元祖ミニバンは日本とイタリアで誕生!? ナイスアイデアだけど出るのが早すぎた車3選

新型車のなかには「日本初」や「世界初」といった新技術を搭載するケースや、いまでは常識になったような技術を、他車に先駆けて搭載したモデルも存在。そこで、グッドアイデアながら登場が早すぎたモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

優れたアイデアを採用しながらも、出るのが早すぎた車を振り返る

 1997年に発売されたトヨタ「プリウス」は、世界初の量産ハイブリッド車として衝撃的なデビューを飾りましたが、その後は各メーカーもハイブリッド車を次々と発売したことで、いまではエコなグレードでは定番になりました。

アイデアは秀逸ながら時代の先を行きすぎたクルマたち
アイデアは秀逸ながら時代の先を行きすぎたクルマたち

 プリウスと同様に他車に先駆けて新技術や新装備を搭載し、その後、広く普及したケースもありますが、登場した当時は普及しなかったものも存在。

 そこで、グッドアイデアながら登場が早すぎたモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●フィアット「600 ムルティプラ」

斬新なデザインと優れたパッケージングの「600 ムルティプラ」
斬新なデザインと優れたパッケージングの「600 ムルティプラ」

 1956年に発売されたフィアット「600 ムルティプラ」は、同社の小型車「600」の派生車として誕生。

 フィアット・600は1955年に発売。名車と呼ばれる「Nuova 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)」に先駆けて登場し、経済的で4人の乗員と荷物を積んでも十分な速度で移動することを目指して開発された大衆車です。

 当初、搭載されたエンジンは633ccの水冷直列4気筒OHVで、これをリアに搭載してリアタイヤを駆動するRRを採用。最高出力は22馬力ほどですが、わずか450kgと軽量な車体には十分なパワーを発揮。

 そして、この600をベースとした600 ムルティプラは、全長3530mm×全幅1448mm×高さ1581mmと、現在の軽自動車よりも10cmほど長いだけと、非常にコンパクトなステーションワゴンタイプのモデルです。

 600 ムルティプラ最大の特徴はシートレイアウトで、2列シートの4人、5人乗りだけでなく、3列シートの6人乗りをラインナップ。

 全長がわずか3530mmで3列シートを実現するという、現在、日本で人気のあるコンパクトミニバンの元祖といっていいモデルです。

 さすがに600 ムルティプラは、6人乗車ではパワー不足は否めなかったとみえ、その後、小型の多人数乗車は普及しませんでしたが、いまから60年以上も前に登場したことは高く評価されています。

 なお、もうひとつの大きな特徴はデザインで、一般的なミニバンを前後逆さまにしたようなフォルムが、非常にユニークです。

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●スズキ「アルト スライドスリムドア」

秀逸なアイデアながらヒットしなかった「アルト スライドスリムドア」
秀逸なアイデアながらヒットしなかった「アルト スライドスリムドア」

 1979年に登場した軽ボンネットバンのスズキ初代「アルト」は、47万円という当時でも驚異的な低価格で発売されると大ヒットを記録し、軽ボンネットバンブームを巻き起こしました。

 そして、1988年に発売された3代目では、3ドアハッチバックかつトールワゴンでもない普通の2BOX車ながら、運転席と助手席の両側スライドドアを採用した「アルト スライドスリムドア」をラインナップ。

 アルト スライドスリムドアにはスライドドアのほかにも、シートをドア側に回転させて乗り降りをしやすくする「回転ドライバーズシート」も装備し、女性ユーザーに向けて乗降性の良さアピールしました。

 しかし当時は、狭いところでも乗り降りがしやすく、横に駐車したクルマにドアを当ててしまう心配がないというスライドドアのメリットはあまり受け入れられず、また手動での開閉だったため、女性や年配の人による坂道での開閉が大変という声もあったようです。

 そのため、標準車から約3万円高いスライドスリムドアが人気となることはありませんでした。

 その後、スライドドアは運転席のみとなり、さらに運転席はスライドドアで助手席側は前後とも通常ドアという変則的なモデルも登場しましたが、4代目アルトからは採用されていません。

 なお、後年プジョー「1007」が両側、トヨタ「ポルテ/スペイド」が助手席側スライドドアを採用して、一定の人気を獲得しましたが、スライドドアが電動化されたからでしょう。

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