ウルフ・カウンタックが東京の街を激走! これがファイティングブルの雄叫びだ!【映画の名車】

スーパーカーブームの頃に、少年たちの心をつかんだのは、紛れもなくランボルギーニ「カウンタック」。そのカウンタックのなかでも、もっとも少年たちの心をときめかせ、憧れの存在だったのが、通称「ウルフ・カウンタック1号」だ。

ランボルギーニ「カウンタック」のなかで、もっとも有名な1台

 まだ高層ビルもまばらだった頃の新宿副都心から明治神宮外苑前の銀杏並木、そして東京駅八重洲口側の大通りの中央分離帯上を、ただ一台で占拠するように疾走する真紅のウルフ・カウンタック。

 コックピットに収まるのは、アフロヘアの故松田優作。まさに日本映画史上屈指の印象に残る名シーンといえよう。

 これは当時一世を風靡した角川映画の代表作のひとつ、1979年公開の『蘇る金狼』のワンシーンである。

ウォルター・ウルフ氏が、ランボルギーニ本社に直接オーダーして製作したウルフ・カウンタック
ウォルター・ウルフ氏が、ランボルギーニ本社に直接オーダーして製作したウルフ・カウンタック

 故大藪春彦が書いた同名の小説の映画化で、『最も危険な遊戯(1978年)』以来名コンビとなった村川透監督、松田優作主演のハードボイルド作品だ。

 松田優作の演ずる朝倉哲也は、表向きは夜間大学出身のうだつの上がらないサラリーマンだが、夜はボクシングで身体を鍛える一方、知略の限りを尽くした犯罪で資金を稼ぎ、さらなる野心、巨大資本の乗っ取りを図るための準備をしていた。

 そして朝倉は、ある犯罪で手に入れた薬物を利用して自身が勤務する会社の幹部の愛人、風吹ジュン扮する永井京子に急接近。彼女から非道な手段で会社上層部の極秘情報を入手する。

 そして極限まで鍛え上げた肉体と冷酷に研ぎ澄まされた頭脳、卓越した射撃技術を武器とした乗っ取り計画を実行に移してゆく……。

 この作品は、自身もクルマと銃器をこよなく愛した和製ハードボイルドの開祖、大藪春彦の原作を、日活ニューアクション出身の村川監督が、暴力と官能を織り交ぜて巧みに描いたもの。

 当時、調子の良かった角川映画らしく、男の妄想全開の「大藪ワールド」を見事に映像化してみせた。そして、この映画独自の世界観をさらに絢爛たるものとしたのが「ウルフ・カウンタック」ことランボルギーニ「カウンタックLP500Sウォルター・ウルフ」なのだ。

●数奇な運命を辿ったウルフ・カウンタックと松田優作がオーバーラップする

 1976年にカナダの石油王にして、翌年のF1で大活躍したウルフF1レーシング・ティームのオーナーでもあったウォルター・ウルフ氏が、かねてから懇意にしていたランボルギーニ本社に直接オーダーして製作させたといわれる伝説のスペチアーレである。

 ベースとされたのは、ごく初期のカウンタックLP400だ。フロントのエアダムスカートやリアのウイングを備える上に、当時発売されたばかりのピレリP7を収めるためのオーバーフェンダーを装備。

 エンジンは、カウンタックの試作車LP500譲りとされる5リッターの447psが搭載されていたともいわれている。

 3台が製作されたとされるウルフ・カウンタックのなかで、もっとも有名なこの個体は、1970年代末に日本に上陸していた。そして、この作品が製作された時期には、当時飛ぶ鳥を落とすほどの勢いを見せつつも、1980年代前半にバブル到来を待たずして破産した伝説の高級輸入車ディーラー、芸能界と密接な関わりを持っていたことでも知られる「オートロマン」が所有していたことから、映画『蘇る金狼』への出演が決定されたという。

 ちなみに、オートロマンのセールスマンとして作中に登場する気弱そうな男は、村川監督本人がカメオ出演したものである。

『蘇る金狼』で圧倒的な成功を収めた村川監督と松田優作のコンビは、翌1980年に同じく大藪春彦原作の角川映画『野獣死すべし』で再びの大ヒットとなる。

 これで、日本映画界での優作の評価は絶対的なものとなった。そして『蘇る金狼』の公開から9年後となる1988年には、ハリウッド映画『ブラックレイン』の悪役ボスとして素晴らしい名演技を披露。

 世界にもその名声を轟かせることになるのだが、実は時を同じくして恐ろしい病魔が優作を蝕んでいた。1989年11月6日、彼は膀胱癌のため、わずか40歳の若さでこの世を去ることになったのだ。

 そんなカリスマ的名優松田優作にとって、TVドラマ『太陽にほえろ』の「ジーパン刑事」役から新しい世界へと飛躍するきっかけになった出世作、『蘇る金狼』の存在は決して小さなものではなかっただろう。

 一方、ウルフ・カウンタックは今でこそ現オーナーの許で幸せな余生を送っているが、特に日本上陸後から数奇な運命を辿ってきたことは、スーパーカー業界に詳しい人なら周知の事実である。それだからか、このクルマにはどうしても、松田優作が駆け抜けた凄絶な役者人生を照らし合わせてしまうのである。

ウォルター・ウルフ氏が、ランボルギーニ本社に直接オーダーして製作したウルフ・カウンタック
ウォルター・ウルフ氏が、ランボルギーニ本社に直接オーダーして製作したウルフ・カウンタック

●Lamborghini Countach LP500S Wolter Wolf
ランボルギーニ・カウンタックLP500Sウォルター・ウルフ/
・生産年:1975年
石油王でありF1ティームのオーナーであったウォルター・ウルフが、LP400をプロトタイプのLP500のエンジンに換装し、オーバーフェンダーやリアウイングなどを装着させたカスタムモデル。

●『蘇る金狼』/YOMIGAERU KINROU
公開年:1979年
上映時間:131分
監督:村川 透
脚本:永原秀一
出演:松田優作/風吹ジュン/成田三樹夫

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