クルマで本を借りる? ドライブスルー図書館が誕生 利用実態はどうだった?

コロナ禍によって、ドライブスルーによる本の貸し出しサービスをおこなう図書館が増えています。どのような貸出サービスなのでしょうか。

臨時休館中の図書館でドライブスルー貸し出しが続出? その実態に迫る!

 新型コロナウイルスの影響により、各地の図書館では臨時休館の措置を取らざるえない状況です。しかし、長期間の閉館となれば、地域住民からは「困った」との声が寄せられます。

 そこで、こうした問題に対応するべく、ドライブスルー方式の貸し出しを導入する図書館が増えています。どのような貸出サービスなのでしょうか。

宇部市立図書館が実施したドライブスルーによる本の貸出
宇部市立図書館が実施したドライブスルーによる本の貸出

 その実態について、ドライブスルー図書館を実施する山口県の宇部市立図書館の担当者は、次のように話します。

――ドライブスルーによる貸し出しを始めたきっかけを教えてください。

 ドライブスルー方式をはじめたきっかけは、感染リスクを防ぐためです。コロナの影響で図書館はしばらく臨時休館となり、その期間も長かったために、地域住民から貸し出しを望む声が多く寄せられたのです。

 全国の図書館でも、ネット予約での臨時窓口を設けていたため、臨時窓口を開通するにあたり、一時的にドライブスルーレーンを設置しました。

 クルマを利用すれば、職員と利用者同士の接触を避けられるでしょう。3密にもならず、ソーシャルディスタンスを守れることから安全な試みだと思いました。

 実施機関は、試行2日間を含め、2020年4月28日から5月17日までおこなっていましたが。19日からは制限を設けながらも開館をはじめているため、ドライブスルー方式は実施していません。

――主なサービス内容や利用方法について教えてください。

 まず、事前にインターネットで本の貸し出し予約をおこなってもらいます。本の準備ができ次第、こちらからメールでにてお知らせをするので、図書館のほうにクルマでお越しいただくシステムです。ネットが使えない高齢者の場合は、用紙に書いて対応してもらいました。

 受け取り時は、前の人から順番に本の予約カードを預かり、職員が図書館内で貸し出し処理をしてから、品物を渡します。

 利用者側は、クルマに乗ったまま受け取ることができるようになっています。また、感染予防のためにも運転手には必ずマスクの着用をお願いしていました。

――実際に、ドライブスルー方式を導入してみてどうでしたか。

 あくまでも簡易的な対策方法なので、飲食店がおこなうドライブスルー体制を用意できません。そのため、実施して感じる課題はいくつもありました。

 利用者が予約した本を職員の手で用意するのが手間になります。何万冊という本のなかから、職員の手によって用意しなければならず、1人分であっても大きな負担でした。

 また、何百人という人が予約の本を待っているので、図書館に訪れた人の名前を探して選ぶことを考えると、数が増えれば増えるほど大変です。

 利用者側としても、読みたい本は、自分の目で見て選ぶのが1番だと思います。

――ドライブスルー方式導入後、利用客の傾向や人数に変動はありましたか。

 以前と同様に、ドライブスルー方式で貸し出し利用する人の大半は、子連れのご家族か年配者が目立っていました。通常の開館時とその傾向は大きく変わりません。しかし、利用者は減少傾向です。

――今後、ドライブスルー方式を再開する見込みはありますか。

 開館時と平行して、ドライブスルー方式を導入するのは非常に難しいです。職員の負担が大きいほか、ドライブスルー利用者向けに本の置き場を確保するスペースもありません。

 今回の実施は、あくまでも苦肉の策であり、今後の再開はないに等しいでしょう。また、利用者もご自身で本を選ばれたほうがいいと思います。

 ただ、再び臨時休館せざる得ない状況になった場合は、ドライブスルー方式を復活する可能性もあります。ただ、今後の動きについて、今はなんともいい切れない状況です。

 今回は、感染リスクに対する対応方法がわからなかった結果、この方法を導入しました。本について接触感染の可能性もあるなかで、はっきりとした結果も分かっていません。

 本を経由して移る可能性もゼロとはいえないでしょう。そのため、今後どのように対策するべきか、はっきり分かればドライブスルー方式以外の対応を取ることもあると思います。

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