「ディーノ」はスーパーカーブーム時代のハンドリングマシン! 落札価格に要注目!!

スーパーカーブーム時代に流行ったコミックでは、大パワーのスーパーカーを、格下のハンドリングマシンがコーナリングで抜き去るのが痛快だった。そしてそのハンドリングマシンの代表が「ディーノ246GTS」だ。跳ね馬のバッジを装着しないフェラーリは、世界のコレクターからいまなお熱い視線を集めている。

フェラーリであってフェラーリではない!? 名車「ディーノ」とは?

 新型コロナ禍にあるこの2020年8月1−2日、英国「シルバーストーン・オークション」社がオンライン限定で開催するオークション「The Silverstone Classic Live Online Auction 2020」では、往年の人気コミック『サーキットの狼』の世界から飛び出してきたような、珠玉のクラシック・スーパーカーたちが数多く出品されている。

 今回はそのなかから、漫画の世界を超えてクラシック・フェラーリの世界でも定番となった一台、1973年型「ディーノ246GTS」を選び、オークション直前の「レビュー」をお届けすることにしよう。

●名作ディーノGTのスパイダー・バージョン

約2万9200kmというコレクションするにはもってこいの個体である「ディーノ246GTS」には、約4040万円~4710万円のエスティメートが付けられている(c)SILVERSTONE AUCTIONS
約2万9200kmというコレクションするにはもってこいの個体である「ディーノ246GTS」には、約4040万円~4710万円のエスティメートが付けられている(c)SILVERSTONE AUCTIONS

 コミック『サーキットの狼』におけるディーノといえば、連載初期のエピソード「公道グランプリ」篇で、悲劇的かつヒロイックな存在感を示したライバル「沖田(ファーストネームの指定はなし)」が乗った、ベルリネッタ型の「246GT」が思い出される。

 沖田の没後は主人公の風吹裕矢に引き継がれ、大幅な改装(マンガとはいえ、かなり無理がある設定なのだが……)を受けた上で、連載中期の「流石島レース篇」にも登場する。

 一方、このほど「The Silverstone Classic Live Online Auction 2020」に出品されるのは、シリーズ後期に追加されたセミオープン・モデル「246GTS」なのだが、ここでは、「ディーノGT」の代表としてご覧いただくことにしよう。

 フェラーリとしては初めての市販ミッドシップカーにして、フェラーリ史上屈指の名作であるディーノGTは、1968年に生産が開始された「206GT」に端を発する。

 206GTはフェラーリが設計し、フィアットで生産される2リッターV型6気筒エンジンを、ピニンファリーナのデザインによる総アルミ製ボディに搭載したモデル。当時の常識を超えた驚くべきハンドリングに、芸術的とも称される美しいスタイルで世に衝撃を与えた。

 生産台数はわずか150台と、ミッドシップ市販車の実験的要素あるいはレース用エンジンのホモロゲーションモデルとしての要素もあった206GTだが、世間の評価は予想以上に高かったようだ。

 そこでフェラーリは、1969年にエンジンを2.4リッターに拡大するとともに、ボディの一部およびエンジンブロックをスティール化。さらにホイールベースを60mm延長することで実用性や生産性を向上させたディーノGTの本命「246GT」へと進化させることになる。

こうして誕生したディーノ246GTだが、その生産期間中にはいくつものアップデートを受けている。

 最初期モデルの「タイプL」では206GTから踏襲されたセンターロック・ハブ+スピンナーのホイールは、1971年初頭から生産された「タイプM」以降では5穴のボルトオンタイプへと変更。

 さらに同年末から生産開始された「タイプE」のシリーズ中途には、前後のバンパー形状も206GT以来のラジエーターグリルにくわえ込むスタイルから、グリル両脇に取り付けられるシンプルな意匠に変更されるなど、そのマイナーチェンジの内容は多岐にわたるものだった。

 そして、特に北米マーケットからのリクエストに応えて、1972年のジュネーブ・ショーではデタッチャブル式トップを装着したスパイダー版である246GTSが追加デビューし、結果としてシリーズ最終期の生産の多くを占める大ヒット作となったのである。

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