「500」の名を持つ可愛いフィアット3選。チンクエチェント歴代物語

2007年に登場したフィアット「500」は、日本でもいまだに高い人気を誇っているロングセラーだ。その500の次世代版が、2020年3月に発表された。そこで、歴代500を振り返ってみよう。

ちっちゃくてカワイイ! みんなに愛されるフィアット500の歴史を振り返る

 2020年3月に、まずはBEV版の「500e」から新世代にリニューアルしたフィアット「500」は、イタリアのみならず全世界を代表する人気のスモールカーだ。

 その歴史は80年以上にも遡り、同じ名を持つ歴代モデルは連続して生産されてはいないとはいえ、すべてアイコニックな存在となっている。

 とくに2007年に現行モデルが復活を遂げてからの展開は目覚ましいもので、基幹となる「500」のほかに、SUVの「500X」やミニバンの「500L」まで登場するなど、いまやフィアットとそのファンにとっての「500」とは、単なる車名に留まらないひとつのアイコン、あるいはブランドと化しているのだろう。

 今回は「フィアット500」の名跡が与えられた歴代の3モデル(+α)を、デビュー時期の順にご紹介。その輝かしい歴史を解説しよう。

●フィアット500“トポリーノ”(1936年〜55年)

「トポリーノ(ハツカネズミ)」愛称で親しまれた、初代フィアット500
「トポリーノ(ハツカネズミ)」愛称で親しまれた、初代フィアット500

 1936年に発表された初代フィアット500は、イタリアのベーシックトランスポーターの歴史的傑作にして、のちにフィアット技術陣の象徴的存在となるエンジニア、ダンテ・ジアコーザ博士の出世作でもある。

 当時の自動車テクノロジーの限界まで縮小し、もっともイニシャルコストの安いクルマとされた一方で、単に中・大型車を縮小するのではなく、サイズに見合った新機軸を取りまとめて設計した、世界初のマイクロカーのひとつとも称されている。

 2シーターにキッパリと割り切り、サイズ/重量を可能な限り節約する一方、総排気量わずか569ccのベーシックカーとはいえ、直列4気筒エンジンに3速および4速にシンクロメッシュの付いた4速トランスミッションを組み合わせ、前輪に独立サスペンションを採用するなど、当時最新鋭のテクノロジーが贅沢に導入されたことは特筆に値しよう。

 また、ダンテ・ジアコーザ自身もデザインワークに携わったといわれる、当時流行の流線型を巧みに解釈・小型化したモダンで愛らしいスタイリングから、イタリア語でハツカネズミを意味するニックネーム「トポリーノ(Topolino)」と合わせて呼ばれることが多い。

 フィアット500トポリーノの生産は第二次大戦後にも継続され、1948年にはシリンダーヘッドをアルミ製のOHVとしてパワーアップ。小さいながらもリアシートを設けた「500B」。そして1950年には、フロント回りのスタイルを大幅にモダナイズした「500C」へと進化を遂げる。

 また500Cのデビュー一年後には、魅力的なステーションワゴン版「ジャルディニエラ(ボディ後半部は一部木製)」と「ベルヴェデーレ(ボディはすべてスチール製)」も追加され、結局後継車たる「600(セイチェント)」に取って代わられる直前まで、イタリア国内のベストセラーを保ったのだ。

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