なぜ軽は日本のガラパゴス車なのか? 海外で高評価でもそのまま輸出されない理由

日本で独自の進化を遂げた軽自動車は、最新モデルは乗り心地も良く、内外装の質感も高いうえに、安全装備も充実しています。ところが軽自動車は、海外にはそのまま輸出されていません。なぜ軽自動車は海外市場に投入されないのでしょうか。

軽自動車を海外で走らせるとどうなる?

「どうして、海外では軽自動車が走っていないのか?」海外に行って、現地で走るクルマや町なかの交通を見て、そう思ったことはないでしょうか。

 見方を180度変えると、日本に来る外国人にとっては「どうして、日本ではこんなにたくさんの小さなクルマが走っているのか?」と思うのです。

日本で一番売れているホンダ「N-BOX」
日本で一番売れているホンダ「N-BOX」

 東京や京都、札幌など日本の全国各地で、主婦が、高齢者が、若者が、郵便局の配達業務の人が、農家の人が、スイスイと軽自動車を走らせている光景を見て、外国人は心底驚きます。

 しかも、日本ではおなじみのホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」、スズキの軽トラック「キャリイ」など、外国人にとっては初めて見るクルマばかりです。
 
 外国人が実際に軽自動車に乗ると、その驚きは倍増します。知り合いの軽自動車に同乗したり、観光地でレンタカーとして軽自動車を借りたりすると、多彩なシートアレンジや装備品の多さなど、クオリティの高さにビックリするそうです。

 しかも、最新モデルの軽自動車は乗り心地も良く、高速道路では十分な加速性能を味わうことができます。さらには、前走車を追従するアダプティブクルーズコントロールや、車線逸脱防止のための自動操舵補助機能が搭載されるモデルまで登場。

「日本の小さいクルマは凄い。まるで、未来のクルマだ」と絶賛する外国人はけっして珍しくありません。

 軽自動車を実際に海外で走らせてみると、どうなるのでしょうか。いまから10年ちょっと前、2000年代後半に、筆者(桃田健史)は米・カリフォルニアで三菱「i(アイ)」を試乗しました。

 三菱自動車の北米営業本部が日本から取り寄せたクルマで、もちろん右ハンドルです。当時、三菱本社は電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の量産準備に入っていて、海外でのテスト走行が控えていました。

 その前段として、「i-MiEV」の原型である軽自動車「i」を北米営業本部のアメリカ人関係者に試乗してもらうというのが目的で、その空き時間を使って日本の自動車雑誌用の取材をしたのです。

 取材は1日のみでしたが、朝からロサンゼルス郊外のサイプレス市に「i」を取りに行き、近隣の市街地やフリーウェイを舞台に、夕方まで試乗と撮影をおこないました。

 まず驚いたのが、周囲の反応です。フリーウェイを走っていても、隣の車線を走るクルマが窓を開けて「それ、いつから売るんだ?」と聞いてくる始末。

 ショッピングモールの駐車場では「i」の周りが人だかりとなりました。「なんて小さいんだ!」「衝突しても安全なんですか?」「エンジンの大きさは?」「何人乗れるんですか?」「祖父が近所の買い物用にぴったりだ」といった感じです。

 走行性能については、高速の合流でパワー不足を感じたのと、大型トラックが多数走行するフリーウェイでは、路面のうねりが問題でした。一般乗用車では気になりませんが、軽自動車のボディサイズと重量だと、そのうねりで「波乗り」して、船酔いしたような感じで気持ちが悪くなってしまいました。

 そして、なんといっても、SUVなど乗用車の大型化が進むアメリカ市場では、フリーウェイでも市街地でも周囲に壁ができた感じになるなど、軽自動車の小ささが目立ち、「もしぶつかったら…」と恐怖を覚えました。

 その数年後、アメリカで少量販売された「i-MiEV」北米仕様にも試乗しましたが、日本仕様よりボディサイズが大きくなり、重量増によってフリーウェイでの波乗り状態は解消されていました。

 正直なところ、アメリカで日本の軽自動車をそのまま売るのは難しいと、筆者はいまでも考えています。

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