なぜフェラーリは「赤」でポルシェは「シルバー」なのか? ナショナルカラーの由来とは?
フェラーリは「赤」、ベントレーやジャガーは「グリーン」、ブガッティやアルピーヌは「ブルー」、メルセデス・ベンツやポルシェは「シルバー」……。こうした各メーカーに馴染みの深いボディカラーには、「ナショナルカラー」という概念があった。その歴史を解説しよう。
ナショナルカラーって、どんなもの?
21世紀の現在においても、フェラーリの2座席ベルリネッタならば「赤」、アルピーヌは「ブルー」、アストンマーティンやロータスならば「グリーン」がブランドをイメージするボディカラーとなっている。
とくに世界初公開の際などにメーカーからリリースされるオフィシャル写真では、一定の法則に伴うボディカラーのクルマが登場するのが常である。
そして、ヨーロッパ各国を代表するスポーツカーブランドがイメージカラーとする色には、実は国を代表する「ナショナルカラー」という伝統的な概念が、今なお強く影響している。
そこでVAGUEでは、かつて国際レースに挑んだレーシングカーたちを彩るとともに、現在の自動車界でも潜在的に息づく「ナショナルカラー」について解説しよう。
創業以来、常にイノベーティヴな試みを打ち出していたロータスが、1968年シーズンを端緒に、たばこブランドの「ゴールドリーフ」をスポンサーとし、その指定カラーである赤/金/白の3トーンにペイントされて以来、F1グランプリに参加するマシンの大部分は、スポンサーの指定するカラーでペイントされている。
そして、その故事の以前におこなわれていた国際格式のレースイベント、とくに近代のF1を含むグランプリを走るマシンたちは、それぞれ所属するチームの国籍によって制式化された、いわゆる「ナショナルカラー」に塗られることが、半ば当たり前のごとく習慣化されていた。
例えばフランスは、1920年代のブガッティやドラージュを端緒とするブルーが、第二次大戦後のタルボ・ラーゴやゴルディーニ、あるいはアルピーヌなどにもペイントされ「フレンチブルー」と呼ばれることになった。
またイタリアでは、サッカーや外洋ヨットをはじめとするほかのスポーツ競技では「アズーロ」と呼ばれる明るめの青が使用されるが、レース界ではフランスの前例があったため、やむなく赤を選んだ。それが「イタリアンレッド」の始まりとされている。
一方、世界でもっともモータースポーツの盛んな国であるイギリスでは、第二次大戦前からグリーンがナショナルカラーとされ、こちらも有名な「ブリティッシュグリーン」の由縁となった。
そしてドイツといえば「ジャーマンシルバー」なのだが、それにはちょっと面白い裏話がある。
●ドイツは軽量化のためにシルバーに!?
もともとドイツのナショナルカラーは、1920年代のダイムラーなどに端を発するホワイトだった。ところが、新たに総重量750kg以下のマシンでおこなわれる「A.I.A.C.R.グランプリ(現在のFIA-F1GPに相当)」の第一戦、1934年シーズンの開幕戦で、750kgの規定重量を若干超過してしまったメルセデス・ベンツ「W25」が、チームの名物監督アルフレート・ノイバウアーのとっさの判断で、白のボディ塗装を剥がして軽量化を図った(!)という故事から、そののちはアルミ地色から転じてシルバーメタリックで定着。
それは当時のライバルであるアウトウニオンや、スポーツカーレースのBMWなどにも採用されることになったというのだ。
これらのほかにも、ホワイトとブルーの2トーンはアメリカ合衆国。イエローはベルギーのカラーとされ、主に第二次大戦後のスポーツカーレースで使用された。
また、オランダはオレンジ、ニュージーランドはブラックとされたものの、実際に国際格式のレースで使用された例は、あまり見られなかったようだ。
ならばわが国はといえば、1964年シーズンに初めてF1GPに参入を決めたホンダが、当初は故・本田宗一郎氏たっての希望で金色の使用をリクエストしていたといわれている。
ところが、自国内に国際格式のレースに出るようなワークスチームを持たないはずの南アフリカ共和国(金の産出量で有名)が、実は先立ってゴールドで登録していた前例があったことが判明して、あえなく却下。
結局、日本のナショナルカラーはホワイトの基調色をベースに、ドイツの旧カラーとの混同を避けるために「日の丸」を入れることで落ち着いたといわれている。
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