「日産58台の衝撃」から1年 2020年内に韓国市場撤退 日産と韓国の関係はどう変化?
2020年12月をもって韓国市場からは撤退
日産は、2004年から韓国市場で日産・インフィニティブランドを展開。2005年からインフィニティ車、2007年から日産車を販売していましたが、2020年5月28日、日産の韓国現地法人である韓国日産は、「日産が2020年12月をもって韓国市場から撤退」することを正式に発表しました。
撤退の理由について、日産は「グローバルレベルでの戦略的事業の改善策の一環として、中長期的に世界市場での健全な収益構造を確保し持続可能な事業基盤を用意するため」と説明しています。
さらに、次のようにもコメントしています。
「韓国市場での事業を継続するための韓国日産の努力にもかかわらず、内外的な事業環境の変化に起因して市場の状況はさらに悪化し、日産本社は韓国市場で再び持続可能な成長構造を備えることが難しいと判断しました」
この「内外的な事業環境の変化」というのが、前述の日本製品不買運動や日産内部の「お家騒動」を指すのかは定かではありませんが、中長期的に見て韓国市場に成長性がないと判断されたと考えられます。

しかし、日産撤退の根本的な理由はほか他にあると考えられます。それは韓国という国の置かれた地政学的な環境です。
韓国は南側に海を挟んで日本、北側には北朝鮮、そして中国やロシアという国に囲まれており、それぞれデリケートな関係があり絶妙なバランスの外交関係の上に成り立っています。
一方で、韓国の国内市場は北朝鮮を除く周辺国家に比べれば小さく、日本同様資源の少ない国でもあることから、韓国国内市場よりも海外市場で経済活動をおこなうことで外貨を獲得する必要があります。
自動車であればヒュンダイ、電機製品であればサムスンやLGなど、各産業でグローバルに活躍する韓国企業は少なくありません。
当然、韓国国内市場はそうした韓国企業が多くのシェアを持っているため、海外企業は大きなシェアを期待することはできません。
実際に、韓国における輸入車比率は15%程度であり、台数にすれば25万台程度です。そのうちの50%以上をドイツ系ブランドが占めていることから、日系ブランドが期待できるのは、せいぜい2万-3万台です。これは年間400万台以上を販売する日産にとって、あまりに小さい数字といえます。
再建を期する日産にとって、利益が見込めない市場からの徹底はやむを得ないことだといえるでしょう。
なお、日産が撤退した後のメンテナンスなどのアフターケアについて、日産は「今後8年間(2028年まで)、当社の大切なお客さまに適切なサービスを提供するために最善を尽くしていきます」と説明。さらに、今後の新車購入は在庫が枯渇するまでディーラーショールームを介して購入可能としています。
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「58台の衝撃」から1年、やはり日産は韓国市場からの撤退という判断をすることになりました。
しかし、それは日本製品不買運動という一時的な販売減少要因ばかりが原因ではなく、韓国市場が持つ特徴を考えたうえでの合理的な判断の結果と考えられます。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。






























