なぜ最近の車はグレード体系が単純になった? 自動車メーカーが合理化を進める事情とは

かつてのクルマは豊富なボディタイプにさまざまなエンジンを用意していましたが、最近ではシンプルなグレード体系になってきています。また、車種の統合が進むなど、自動車メーカーは合理化を進めていいますが、それはなぜなのでしょうか。

かつて豊富だったグレードが今はシンプルになった!?

 最近のクルマは、以前に比べてグレード構成がシンプルになってきました。

 2020年で生誕65周年を迎えるトヨタ「クラウン」の場合、1979年に発売された6代目には、セダン、4ドアハードトップ、2ドアハードトップ、ワゴン&バンという4種類のボディが用意されていました。

トヨタ「ハリアー」は3グレード+レザーパッケージというシンプルなグレード体系
トヨタ「ハリアー」は3グレード+レザーパッケージというシンプルなグレード体系

 その後もクラウンはさまざまなボディタイプとエンジンを揃えましたが、現在の15代目クラウンは、ボディは1種類でエンジンは2リッター直列4気筒ターボ、2.5リッターハイブリッド、3.5リッターV型6気筒ハイブリッドです。

 これに伴って売れ行きも変わりました。「クラウンマジェスタ」が登場した1991年に、クラウンはシリーズ全体で16万台を販売。

 1か月平均で1万3000台ですから、いまのトヨタ「ヤリス」や「ライズ」に相当する台数を販売していましたが、現行クラウンは、2020年1月以降の販売台数が月平均1800台なので、約30年前の14%程度です。

 その代わり30年前には、いまのようなミニバンはほとんど存在していません。多人数乗車の可能な乗用車は、「タウンエースワゴン」や「ハイエースワゴン」など、ワンボックスボディの商用車をベースにした3列シート車でした。

 いまのハイエースワゴンは、4列シートを備えるマイクロバス的な10人乗りですが、ミニバンが普及する前には、シートアレンジの多彩な3列シートワゴンがあったのです。

 ただし商用車がベースですから、運転感覚や走行安定性、乗り心地、乗降性などに不満があり、最近のミニバンほど普及しませんでした。

 SUVの車種数も当時は少なく、トヨタ「ハイラックスサーフ」や日産「テラノ」、三菱「パジェロ」など後輪駆動ベースの悪路向けSUVは豊富でしたが、日産「エクストレイル」やホンダ「ヴェゼル」、マツダ「CX-5」といった前輪駆動ベースの売れ筋車種の大半は2000年以降に登場しています。

 このように近年には、ミニバンや都市型SUVのような新しいカテゴリが生まれ、新型車も増えましたが、国内の販売台数は減っています。1990年には国内で778万台のクルマが販売されましたが、2019年は520万台です。

 新しいカテゴリと車種が増えたのに、国内販売台数が33%減れば、1車種当たりの売れ行きも下がります。つまり多品種少量生産に近付いて、1車種に用意されるエンジンやグレードの数を減らすことになりました。

【画像】わかりやすい! ハリアーなどグレード体系がシンプルなモデル(26枚)

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