コロナ禍で自動車税は支払い猶予 ガソリン税は? 車にかかる不誠実な税金の実態

ガソリンの販売価格の半分以上は税金!? 本当に必要?

 そしてもうひとつ、隠れた大問題が燃料に含まれる税金です。

 ガソリン1リッターには、揮発油税+地方揮発油税の53.8円、石油税の2.8円が上乗せされています。

 しかも消費税は、ガソリン本体価格+揮発油税+地方揮発油税+石油税の10%として課税されます。揮発油税などの税金にも消費税を掛ける二重課税です。

ガソリン価格の半分以上は税金
ガソリン価格の半分以上は税金

 ちなみにレギュラーガソリン1リッターの価格を、2020年6月上旬の相場に沿って130円とすれば、揮発油税+地方揮発油税+石油税の合計は56.6円で、二重課税の消費税が11.82円です。

 税金の合計額は68.42円になり、ガソリン小売価格の130円に占める割合も53%に達します。ガソリン価格の半額以上が税金で占められるのです。

 小売価格が130円の場合、本体価格は61.58円ですから、仮にコロナ禍対策で揮発油税+地方揮発油税+石油税を非課税にすれば、ガソリンの小売価格は、本体価格の61.58円に10%の消費税を加えた67円です。

 新型コロナウイルスで困窮しながら商売をしている人達にとって、レギュラーガソリン価格が1リッター当たり67円まで下がれば、とても有り難いでしょう。ディーゼルの燃料となる軽油にも、同様に税金が含まれています。

 しかも燃料に含まれるこれらの税金と、自動車重量税、環境性能割の前身だった自動車取得税は、課税する法的な裏付けを失っています。

 なぜなら、これらの税金は、もともと道路建設費用をまかなうための道路特定財源として徴税を開始したからです。

「道路の恩恵を受けるのは、おもにクルマのユーザーだから、道路建設費用も負担すべき」という考え方に基づいていました。

 ところが道路特定財源制度は、2009年に廃止されています。

 そうなれば当然に自動車重量税、自動車取得税、燃料に含まれる税金も廃止すべきですが、いまでも徴税が続いて一般財源(普通の税金)として使われています。クルマのユーザーは、不当に多額の税金を納めさせられているのです。

 さらに新型コロナウイルスの影響もあって新車を購入できず、初度登録(軽自動車は初度届け出)から13年を超える車両を使い続けていると、自動車税、軽自動車税、自動車重量税が増税されます。

 納税期間が猶予されたとしても、少なくとも1年後には、増税された高額な税金を納めねばなりません。

 クルマがあれば、高齢になって体力が弱っても、自分で通院や買い物に出かけられます。クルマは弱い人達の味方になる素晴らしいツールです。それなのにクルマを取り巻く制度は、弱い人達にとても意地悪です。

 新型コロナウイルスで、その悲しい現実が、ますます赤裸々になってきました。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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