アルファ ロメオ「TZ」のひみつ どうして歴史的アイコンになり得たのか

日本人デザイナーが担当した「TZ3コルサ」とは

 アルファ ロメオとアウトデルタの攻勢は留まることなく、翌1965年には「ジュリアTZ2」を競技に送り込む。1965年ル・マンのテストデイにて初お目見えを果たしたTZ2は、ボディ素材をFRPに変更してさらに軽く仕立て、ボディ全身をさらに低めて全高1060mmとすることで空力効果を狙った。

 また、エンジンにも手が加えられ、搭載位置を低めるためにドライサンプ化されるとともに、「ジュリアGTA」系と共用のツインプラグヘッドが載せられたほか、吸排気バルブ径も拡大され、パワーは165psまで高められていた。

●新レギュレーションで不利な立場に追いやられた「TZ/TZ2」

ボディ全身をさらに低めて全高1060mmとすることで空力効果を狙った「ジュリアTZ2」(1965年)
ボディ全身をさらに低めて全高1060mmとすることで空力効果を狙った「ジュリアTZ2」(1965年)

 アルファ ロメオは、TZ2を擁して「スポーツカー」カテゴリーにエントリーしようとしていたのだが、1966年から発効したFIA新レギュレーションでは、GTカテゴリーのホモロゲートを受けるには500台、スポーツカーカテゴリーには50台もの最低生産台数が要求されることになってしまった。

 この結果、TZは「GT」から「スポーツカー」、そして数台しか作られなかったTZ2は「スポーツカー」から「プロトタイプ」とそれぞれ格上のカテゴリーに組み入れられ、明らかに不利な対決を強いられることとなった。

 しかもTZ2の足枷となったのは、新しいレギュレーションのクラス分けだけではない。その排気量の小ささから、ポルシェなどの強力なライバルに対して不利な戦いを強いられ続けることにもなったのだ。

 けれど、獰猛さと美しさを兼ね備えたベルリネッタ・ボディの魅力も相まって、ジュリアTZ&TZ2は、今なお世界中のアルフィスタにとって垂涎の存在として君臨している。

●現代に蘇った「TZ」

全長4345mm×全幅1944mm×全高1200mmのボディに、4.2リッターV型8気筒エンジンをフロントミッドシップに搭載した「TZ3コルサ」
全長4345mm×全幅1944mm×全高1200mmのボディに、4.2リッターV型8気筒エンジンをフロントミッドシップに搭載した「TZ3コルサ」

 そして2010年春、「TZ」の系譜を継承する純コンペティツィオーネとして、アルファ ロメオ「TZ3コルサ」が誕生することになる。TZ3コルサのデザインは、ザガートのコンサルタントを長らく務めてきた原田則彦氏が担当。

 官能的な基本プロポーションはもちろん、獰猛さを感じさせるノーズの意匠や、コーダトロンカと呼ばれるスパッと切り落としたテール形状に至るまで、歴代ジュリアTZのエッセンスをそのまま現代車に投影したオマージュ的デザインとなっている。

 ボディサイズは全長4345mm×全幅1944mm×全高1200mmと、生産型「8Cコンペティツィオーネ」にほど近いスペックを持つ。そして車両重量は、日本仕様の8Cコンペティツィオーネよりも700kg以上も軽い850kgというデータが公表されている。

 TZ3コルサがオマージュの対象とするジュリアTZは660kg、TZ2に至っては620kgともいわれる超軽量車だったが、TZ3コルサも現代の、しかも4リッター超級のクルマとしては驚異的な軽さだ。

 この超ライトウェイトの秘訣は、シャシ/ボディの構造を聞けば一目瞭然だろう。TZ3コルサはモノシェル構造のカーボン製チューブラーシャシに、同じくアルミ製のチューブラーフレームとボディを組み合わせたのである。ここで「チューブラー」をことさらに強調したのは、TZの名に正統性を持たせるためだったと思われる。

 フロントミッドシップにレイアウトされるパワーユニットは、ドライサンプ潤滑システムを備える4.2リッターV型8気筒エンジンだ。このユニットは420psの最高出力を発生。6速シーケンシャルミッションとの組み合わせによって、0−100km/h加速は3.5秒、最高速も300km/h超という、当時最新のレーシングGTと呼ぶに相応しい高性能を獲得していた。

 残念ながらTZ3コルサは、ワンオフ・モデルとなる。そしてそのエッセンスを注ぎこみ、市販ロードカーとしての資質を加えたのが、アルファ ロメオ「TZ3ストラダーレ」なのである。

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