商用車や軽自動車ではシャークアンテナはほとんど採用されていません。
また、そもそものアンテナの役割である電波の受信という点についても、シャークアンテナはその構造上、ロッドアンテナよりも不利であるとされています。
そのデメリットを補うため、シャークアンテナには受信感度を増幅するアンプが搭載されていますが、それは同時にコスト増にもつながります。
自動車業界の関係者は次のように指摘します。
「ラジオはもとより、さまざまな通信機能を持つ現代のクルマにとって、アンテナは必要不可欠なものです。
一方で、デザイン性や機能性、燃費や走行性能などを考慮すると、ボディラインからはみ出すような突起物は取り付けたくないというのが、自動車メーカーの基本的な考えです。
シャークアンテナはそれらの妥協点を探った現実解とも呼べるものですが、近年ではリアウィンドウなどにはりめぐらされるフィルム式のアンテナなども開発されています。
コストパフォーマンスを含めた総合的なメリットを考えると、突起物であるシャークアンテナも淘汰されていく可能性が高いでしょう」
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クルマとともに進化してきたアンテナですが、時代のニーズに合わせて日々進化を続けているようです。
ただ、近年トレンドとなっているシャークアンテナも、近い将来にはフィルム式のアンテナへと移り変わる可能性も高く、いずれは「昔のクルマ」の象徴的な存在となるかもしれません。