インチアップ&低扁平タイヤはスポーティ でもなぜ最高峰F1のタイヤは13インチで厚いのか

いまでは18インチは当たり前、ハイパフォーマンスカーでは19インチや20インチ、21インチタイヤが純正装着されていることもあるように、大径ホイール&扁平タイヤはスポーツカーの代名詞となっている。では、なぜ自動車レースの最高峰、フォーミュラ1(F1)は13インチで、ぶ厚いタイヤを履いているのだろうか。

薄い扁平タイヤはなぜ高性能なのか

 スーパーカーなどハイパフォーマンスのモデルは、大径のホイールに薄い扁平タイヤを装着している。このように、薄い偏平タイヤは高性能というのが常識だが、ではなぜ、自動車のレース最高峰であるF1のタイヤは、小径ホイールにぶ厚いタイヤを装着しているのだろうか? これは簡単そうで結構奥が深い問いだ。

新型コロナウイルス感染拡大で開催が遅れていた2020年のF1だが、7月9日から無観客でオーストリアGPが開催された。今シーズンは9月6日のイタリアGPまで全8戦となる
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 F1のタイヤの話をする前にまず「偏平タイヤがなぜ高性能なのか?」という理由を説明しておこう。

 タイヤの性能を測定する機械は色々あるが、その機械で測ったデータ(数値)を、比べてみたい特性に合わせて計算で数字を出していくこともある。そのひとつが、タイヤに掛かる荷重に対するCP〈コーナリングパワー〉のグラフがある。CPは、簡単にいうとタイヤが発揮できるグリップ力だと思っていい。

 タイヤに掛かる荷重が増えていくとCPも増えていくが、荷重が増え過ぎるとCPは荷重に比例して伸びず、落ちていくケースもある。横軸に荷重、縦軸にCPをとったグラフで見ると、82%偏平の場合にはカーブになり、70%偏平、60%偏平、50%偏平になるに従い直線的になっていく。つまり荷重が増えていってもグリップの低下が少ないということだ。

 これがなぜ高性能になるかというと、カーブを曲がるクルマのタイヤのグリップを想像してもらいたい。

 直進時に一定スピードで走っていれば、左右のタイヤに掛かる荷重は1輪あたり100%のままだ。カーブになって重心が遠心力で外側に引っ張られると荷重は外側のタイヤに多くかかり、その分内側のタイヤは少なくなる。極端に表すと、外側150%、内側50%になったとする。外側のタイヤが大きな荷重を負担しなくてはならないが、そこで荷重が大きくなってもCPが比例して大きくなれば、左右のタイヤの合計のCPは低下しないことになる。

 これが、荷重が増えてもそれに比例してCPも増える低偏平タイヤのメリットだ。

 これは前後のグリップ力にも表れる。ブレーキングしたときに前輪の荷重が増えるが、増えた分だけグリップ(この場合は縦方向のブレーキングフォース)が増えてくれれば、強いブレーキングでも止まる能力を高く保てるのだ。

 では、なぜ偏平になるほど高荷重になってもグリップを保つことができるのかというと、偏平タイヤになってトレッド幅が広がり、スチールやアラミドでできたベルトの剛性も高くなり、大きな力が掛かっても変形しにくくなるからだ。

 トレッド面が変形しにくいということは、接地部分(路面とトレッド面)がしっかりとコンタクトしてくれるということでゴムのグリップ力を発揮できるということだ。またタイヤのサイドウオールが低いから、その剛性も高い。つまり強い力が掛かっても、タイヤが変形しにくいのだ。

 またハイパフォーマンスカーはエンジンの出力が上がるが、それに対応してブレーキの能力も高めなくてはならない。偏平タイヤによってホイール径を大きくすることでブレーキのディスクローター径を大きくできる。

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