コロナ禍で注目増す「車中泊」や「キャンパー」トヨタ販売店が宿泊施設まで運営する訳
アウトドアビジネスのメリットは“顧客層の若返り”
こうした本格的な車中泊ができるキャンパーを自社開発する正規ディーラーは、全国でも極めて数が少ないのが現状です。加えて、自前の宿泊施設まで用意するというレベルの発想はほかに類がありません。
なぜ、正規ディーラーがキャンパービジネスが可能で、その目的とは何なのでしょうか。
トヨタモビリティ神奈川を含む、各種の自動車関連企業14社(2020年5月時点の従業員総数4436人)の持株会社であるKTグループに「アルトピアーノ」事業の詳細を聞きました。
――企画の経緯は?
そもそも、アルトピアーノの発想のきっかけは、グループ会社の自動車用品販売店・ジェームス神奈川の工場稼働と収益向上への対応でした。
また、ショッピングモールにトヨタの新車を持ち込み、買い物客に自動車販売する事業も展開しており、キャンパー展示・販売も併せておこなう発想で進めました。
――低価格が実現できる理由とは?
キャンパーは(一般的に)販売台数が少ないですが、弊社ではトヨタ車販売台数の全体のなかで調整できます。
――トヨタディーラーとしてキャンパー事業をおこなうメリットとは?
我々は2020年に、従来型の自動車ディーラーから、モビリティライフデザイン会社に大きくシフトしました。アルトピアーノは、モビリティライフデザインの具体化に最適です。
その上で、メリットは“顧客層の若返り”です。(一般的に自動車購入者の平均年齢が50歳代から60歳代へと高齢化が進んでいるなか)弊社キャンパー購入者の平均年齢は40歳代です。
また、キャンパーにご興味があるが結果的に商談が成立しなくても、ノアやヴォクシーのご購入に繋がるケースが多くあります。
さらに、キャンパー事業がCS(顧客満足度)を向上させて、整備などアフターサービスの拡充にも繋がっています。
――逆にデメリットは? メーカーとの関係は?
いまのところ感じていません。トヨタは昔から、カスタマイズや架装部品はディーラーに任せるという企業風土があります。弊社として、D-TECブランドとして、「D-TECアルテッツア」や、弊社開発が由来で量産化された「カリーナマイロード」などがあります。
――とはいえ、ディーラーとして新車をどこまで改良できるのか? 許容範囲や基準はあるのか?
常に、PL法(製造物責任法)を意識しながら慎重におこなうことが基本です。
シート部分は神奈川トヨタの補償、充電器等は製造元のPL保険を活用しています。
そのうえで、メーカー(トヨタ)の保証制度の枠を外れること、また違法改造は絶対に致しません。トヨタの車両出荷時の諸元の基準内を確保し、荷室部分への架装は“走る・曲がる・止まる”に影響はないと考えています。
――昨今はディーラー各社が生き残りをかけて競争する時代。これまでの商圏を超えてどこまでキャンパー事業を拡大するのか?
“安くて良いキャンパー”を作って、キャンパーのエントリー層を増やしていきたい。それに賛同して貰えるディーラーが増えていけば良いと思います(注:キャンパーアルトピアーノは東京、福岡、大阪など17社向けに77台販売済み)。
ただし、いまは試行段階であり商圏拡大の段階ではないと考えます。一方で、(可能性として)ジェームス店での全国展開という考え方も一理あるのではないでしょうか。
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コロナ禍で、自宅キャンプやリモートワークといった観点でも注目が集まる、車中泊やキャンパー。これから一般ユーザーにとって、さらに身近な存在になるのかもしれません。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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