ハイブリッド車は増え続けるも燃費重視は過去の話? いまは安全性重視なワケ
2020年は、トヨタ、ホンダ、そして日産が主力コンパクトカーを刷新した1年となりました。新車に求められる性能として燃費性能は大きなウェイトを占めるといわれていますが、新型モデルの登場で現在の状況はどのようになっているのでしょうか。
新型コンパクトカーが相次いで登場した2020年
2020年は、トヨタ、ホンダ、そして日産が主力コンパクトカーを相次いで刷新しました。近年はコンパクトカーなどの安価なクルマでもハイブリッドシステムの搭載が珍しくなくなっている状況ですが、燃費性能はどのように進化しているのでしょうか。
2020年2月10日にトヨタから新型「ヤリス」が、2月14日にホンダから新型「フィット」が発売されました。そして日産は12月23日に新型「ノート」を発売予定で、3社の主力コンパクトカーが出揃ったかたちになります。
ヤリスとフィットはガソリン仕様とハイブリッド仕様の2仕様を設定し、新型ノートは全車ハイブリッド(e-POWER)で登場しています。
それぞれのハイブリッド仕様の燃費性能を比べると、現在販売されている新型車のカタログ燃費値(WLTCモード)を比べると、新型ヤリスは36.0km/Lを記録(HYBRID X)。
このWLTCモード値はコンパクトカー以外のボディカテゴリのクルマと比べてもナンバーワンの性能です。
ヤリスのハイブリッド仕様について、トヨタは「システム全体の高効率化とハイブリッドシステム専用のエンジン設計、そのほかすべてのハイブリッドユニットも新開発することにより、さらなる低燃費を実現しました」と説明しています。
一方、フィットのハイブリッド仕様は先代モデルからハイブリッドシステムを改め2モーター式の機構を採用しましたが、WLTCモード燃費は29.4km/L(e:HEV BASIC)とヤリスには届いていません。
ノートのWLTCモード燃費も29.5km/L(F)と、ヤリスの燃費を下回りました。熾烈な燃費競争をくぐり抜けてきた国産自動車メーカーですが、2020年現在もコンパクトカーにおいてはトヨタの優位性が際立っているといえます。
では、こうした燃費の差は販売にどのような影響を与えているのでしょうか。
ヤリスはシリーズ展開がおこなわれ、日本自動車販売協会連合会が発表する登録車販売ランキングでは「ヤリスクロス」(2020年8月発売)と「GRヤリス」(2020年9月発売)という2車種が含まれた数がヤリスの登録台数としてカウントされます。
そのため、ヤリスクロス発売前の2月から7月までの販売台数ランキングを見ると、2月・3月はフィットが上回っており、それ以降はヤリスが逆転したという状況です。
ヤリスの方が優勢ではあるものの、販売台数の面で見ると人々の外出自粛により新車販売にも大きな影響が出た5月(7235台)を除けば2月から7月までの間はおおむね9000台以上の実績を残しています。
8月以降を見ても、8月が7158台、9月が8922台、10月が9001台、11月が7161台と、波はあるもののホンダを代表するコンパクトカーとしての立ち位置は保っている状況です。
ノートに関しても、2020年に入った段階ですでにモデル末期といわれていたものの、多くの月でトップ10にランクイン。フルモデルチェンジでさらに販売を伸ばすことが期待されています。
カタログ燃費で1リッターあたり6km/L以上の大差をつけられているにも関わらず、なぜほかのコンパクトカーもヤリスに大きく負けることはなく売れていたのでしょうか。
トヨタの販売店スタッフに聞くと、近年のユーザーが求めるものについて次のように説明します。
「いま新車を買い求めるユーザーが重視するのは、とにもかくにも予防安全装備です。
ここ数年で認知度が高まったペダル踏み間違い防止システムや衝突被害軽減ブレーキをはじめとした各種装備がパッケージで用意されており、多くのお客さまが選択します。
しかし、そもそも予防安全装備のパッケージが最初から標準装備される例が近年非常に多くなりました。そのため、予防安全装備の次にユーザーが何を求めるかによって、おすすめする車種が変わるといった状況です。
全員が燃費を重視する訳ではなく、ほかにコスパの高さや車内の広さなどを重視するお客さまもいらっしゃいます」
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予防安全装備に関心が高まっている理由のひとつとしては、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いによる事故が、社会問題として近年大きく取り上げられていることが挙げられます。
高齢者による事故がよく報じられますが、ペダルの踏み間違え事故は若い世代でも多く発生しています。こうしたことが、ユーザーが予防安全装備の装着に関心が高まっている要因といえるでしょう。
ちなみに、ペダル踏み間違い防止システムについてヤリス、フィット、ノートの3車種を比較すると、ヤリスはメーカーオプションで(一部グレードは設定なし)、フィットとノートは全車標準装備です。
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2020年12月には、政府が2030年代半ばまでにガソリン車の新車販売禁止を打ち出す方針で調整をしていると報じられ、自動車業界では電動化の重要性が強く叫ばれています。
しかし、多くのユーザーが新車購入時に意識するポイントは、少し異なっているのかもしれません。
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