フェラーリの廉価版ではない! アルファ ロメオ「モントリオール」の本気度とは?
2020年に誕生50周年を迎えたアルファ ロメオ「モントリオール」は、そもそも「人類の最大の夢を具現化したクルマ」がテーマだった。50年前、どのような夢が託されたクルマだったのだろうか。
もともと万博に出品されたコンセプトカーだった
イタリアン・カロッツェリア全盛時代たる1960ー70年代には、モーターショーなどを舞台に参考出品されたコンセプトカーが、その人気からシリーズ生産・市販に移される事例もしばしば見受けられた。
近年、国際的なクラシックカー市場において評価を急速に高めているアルファ ロメオ・モントリオールは、その最たる一例。かつての名門カロッツェリア、ベルトーネが制作した素晴らしき遺作のひとつである。
第二次大戦以前には、レーシングカーおよび超高級スポーツカー&ツーリングカーのみを少量製作する。つまり、戦後に袂を分けたフェラーリに相当するビジネススタイルを採っていたアルファ ロメオだが、1950年代中盤、ジュリエッタの誕生以降は小型車を量産する大規模メーカーへと転身を図っていた。
しかしその一方で、当時のイタリアで隆盛を極めていた名門カロッツェリアたちはアルファ各モデルをベースに、独創的な「フォーリ・セリエ(特装ボディ車両)」やコンセプトカーを自主製作。ここで紹介する「モントリオール」も、元来はイタリアンデザインの優秀性を誇示するため、カロッツェリア・ベルトーネが製作したコンセプトカーであった。
モントリオールが初めて姿を見せたのは、実は万国博覧会。「人類とその世界」というテーマを掲げ1967年4月28日から10月27日まで、カナダ・モントリオールで開催された万国博覧会「Expo67」である。
カナダの建国100周年記念として開催された、この世紀の大イベントには総勢62カ国が参加。183日の会期中には延べ5031万人が入場することになった。
そしてモントリオール万博イタリア館に展示され、大人気を博していたのが「人類の最大の夢を具現化したクルマ」と銘打たれたベルトーネ製のコンセプトカー、その名も「モントリオール」だったのである。
スリークながらエキセントリックな2+2クーペのデザインは、直前に独立したジョルジェット・ジウジアーロの跡を継ぐかたちで、カロッツェリア・ベルトーネのチーフスタイリストの地位に就いた鬼才、マルチェロ・ガンディーニの手によるもの。
同時代のガンディーニ作品であるランボルギーニ「ミウラ」にも似たミドシップ的プロポーションを持つが、その実態は同時代の「ジュリア・スプリントGT」系と同じ、ホイールベース2350mmのフロアパンを流用したフロントエンジン+後輪駆動車だった。
デザインのテイストは、ミウラで確立されたガンディーニの方法論を踏襲したものだが、Bピラー付近に設けられた7条の巨大なスリットは、ベルトーネ時代のジョルジェット・ジウジアーロの傑作、アルファ ロメオ「カングーロ」のフロントフェンダーに設置されたエアアウトレットのモチーフを再現したものとされるなど、伝統的な古典美も盛り込まれ、ショーカーらしい華やかなスタイルとされていた。
パワーユニットは、水冷直列4気筒DOHCのいわゆる「アルファ・ツインカム」。このコンセプトモデルでは、スプリントGTの106ps仕様ユニットを搭載すると公表されていた。
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