インチアップ&低扁平タイヤはスポーティ でもなぜ最高峰F1のタイヤは13インチで厚いのか

フォーミュラ1のタイヤも近い将来18インチになる!?

 では、なぜフォーミュラ1のタイヤは偏平タイヤではないのか?という問いに答えよう。

 いろいろと調べてみたが、結局は「それはレギュレーション(規則)で決まっているから」という簡単な結論でしかない。長年、13インチホイールを使うことが決められていたからだ。

ピレリは以前から18インチのF1タイヤをテストしている。写真左は現在の13インチF1タイヤ、右が18インチのF1タイヤ
ピレリは以前から18インチのF1タイヤをテストしている。写真左は現在の13インチF1タイヤ、右が18インチのF1タイヤ

 1976年と1977年に、6輪ティレルというF1マシンが走ったことがある。空気抵抗を減らすために前輪を10インチにして、接地面積が不足する分はフロントを4輪にして対応したマシンだ。しかしホイールは13インチでなくてはならないというレギュレーションができて終わった。

 もし今のレギュレーションを変更することになったら、チームはマシンを作り直さなければならない。サスペンションアームのレイアウトを変えなくてはならないのはもちろん、シャシ側の取り付け点も見直さなくてはならない。サスペンションセッティング、強度のチェック、エアロダイナミクスも全面的に見直しになるだろう。当然これには莫大な費用がかかることが予想される。

 もしタイヤとホイールのサイズが自由に選べるようになったら、違うサイズを選ぶチームが現れるかもしれない。しかしタイヤを供給するタイヤメーカー側からは、全チームの全車が同じサイズだから供給できるのであって、チームごとにサイズがバラバラになったら供給さえおぼつかなくなる。

 F1は、同じ条件でレースをしていればいい。タイヤのレギュレーションが昔のままでも成り立つので、いままで長い間13インチのままだった。

 じつはワンメイクでタイヤを供給するピレリは、インチアップされたF1タイヤのテストを続けており、2021年にはついに18インチ化が予定されていた。

 ただし新型コロナウイルス感染拡大により、2020年シリーズのF1は開催国を欧州に限定し、規模を縮小して開幕した。これにより、来年2021年に予定されていた18インチタイヤ化も先送りとなったようだ。

※ ※ ※

 ちなみに電動フォーミュラカーによる国際レースシリーズのフォーミュラEは、18インチタイヤを採用している。

フォーミュラEは18インチタイヤを装着する。写真は第10戦ベルリン大会で優勝した日産e.damsのオリバー・ローランド
フォーミュラEは18インチタイヤを装着する。写真は第10戦ベルリン大会で優勝した日産e.damsのオリバー・ローランド

 フォーミュラE自体、2014年から開始された新しいカテゴリーのフォーミュラレースで、まったく新しいレギュレーションで始まっている。最初から全車が18インチのホイールで、フロントは245/40R18、リアは305/40R18というサイズになる。しかも溝付きの全天候型タイヤ、つまりF1タイヤに比べたら、ほぼ市販タイヤに近い。

 フォーミュラEにワンメイクでタイヤを供給するミシュランによると、市販タイヤにより近いサイズのタイヤを使うことで、レースから得た多くの情報を市販タイヤにフィードバックできるという。

 ようするに現在の13インチというF1のレギュレーションは、世の中の変化、技術の進化に追いつけなくなったのではないか、というのが結論である。

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