現行プリウス出て5年もなぜ旧型モデル売る?「プリウスα」の存在意義とは

プリウスαのフルモデルチェンジはあるのか!?

 それではなぜ、プリウスαはフルモデルチェンジされないのでしょうか。トヨタの販売店に尋ねると、次のような回答でした。

トヨタのハイブリッド専用ワゴン「プリウスα」
トヨタのハイブリッド専用ワゴン「プリウスα」

「プリウスαの売れ行きはかなり下がりました。発売されたときには、『ウィッシュ』のような天井の低いミニバンからの乗り替えもありましたが、いまのミニバンはどれも『ヴォクシー』のように背が高いです。

 プリウスαは、ヴォクシーなどに比べると車内も狭いため、乗り替えるお客さまも減りました。ここまで売れ行きが下がると、フルモデルチェンジをしても、好調に売れる可能性は低いでしょう。そうなると見送られます」

 では、逆にプリウスαが廃止されない理由は何でしょうか。この点も販売店に尋ねました。

「いまでも前期型のプリウスαから、後期型に乗り替えるお客さまがおられます。走行距離が伸びるためにハイブリッドが必要で、荷物を積むから使いやすい荷室も欲しいという人です。

 ただしヴォクシーのような背の高いボックス型ミニバンは、安定性が下がるため好まれません。そのようなお客さまにとって、プリウスα以外の選択肢はないようです。『カローラツーリング』を提案したこともありますが、荷室が狭いと断わられました」

 プリウスαは、メーカーにとって判断の難しいクルマなのでしょう。いまではさまざまなトヨタ車にハイブリッドが設定されるので、プリウスαからヴォクシーや「シエンタ」のハイブリッドに乗り替えるユーザーも少なくありません。

 5ドアハッチバックのプリウスも、現行型にフルモデルチェンジされて荷室容量を56リッター拡大しました。

 その結果、プリウスαのニーズが下がり、今後の売れ行きも不透明なのでフルモデルチェンジをおこないにくいです。

 その一方で、プリウスαは1か月に600台程度は登録されています。背景にはワゴンの激減があります。

 プリウスαの全長は4630mmから4645mmですが、このサイズのワゴンは、もはや日本車では選べません。

 カローラツーリングは4495mmと短く、荷室の奥行寸法も、継続生産される先代の「カローラフィールダー」に比べて50mm短くなりました。

 先ごろ新型が披露されたスバル新型「レヴォーグ」は、荷室面積にも余裕がありますが、全長が4755mmに達するとともに、ターボ車のみのラインナップでハイブリッド車はありません。マツダ6ワゴンにもハイブリッドはなく、全長は4800mmを超えます。

 ミニバンのように重心が高くないミドルサイズのハイブリッドワゴンを探すと、いまでもプリウスαは必然の選択です。

 そのためにプリウスαを乗り継ぐユーザーもいて、1か月に600台前後は着実に売れるのです。そうなるとクルマの売れ行きが全般的に下がったいま、廃止するのは惜しいでしょう。

 昨今は前述の通りワゴンの車種数が激減して、乗り替える新型車がなくて困っているユーザーもいます。

 プリウスαにも根強い人気があるなら、新しいプラットフォームを使った新型プリウスα(あるいはプリウスワゴン)の登場に期待したいです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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