いまの2倍以上は走る!? トヨタが研究開発する「全固体電池」はEVの救世主になるのか
トヨタが開発を勧める「全固体電池」は、EV(電気自動車)の性能を飛躍的に向上させる可能性があるバッテリーとして、いま注目を集めています。全固体電池という単語をニュースで見たことがある人も多いと思われますが、そもそも従来のバッテリーと何がちがうのでしょうか。
トヨタが研究する次世代バッテリー「全固体電池」の特徴とは
全固体電池(ぜんこたいでんち)という用語があります。EV(電気自動車)の開発にからんで、テレビやネットのニュースで見たことがある人もいると思いますが、全固体電池が本格的に実用化されると、EVの需要が一気に高まるという見方が、自動車業界の一部にはあるようです。本当にそうなるのでしょうか。
現在、EVで一般的に用いられているリチウムイオン電池は、正極にリチウム酸化物、負極に炭素材料などを使用。正極と負極の間には電解質として電解液という液体が入っていますが、全固体電池は電解質を固体にするという考え方です。
全固体電池のメリットについて、電池業界の一般的な見解として大きくふたつの点が挙げられています。
ひとつは、電池の基本性能であるエネルギー密度と出力密度が上がることです。
具体的な数字について、自動車技術カンファレンス「オートモーティブワールド」で、トヨタの技術者が2020年1月に明らかにしました。
それによると、エネルギー密度では、電解液を使用する現行製品が300Wh/Lであるのに対して、全固体電池では400Wh/Lから800Wh/Lと、最大で2倍以上の性能アップが可能だと説明しています。
これにより、EV向けの電池パックを小型化できたり、現状の電池パックの大きさを維持しながら航続距離を長くすることなどが可能となります。
もうひとつのメリットは、安全性の向上です。
リチウムイオン電池では、大型旅客機の搭載機器での火災事故が報道されたり、パソコンがいきなり燃えたといった動画がSNS上にアップされるなど、これまで安全性に対する課題が指摘されることがありました。
こうした発火の主な原因として指摘されるのが、ショートサーキット(内部短絡)です。
電池の温度管理が不適切だったり、電池内部に異物が混入するなどして、正極と負極の中間にあるセパレーターという部品が破損すると、電池内部でショートした火花が電解液に着火する場合がありました。
近年は電池の製造時の安全性確保、電池内部構造の設計の見直し、電池の温度管理の制御技術の向上、また車両事故の際の安全性確保についての研究開発などが進んでいます。
それでも、電解質が液体から固体になることで、発火の危険性が下がるという点では、トヨタをはじめ、EVを開発している自動車メーカー、電池メーカー各社の技術者の共通認識だと思います。
しかし、なぜ最近になって、全固体電池に注目が集まるようになったのでしょうか。
記事タイトルの漢字が間違ってますよ。
「全個体」ではなく「全固体」です。
このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。
修正いたしました。