道路にある「オレンジ棒」なぜ増えた? 誕生から30年、進化し続け海外でも高評価の理由とは
クルマがぶつかったときのダメージは?
障害物などを避ける際にラバーポールを踏んでしまう可能性がありますが、その場合、ラバーポールと車両にはどれくらいのダメージがあるのでしょうか。
結論からいうと、法定速度以下であればまず、クルマへのダメージはほとんどないと考えていて良さそうです。約30年前から車線分離標を製造している草分け的存在の積水樹脂に、詳しい話を聞いてみました。
――走行中の車両がラバーポールに接触したり、踏んだりしても大丈夫なのでしょうか。
大手メーカーの製品においては、車両がぶつかっても、車両にキズが付くということはまずありません。
ほとんどの場合、素材はウレタンゴムで中身は空洞です。また、衝撃のエネルギーを逃すために、可倒式になっています。少なくとも、法定速度以下であればぶつかっても問題ないでしょう。
――ラバーポール自体の損傷はどうですか。
交通量の多いところで高速で踏まれると強いダメージを受けます。70km/hから80km/hの速いスピードで踏まれると、車両の下に引っかかってポールがちぎれることがあります。
設置して1週間で破損することもあり、交通量が少ない場所では10年以上そのままということもあります。
――高速道路の加速車線、合流車線に多く設置されてきたのはなぜでしょうか。
高齢ドライバーなどによる逆走を防止するため、高速道路のSA/PAやインターチェンジから本線に合流するまでの車線などに設置される例が増えています。
本線に合流する際に反対側へ逆走しないよう、正しい方向に走行できるように誘導し、Uターンを抑止する効果もあります。
――山間部でも良く見かけるようになりましたが、なぜですか。
30年近く前までは、はみだし走行防止といえば通称「キャッツアイ」と呼ばれる道路鋲を埋め込むのが一般的でした。しかし、キャッツアイにタイヤが接触してホイールが変形したり、パンクしたり、バイクが滑って転倒する事故も問題となりました。
危険性が大きいということで、キャッツアイからラバーポールへの切り替えが進んできたと考えられます。
また、道路鋲と違って高さのあるラバーポールは視認性も良く、反射材によって夜間の視認性にも優れています。
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安全で便利なラバーポールですが、豪雪地帯の除雪作業時にはこれまで着脱に大きな手間が掛かっていました。
その手間を劇的に軽減させたのがNEXCO東日本のグループ会社である株式会社ネクスコ・メンテナンス北海道開発による「簡易着脱型ラバーポール」(特許出願中)です。
設置方法が大幅に改善されたことで、撤去・設置(脱着)のための作業時間が従来品の1/4に短縮されています。
南北に長い国土を有する日本は、夏は灼熱、冬は豪雪&厳寒、豪雨や台風などの襲来も多いため、道路上の設置物にとって過酷な環境となっています。
厳しい気象条件下でも品質と耐久性を落とすことなく使えるよう、ラバーポールも誕生から30年で数々の進化を遂げるとともに、海外でも日本製ラバーポールの評価が高まっています。
「日本生まれのラバーポールは、高い復元性能と耐久性、視線誘導機能を持ち、車両が接触した場合でもダメージをほぼ与えることがない高品質な製品です。
どのような気象条件でも安全に使えるので、近年はアジア、ヨーロッパ、アメリカなど、さまざまな国で使われています。」(積水樹脂)
日本で生まれ、日本の道路事情や自然環境のなかで進化を続けるラバーポールが、世界中の道路を埋め尽くす日がやってくるかもしれません。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
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