「チゼタ」に「スピードテール」「ルーフ」…誰もが憧れるスーパーカーのお値段ハウマッチ?

2021年1月22日、オークションハウス最大手のRMサザビーズ北米本社が開催したオークション「ARIZONA」の結果は、2021年のオークション・マーケットの動向を占う意味でも注目が集まった。今回は出品された数々の名車のなかでも、とくにパフォーマンス重視のハイパーカーだけに注目して落札結果を見てみよう。

エンジンにストーリーがある方が高値安定!?

 生産台数が少なく、ハイパワーで高性能、そして誰もが魅了されるエキゾチックなアピアランスをもったスーパーカーは、当然ながら新車価格は非常に高額である。さらにいうならば、新車で手に入るということ自体が、セレブの格付けを示しているようなものでもある。

 こうしたスーパーカーが、オークションマーケットでどのような評価を下されるのか、RMサザビーズ北米本社が、アメリカ・アリゾナ州スコッチデールにて開催した大規模オークション「ARIZONA」の結果から見てみよう。

●1993 チゼタ「V16T」

約6970万円で落札されたチゼタ「V16T」(C)2020 Courtesy of RM Auctions
約6970万円で落札されたチゼタ「V16T」(C)2020 Courtesy of RM Auctions

 最初に紹介するのは、チゼタ「V16T」である。1992年から生産がスタートし、1994年に倒産するまで、わずか8台しか生産されていない。チゼタは倒産後にイタリアからアメリカに本拠地を移し、チゼタ「モロダーV16T」という名で現在もオーダーを受けつけているので、新車で手に入れようと思えば可能なクルマでもある。そのため、1994年以降も細々とだが、生産されているようだ。

 チゼタV16Tの特徴は、開発に関わった面々にあるといっていだろう。ボディデザインは、「ミウラ」や「カウンタック」をデザインしたマルッチェロ・ガンディーニで、そもそもカウンタックの後継モデルに描いていたデザイン案が当時の親会社であるクライスラーに却下されたため、このチゼタV16Tに採用されたという経緯がある。

 そしてランボルギーニの黎明期にパオロ・スタンツァーニの片腕としてエンジニア経験を積んだクラウディオ・ザンポッリが、チゼタV16Tのプロジェクトを進めた人物だ。スーパーカーに必要なストーリーは、充分に揃っている。

 今回のオークションに登場した個体は、シンガポールのディーラーから、ロイヤル・ブルネイのファミリーに代わってオーダーされたもので、理由は不明ながら25年以上にわたって、そのままディーラーに保管されていたという。右ハンドル仕様ながら走行距離はわずか983kmだ。

 60万−75万ドル(邦貨換算約6230−7800万円)というエスティメート(予想落札価格)に対して、落札価格は66万5000ドル(邦貨換算約6970万円)という結果であった。

 走行距離は少なかったものの、右ハンドル仕様ということと、高温多湿で紫外線の強いシンガポールで長く保管されていたためか、写真で見てもミントコンディションとはほど遠い、車内の傷み具合であったことがネックだったのかもしれない。

 ただし、すでに新型車を次々とリリースするようなメーカーではないにも関わらず(事実上存在しないに等しい)、同時代のランボルギーニやフェラーリのフラッグシップモデルと比べると、かなり高額であることは注目に値する。チゼタは今後も大きく値崩れすることはなさそうだ。

●2020 マクラーレン「スピードテール」

約3億4400万円で落札されたマクラーレン「スピードテール」(C)2020 RM Sotheby's
約3億4400万円で落札されたマクラーレン「スピードテール」(C)2020 RM Sotheby's

 ドライバーズシートをセンターにレイアウトするキャビンは、ゴードン・マーレーが設計した「F1ロードカー」から継承されたもので、限定生産数もそれに合わせて106台となる「スピードテール」。

 スピードテールの特徴は最高速度が400km/hを上回っているという点だ。スーパーカーは、オーナーが使いこなせない性能を持っていることも重要な要素なのだ。「どこでそんなスピードを出すのか?」という疑問は、このクラスのクルマを購入するカスタマーにとっては愚問以外の何物でもない。

 新車価格は175万ポンド(邦貨換算約2億4900万円)からで、106台すでにソールドアウトしており、2020年からデリバリーがスタートしている。新車で手に入れたくても購入者リストに入ることができなかったミリオネアもいたことだろう。

 オークションに出品された個体は、106台中36番目の個体だ。ボディカラーはヘリテージ・アトランティック・ブルーと呼ばれる、MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)のオーダーメイド色で、ボディサイドのピンストライプとのコンビネーションで、雰囲気はかなりスポーティな印象。

 インテリアのフィニッシュも、MSOによってヴィンテージタンアニリンレザーやアルカンターラで、美しく仕上げられ、ゴージャスなテイストとなっており、新車価格からさらエクストラが支払われたことが分かる仕様だ。

 走行距離はわずかに30マイル(約48km)で、コンディションは新車同然。最低落札価格は、350万−450万ドル(邦貨換算約3億6000万−4億7000万円)であったが、落札価格はそれを下回る327万7500ドル(邦貨換算約3億4400万円)だった。

 パーソナライゼーションにかかった費用がどれほどか不明だが、欲しくても手に入らないスピードテールをすぐに入手できるプライスとすれば、妥当ともいえる落札価格といえよう。

●2019 マクラーレン「セナ」

約1億950万円で落札されたマクラーレン「セナ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
約1億950万円で落札されたマクラーレン「セナ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 マクラーレンのアルティメットシリーズとして登場した「セナ」の新車価格は、75万ポンド(当時の邦貨換算で約1億1000万円)であった。

 500台限定生産で、2018年ジュネーブ・ショーでの正式発表前にすべてソールドアウトであったという。そのため、オークション・マーケットでは約191万ポンド(邦貨換算約2億8000万円)で売買が成立した記録も残されている。

 出品された個体は、走行距離わずか800km未満で、36万ドル(邦貨換算約3700万円)以上のオプション装備が備わっており、単純に計算するとおよそ1億4700万円近い新車価格だったということが分かる。

 この個体に付けられた最低落札価格は、100万−130万ドル(邦貨換算約1億400万−1億3500万円)と、すでにプレミアムが付くどころか、新車当時の車両価格を下回るエスティメートであった。

 最終的な落札価格は、104万4000ドル(邦貨換算約1億950万円)。最新のスーパーカーは、納車後すぐに売りに出すか、それとも将来的な価格高騰を待つかのいずれかが正解なのかもしれない。

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