400万円で始める泥沼フェラーリ生活! オープン4座モデルの魅力と購入の注意点

「F40」より難物の希少フェラーリとは?

 モンディアル3.2カブリオレが、クラシック・フェラーリ入門に好適ともいえるリーズナブルなモデルであるのに対して、こちらはある意味かなりの上級エンスー向きと思われる物件。1980年代初頭におけるフェラーリのフラッグシップ「400i」をベースに社外コーチビルダーがオープンボディを架装した、少数製作のスペシャルカーである。

●1982 フェラーリ「400i カブリオレ by パヴェージ」

生産台数はたったの18台という激レアなフェラーリ「400i カブリオレ by パヴェージ」(C)Bonhams 2001-2020
生産台数はたったの18台という激レアなフェラーリ「400i カブリオレ by パヴェージ」(C)Bonhams 2001-2020

 フェラーリ400iの起源は、1972年のパリ・サロンにて本格的4シーターGTとして誕生した「365GT4 2+2」まで遡ることができる。

 365GT4 2+2から400i、あるいはテールに小変更を加えた「412」まで継承されたピニンファリーナ製クーペボディは、名デザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティが今なお自身の傑作と称するもの。

 それ以前のフェラーリ2+2モデルでは定石だった2600mmから、2700mmまで延長されたホイールベースを生かした上に、フォーマル感も兼ね備えたノッチバックスタイルとされ、類まれなエレガンツァと高い実用性を両立していた。

 パワーユニットは365GTC/4譲りの4.4リッターV型12気筒・4カムシャフトにキャブレターを組み合わせ、340psを発生した。

 1976年になると、365GT4 2+2はエンジンを4.8リッターに拡大した「400GT」に発展。フェラーリとしては初めてGM社製3速オートマティックも選択可能となった。この3速ATモデルは「フェラーリ400AT」と呼ばれる。

 さらに1978年には、エンジンが燃料噴射化された「400i」に取って代わられた。V12ユニットはメイン市場であるアメリカの排ガス規制を意識して、310psまでドロップしてしまったのだが、ドライバビリティは格段に向上することになった。

 さて、今回の「The Bonmont Sale 2020」に出品された400iは、ミラノ近郊に拠点を置き、現在ではスーパーカー/高級クラシックカー専門ディーラーとして活動を続けている「パヴェージ(Pavesi)」がカスタマイズした、4シーターのカブリオレである。

 パヴェージ社は「スクーデリア・フェラーリ」と同じ1929年の創業当初から、「カロッツェリア(Carrozzeria:ボディ架装工房)」を名乗っていたが、完全なオリジナルボディを製作することはほとんどなく、自動車メーカー製の既成ボディをベースに改装を加えることが主な生業だった。

 アルファロメオ製ベルリーナ(セダン)をベースとするワゴンボディや、デ・トマゾ各モデルのオープン版など、メーカーの準カタログモデルの少量製作を引き受ける一方で、フェラーリについては「365GTB/4デイトナ」をベースとする「タルガトップ」風スパイダーモデルを独自に少数製作したことでも知られる。

 今回紹介する400iカブリオレは、マラネッロ本社からの公認を受けた数少ないパヴェージ製フェラーリのひとつ。ほかのスペシャルショップ製カブリオレたちが、単にルーフを切り落とした「チョップトップ」に過ぎないのに対して、パヴェージは剛性を確保するためにシャシを強化し、電動のコンバーチブルフードを設計・施工したという。

 それゆえ販売価格はスタンダード400iの2倍近いものとなってしまったことから、製作台数は18台に終わってしまったものの、そのうちの12台はマラネッロ本社工場からオーナーに直接デリバリーされたといわれている。

 そんな超レア物のフェラーリながら、ボナムズ社と現オーナーが設定したエスティメートは7万5000−9万5000スイスフラン、日本円に換算して約880万円−1100万円という比較的リーズナブルなものとなった。

 そして9月20日の競売では予想どおりのビッド展開を見せ、手数料込みでの落札価格は8万3950スイスフラン、日本円換算にして約954万円で、新しいオーナーのもとに譲られることになったのだ。

 365GT4 2+2から最終型「412」に至る、一連のフェラーリ12気筒2+2クーペは、かつて筆者がコーンズ&カンパニー・リミテッドの営業現場に在籍していた時代のオーナーたちから「F40よりも難物では?」ともいわれていた、かなりのクセモノ。

 しかも今回の出品車両は、小さなカロッツェリアで改装されたものゆえに、新しいオーナーには様々な波乱が待ち受けているだろうが、それでもヨーロッパでコンクール・デレガンスなどに参加すれば、きっとスターのごとく扱われるに違いないと思うのである。

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