M3のピックアップも!? スワップ上等!! メーカーが手掛けた魔改造「M3」とは

世界中のBMWフリークのなかには、好きなボディに理想のエンジンをスワップしてカタログモデルにない自分だけの1台を作る人も多い。同じようにBMW本社では、開発のためにM3のエンジンを別のボディに載せ替えたプロトタイプを幾台も製作している。そこで、メーカーが作ったM3エンジンを移植されたプロトタイプを紹介する。

「M3」をピックアップに仕立てる

 もともと「M3」はレースシーンで活躍することを目指して開発されたクルマである。しかし、その初代M3の頃から、オープンモデルである「M3カブリオレ」がラインナップに加わるなど、ボディバリエーションの拡張には余念がなかったようだ。そこで、市販化こそされなかったが、非常に魅力的なM3のプロトタイプを紹介しよう。

●1986 BMW「M3ピックアップ」

E30 3シリーズのカブリオレをピックアップにして、M3のs14エンジンに換装したM3ピックアップ
E30 3シリーズのカブリオレをピックアップにして、M3のs14エンジンに換装したM3ピックアップ

 E30 3シリーズには、クーペ、セダン、カブリオレ、ツーリングと、多彩なボディ形状がラインナップされていたが、ピックアップは市販モデルラインナップには存在していない。

 荷物を運搬するために製作されたE30「M3ピックアップ」だが、ベースにカブリオレのボディが選ばれたのには、ふたつの理由があった。

 その理由のひとつは、当時のBMW Mディビジョンで完璧なコンディションのカブリオレの個体を持っていたこと。第二に、カブリオレが内蔵しているブレース(支柱)は、ピックアップに使用するのに理想的だったこと、というふたつの理由である。

 E30 M3にはカブリオレも存在するが、最初のM3ピックアップが、E30 M3の特徴的なオーバーフェンダーボディではなく、ナローボディで作られたのは、こうした理由による。

 当初、このM3ピックアップには、192psを発生する2リッターエンジンが搭載されていた。E30 M3に搭載されていたS14型をベースに、ショートストローク化によって排気量を2リッターに収めた、通称「イタリアンM3」のエンジンである。これは、2リッターの排気量を超えると多くの税金がかかるイタリアの税制への対策として作られたエンジンである。

 ちなみに、この「イタリアンM3」のエンジンは、ナローボディの3シリーズに搭載し、「320is」という名称でイタリアで販売されていた。

 その後、200psを発生するE30 M3に搭載されていた2.3リッター直列4気筒エンジンに積み替えられた。

このM3ピックアップは、26年の間、ファクトリーの周辺を実際に運搬車として走り回っていた。

 BMW M3ピックアップが、長い期間現役であったという事実は、このように作り出されてきたワンオフのモデルたちが、単にエンジニアがおこなう試みではないという、はっきりとした証拠である。

 それどころか、想定された仕事に対して、最適化された高性能車だったといっていいだろう。

●2011 BMW「M3ピックアップ」

E93 M3カブリオレをピックアップ化
E93 M3カブリオレをピックアップ化

 初代のM3ピックアップは、非常に便利ではあったが、さすがに26年も経過すると、幾分調子も悪くなり、後継車が登場することとなる。

 E93 M3カブリオレをベースとして製作したのが、2台目のM3ピックアップである。

 このM3ピックアップの誕生には、ひとつのエピソードがある。それは、2011年の春に、エイプリルフールになにかおもしろいことをやろう! とあるスタッフが言い出したことが発端となる。

 実際にニュルブルクリンクを走らせ、あたかも開発途中であるかのようにスパイショットを撮影して、リークしたのである。そして2011年4月1日に、セダン、クーペ、カブリオレに続く第4のバリエーションとしてプレスリリースで発表したというわけだ。

 そしてそのプレスリリースには、「420psをボンネット下に収め、積載能力は450kg、Mの血筋が証明するドライビングプレジャーと、日常的な使い勝手を高次元で融合させた新型。Cd値は、M3クーペよりもわずかに高く、コンバーチブルよりも50kg軽量で、20kgのタルガルーフを取り外すことで、さらなる低重心化となり、さらにシャープなハンドリングを実現」と書かれていた。

 最初のM3ピックアップは、ファクトリーの敷地内だけでしか走行できなかったが、2代目のM3ピックアップは、公道を走ることが出来る最強のトランスポーターである。

【画像】実際には販売されていない「M3」とは(29枚)

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