なぜ軽は日本のガラパゴス車なのか? 海外で高評価でもそのまま輸出されない理由
日本向けとして進化を遂げた軽自動車の海外展開はアリ? ナシ?
アメリカで軽自動車を販売するのは難しそうですが、ほかの国ではどうなのでしょうか。じつは、軽自動車っぽいクルマは、欧州、中国、インドなどに存在しています。
なかでも欧州では、欧州委員会(EC)が定める車両規定に、クワドリサイクル(規格名称:L6eなど)があります。車格としては、軽自動車と自動二輪車の中間的な存在です。
日本では、2020年冬にトヨタが発売予定の超小型EVがありますが、欧州クワドリサイクルは日本での超小型EVに近い位置付けです。パワートレインはEVもありますが、排気量400ccから500cc程度のガソリン車もあります。このほかに、中国やインドにも、クワドリサイクルに近い小さなクルマが販売されています。
こうした海外の超小型車は、最高速度が時速50kmから60kmと軽自動車に比べると遅く、乗り心地や車内のクオリティもけっして高くありません。
一方の軽自動車は、ボディサイズは最大で全長3400mm×全幅1480mm×全高2000mm、エンジン排気量も660cc以下と道路車両運送法で定められていますが、小型乗用車顔負けの走行性能とクルマとしての総合的なクオリティが高いのが特徴です。
これらの制限があるなかで、最良化、最適化を複数メーカー間で激しい開発競争をした結果、究極のガラパゴスカー・軽自動車が出来上がったのです。
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軽自動車の新車試乗会で筆者は、「中国、インド、東南アジアで、軽自動車を売っても良いのでは?」とメーカー側によく質問します。
これ対して「軽自動車はあまりにも日本市場向けの、仕様や価格にしているので、ほかの国の需要とマッチしないと思います」という答えがほとんどです。
最近では、車体構造など軽自動車との共通性を持たせた小型車をインドや東南アジアで発売するケースが増えてきましたが、軽自動車をそのまま持ち込む、という話は当分の間は実現しそうにないようです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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