ホンダ「ジェイド」生産終了 一方「シャトル」が前年比160%を達成したワケ
ホンダは、2020年7月で同社のステーションワゴン「ジェイド」を生産終了することを明らかにしました。一方、同社には同じくステーションワゴンの「シャトル」がラインナップされますが、2020年4月期で前年比160%を達成しています。この違いはなんなのでしょうか。
ジェイド生産終了でも… シャトルが堅調なワケ
2020年7月に生産を終了することが明らかになったホンダのミニバン&ステーションワゴン(3列モデルと2列モデルをラインナップしていた)「ジェイド」。生産終了となる大きな理由は人気が振るわなかったことと推察されます。2019年度販売台数ランキングでは登録車のトップ50にも入っていませんでした。
一方でホンダには、健闘しているステーションワゴンがあります。それは「シャトル」。果たして堅調に売れている背景にはどんな理由があるのでしょうか。
シャトルのルーツは2005年にデビューした「エアウェイブ」です。フィットの車体構造をベースに全長を伸ばして荷室を拡大したコンパクトなステーションワゴンで、全長4350mmのボディサイズからは想像できないほど高い積載能力が自慢。使い勝手のいいモデルでした。
その後、2011年にはフルモデルチェンジで「フィットシャトル」へ改名。次のモデルチェンジでさらに車名が「シャトル」へと変更されて現在に至ります。
2019年5月にはマイナーチェンジを実施し、内外装ともにリフレッシュされて上質感がアップ。先進装備としてオートハイビームが追加され、「サポカーSワイド」にも対応しました。
そんなシャトルの販売データを見ると、興味深い傾向が見えます。一般的にクルマはデビューから時間がたつにつれて「新車効果」が薄れて販売台数が減る傾向にあります。
しかし、シャトルは2019年度の販売において前年度比104.1%とその前年度の実績を上回りました(2019年度販売台数は2万8698台でランキング31位)。
さらに、2020年4月の販売は1055台(ランキング34位)と絶対的な台数こそ多いとはいえませんが、しかしながら前年度実績と比べるとなんと160.6%という大幅な伸びを示しているのです。
もちろん、2019年5月に実施したマイナーチェンジの効果で販売台数の落ち込みを防いだという理由はあるでしょう。しかし、何かほかにもワケがありそうです。
実は、その秘密はガソリン車(非ハイブリッド車)の存在にありました。シャトルには4つのグレードがありますが、価格が高いほうから3つのグレードはハイブリッドで、もっとも安価なグレードだけがガソリン車です(その構成はマイナーチェンジ前から変わっていません)。
それに関して興味深いデータがあります。パワートレインごとの販売台数(構成比)を2018年度と2019年度で比べた数字で、そこからある傾向が見えてきます。
●2018年度:ハイブリッド2万2900台(83%)/ガソリン4673台(17%)
●2019年度:ハイブリッド2万2227台(77%)/ガソリン6467台(23%)
ハイブリッドの販売台数は12か月で前年度比マイナス673台とわずかに減った一方、ガソリン車の販売台数がそれ以上に増えているのです(+1794台)。
つまり、ガソリン車の販売台数が増えたことでトータルの販売台数を対前年度比プラスへ導いた状況。いい換えれば、「安いグレードが以前よりも売れた」ことで全体の販売台数増になったといえるでしょう。
このことについて、ホンダの広報部は次のように話します。
「5ナンバーサイズでありつつも、荷室が広いこと。それがシャトルを選んでいただく理由になっていると考えています。
ガソリン車はお求めやすい価格で高い実用性と安全性を兼ね備えた点が、価格を重視するお客さまにもご好評いただくポイントになっているのでしょう」
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割安感のあるクルマを求めるニーズがシャトルのベーシックグレードの人気を押し上げたと考えてよさそうです。
G7諸国の中で唯一所得が下がり続ける日本。安い車しか売れません。