足まわりの進化がスゴいことに! カメラと連動するハイテクサスペンションとは?

名称は違えど同じ「カメラ連動式アクティブサスペンション」

 次に具体例として、すでに登場している「カメラ連動型アクティブサスペンション」をメーカーごとの特徴を踏まえて紹介します。機能を中心に各メーカーの個性が出ている印象です。

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●メルセデス・ベンツ「マジックボディコントロール」

 この、カメラ連動型アクティブサスペンションの先鞭をつけたのがメルセデス・ベンツで、高級車に求められる「上質な乗り心地」を追求するために開発されました。

 世界初のカメラ連動型アクティブサスペンションが登場したのは2013年に誕生した6代目「Sクラス」や、さらに上級シリーズの「AMG」モデルで「マジックボディコントロール」という名称でオプション設定されました。

 このマジックボディコントロールは、フロントウインドウ内側に設置された「ステレオマルチパーパスカメラ」に、前方の路面の詳細な凸凹を検知する「ロードサーフェススキャン」機能を搭載。

 事前に最適なスプリングレートとダンパーの減衰力を自動制御してくれるというものになっており、2020年に誕生した7代目ではさらに精度が高められ、最大で時速180kmまで対応可能となりました。

 さらにマジックボディコントロールには、コーナリング中の遠心力に逆らうように車体の姿勢制御をおこない、車体はフラットな姿勢を保ち続けるという、まさに「マジック」なサスペンションの動きを実現させています。

●アウディ「AIアクティブサスペンション」

 アウディにもカメラ連動型アクティブサスペンションが登場しています。それが2018年に誕生した4代目「A8」に、翌2019年に追加設定された「AIアクティブサスペンション」(現在は欧州の一部仕様のみ)です。

 アウディのシステムは、各車輪に48Vモーターと複数のギアなどを内蔵しており、1秒間に18回送信されるフロントカメラからのデータをもとに前方路面の凸凹を検知。

 クルマが実際にその凸凹を通過する前に最適なストローク量へと制御するというものです。

 しかも制御するまでの時間は千分の数秒という早さで、クルマの揺れや振動、コーナリング中のロール、加速やブレーキなどによる車体変化まで抑え込んでいます。

 もちろん任意でも好みのモードに設定変更でき、荒れた路面でもスムーズに走り、かつダイナミックなハンドリングも楽しめるようになっています。

●DS(シトロエン)「DSアクティブスキャンサスペンション」

 快適な乗り心地にこだわり続けているシトロエンは、空気ばねと油圧シリンダーを組み合わせた「ハイドロニューマチック・サスペンション」を開発したメーカーとして有名です。

 このハイドロニューマチック・サスペンションの進化系として、2016年に発表されたのが「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」で、サスペンションが沈みきった状態でも機能する第2のダンパーを内蔵し、ゆっくりかつ強力に減衰することで、サスペンションが縮みきる状態=底つき感を感じさせずに、路面の大きな凸凹などの大入力に対しても快適な乗り心地を実現させています。

 そして、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションのさらなる進化系として誕生したのが「DSアクティブスキャンサスペンション」です。

 システムはフロントガラスに装着されたカメラで前方の路面を常時ハイスピードスキャンし、通過する前に路面の凸凹を識別し、減衰力をリアルタイムで最適に電子制御するものです。

 現在はシトロエンの高級ブランドとして独立したDSのモデルに採用されていますが、今後は同様のシステムを同じスランティス・グループ(PSA+フィアット・クライスラー連合)で使用する可能性は高いと思われます。

 しかも姿勢制御などの機能を省いたことで、それほど複雑なシステムは必要なく、安価に搭載できるメリットもあります。

※ ※ ※

 各メーカーとも乗り心地や走行安定性の向上は、日進月歩で進化しているといえます。

 これまでは路面の状況をサスペンションの入力から検知して各部を制御する「フェードバック制御」でしたが、いまでは工学的に検知して、事前に制御する「フィードフォワード制御」と、それを補完するフィードバック制御が組み合わされるようになりました。

 また、もともとは高額なシステムも、普及によってコストダウンが図られ、より安価なクルマでも搭載されることになるでしょう。

 動力性能や燃費性能などと異なり数字では見えにくい技術ですが、より安全なドライブに寄与するということです。

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