500万円から1億円オーバーまで!! 『サーキットの狼』世代が憧れたスーパーカーのお値段は?

第1次スーパーカーブームを巻き起こした漫画『サーキットの狼』。この漫画に登場したスーパーカーに、当時の少年達は憧れを抱いていたが、現在のオークションではどれくらいの価値で評価されているのかをレポートしよう。

パワーではなく、コーナリングのテクニックでライバルを抜き去る!

 1975年から1979年にかけて、週刊少年ジャンプに連載された漫画『サーキットの狼』は、当時の少年達に熱狂的に支持され、日本にスーパーカーブームを巻き起こした。

 現在、ランボルギーニを始めとするスーパーカーを購入する50代の男性の多くが、スーパーカーブーム時代の時の憧れを現実のものとしているケースが多い。

 そこで、2020年におこなわれたRMサザビーズ主催の「THE ELKHART COLLECTION」に出品された、第1次スーパーカーブームの頃に少年たちの憧れだったクルマを、『サーキットの狼』の登場人物の誰がドライブしていたクルマだったかを交えながら、現在のオークション市場での価値をお伝えしよう。

●1973 ロータス「ヨーロッパ・スペシャル」

漫画では風吹裕矢の愛車だったロータス「ヨーロッパ・スペシャル」は、約500万円で落札(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
漫画では風吹裕矢の愛車だったロータス「ヨーロッパ・スペシャル」は、約500万円で落札(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 いわずと知れた主人公・風吹裕矢の愛車として登場。漫画ではボディカラーはホワイトで、フロントノーズからリアまで真っ赤なストライプが1本通っており、そこに星印がつけられている。

 この星印は、公道でバトルをして勝ったときにつける、いわば男の勲章でもあった。ライバルの早瀬佐近と出会ったときの風吹裕矢の星印は29、一方の早瀬佐近のポルシェ「911カレラRS」には39の星印がマークされていた。

 風吹裕矢のロータス「ヨーロッパ」には、リアに大きなGTウイングが装着されていたのが特徴。伊豆スカイライン、芦ノ湖スカイライン、箱根ターンパイクなどをステージとする「公道グランプリレース」では、ワインディング・ロードがステージとあって、そのすぐれたハンドリング性能でライバルたちを次々と抜き去っていく。

 公道グランプリレースでは、幾度も宙を舞い、奇跡的に最終コーナーまでたどり着くも、ここで「ディーノ246GT」と競り合い、ひっくり返ったままゴールラインを1位で通過し、見事優勝。

 この時の修理の際に国産ターボを装着し、漫画ではそれ以降ロータス「ヨーロッパ・ツインカム・ターボ・スペシャル」と呼ばれるようになる。しかし、この国産ターボはターボラグという決定的な欠点を抱えており、その弱点をカバーしつつ筑波サーキットでの「A級ライセンス模擬レース」に出場。

 この模擬レースでは、マセラティ「ボーラ」、フェラーリ「512BB」、ランボルギーニ「カウンタックLP400」、ポルシェ「930ターボ」、ランチア「ストラトス」といった錚々たるスーパーカーたちとバトルを繰り広げる。

 最終コーナーでトップに立つも、コーナーの立ち上がりで早瀬佐近が駆るポルシェ「930ターボ」に抜かれてしまい、惜しくも2位でチェッカーフラッグを受け、ゴールとともにエンジンブロー。これを最後に、風吹裕矢はロータス・ヨーロッパ・スペシャルを卒業し、数々のレーシングカーを運転することになる。

 ちなみに漫画のなかでは、「ロータス・プレーヤー」というチームが登場し、GTウイングのない純正の姿で何台も登場する。

 オークションに登場したのは、ボディカラーブラックにゴールドのストライブが施された「JPS」仕様の1台。1972年のF1ワールド・チャンピオンシップのタイトルを記念したモデルで、オリジナルコンディションを保っている。

 エスティメートは3万−4万ドルだったが、それを上回る4万7600ドル(邦貨換算約500万円)で落札された。

 ロータス・ヨーロッパ・スペシャルは、漫画の影響もあって第1次スーパーカーブーム時代にはスーパーカーとして認知されていたが、本来はライトウェイト・スポーツカーである。搭載するエンジンは4気筒で最高出力は113ps程度しかない。また、スーパーカーの持つ内装のゴージャスさもないため、1970年代に少年たちが憧れたクルマのなかでは、いまもっとも手に入れやすい価格の1台だ。

●1972 フェラーリ「ディーノ246 GT」

漫画では沖田が公道グランプリレースで運転した「ディーノ246 GT」は、約3300万円で落札(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
漫画では沖田が公道グランプリレースで運転した「ディーノ246 GT」は、約3300万円で落札(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 フェラーリであってフェラーリではない「ディーノ」は、エンツォ・フェラーリの長男で夭折したアルフレード(愛称ディーノ)の名を冠したクルマだ。搭載するエンジンはこのアルフレードがアイディアを出したV型6気筒である。

 フロントノーズのエンブレムには跳ね馬ではなく、「Dino」の文字が装着されており、夭折したアルフレードとのイメージも重なり、さらにその繊細なデザインも相まってどこか儚い印象のディーノ。

 このディーノの印象にぴったりの登場人物が、漫画内でステアリングを握ることになる。漫画では警察の交通課にできた暴走族取締専門の特別組織「新選組」に配属された沖田が、公道グランプリレースに「ディーノ246GT」で出場するのだ。

 沖田は公道グランプリレースを機に警察官を辞し、レーサーになることを誓うが、病を患っており、最終コーナーをトップでクリアして優勝を確信したまさにその瞬間に絶命してしまう。風吹裕矢や早瀬佐近にも負けず劣らずの(ひょっとするとさらに上の)ドライバーでありながら、病に倒れてしまうという悲運の沖田と、夭折したアルフレードが連想されるディーノ246GTとの組み合わせは、まさにぴったりである。

 公道グランプリレース後には、風吹裕矢がロータス・ヨーロッパの修理が終わるまで、このディーノ246GTを日常で乗るという設定になっており、さらに流石島レースに出場するためにサーキット専用スペシャルに大改造される(漫画内ではフェラーリ「ディノ・レーシング・スペシャル」という名称)。

 さて、オークションに登場したディーノ246GTは、ボディカラーがシルバーで内装がタンという珍しい組み合わせ。しかもタルガトップの「GTS」ではない点も希少だ。

 シャシ、エンジン、ギアボックス、ボディのナンバーが完璧にマッチングしており、取扱説明書やツールセットなども揃っている。走行距離は7万kmほどと、年式を考えるとまずまずのオリジナルコンディションの1台だ。

 エスティメートは25万ドル−30万ドル。同じくRMサザビーズが2020年8月に開催したオンライン・オークション、「シフト・モントレー」にも1970年のディーノ246GTが出品されたが、そちらは2010年のキャバリーノ・クラッシックでFCAゴールド・アワードを受賞するなど、素晴らしい経歴を持つ1台であったこともあり、30万ドル−35万ドルのエスティメートに対して落札価格は大幅に上回る44万ドル(邦貨換算約4620万円)だった。

 こうした華やかなヒストリーがないシルバーのディーノ246GTの落札価格は、31万8500ドル(邦貨換算約3300万円)。エスティメート以上の落札価格となったことを見ると、ディーノの人気は健在というところだろうか。

 ちなみに漫画に最初に登場するディーノは、富士スピードウェイで名もなきキャラが運転し、早瀬佐近の911カレラRSとのバトル途中にシフトミスして土手に乗り上げ、クラッシュしてしまう。

【画像】助手席の女性にシフトチェンジしてもらいたい「ヨーロッパ」のコックピットとは?(39枚)

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