冬用タイヤ規制もOK!? SUV用「マッド&スノー」タイヤの実力とは

マッド&スノーは通行可能だが…スタッドレスタイヤほどの性能はない?

 マッド&スノーの性能については、タイヤメーカーも決して十分ではないと警鐘を鳴らします。大手タイヤメーカーによれば、スタッドレスタイヤや昨今注目されているオールシーズンタイヤと、マッド&スノータイヤは性能が基本的に違うといいます。

「スタッドレスタイヤは氷結路用、スノーフレークマークが付いたオールシーズンタイヤは欧州で冬用タイヤとして認められた性能を有しています。

 しかし、M+SやSNOWのみの表記があるタイヤは、スノーとはいいながら、十分な雪道性能を持っていない場合があります。

 冬用タイヤ規制で通行可能だったとしても、スタッドレスタイヤと同じような走り方をするのは控えてください」(大手タイヤメーカーの広報担当者)

左が「M+S」、右の山みたいなマークがスノーフレーク
左が「M+S」、右の山みたいなマークがスノーフレーク

 ちなみに、スタッドレスタイヤとスノータイヤは、雪面で発揮する性能やそのメカニズムが異なっています。スタッドレスタイヤは、しなやかなゴムと多くのサイプ(ゴムに刻まれた細かい溝)によって、氷雪にゴムを押しつけて、その摩擦を使って進んだり止まったりします。

 一方、スノータイヤはトレッドのなかに雪を取り込んで雪の柱を作り、その柱を蹴り出すことで前進する力(トラクション)を得ます。

 これを「雪柱せん断力」といいますが、この性能を得るにはトレッドの溝を深くする必要があり、より広い接地面積が必要な氷上性能とトレードオフになってしまうのです。

 そのため、マッド&スノータイヤは圧雪路など雪の状態が安定している路面ではそこそこの性能を発揮しますが、凍結路ではスタッドレスタイヤのようなトラクションやグリップが期待できません。

 降雪地帯では、交差点などでブラックバーンといった凍結路面となる可能性があり、M+Sの表記しかないタイヤは停止することは難しくなります。

 また、コーナーに少しでもオーバースピードで侵入すると、グリップ能力を簡単に超えてしまうため、最悪の場合スピンする恐れがあり、2WD車になればその危険度はさらにアップします。マッド&スノータイヤは、多少の雪なら走行できるくらいの認識でいた方がいいでしょう。

 ちなみにマッド&スノータイヤの賢い使い方としては、タイヤチェーンを併用することがあります。冬用タイヤ規制のチェックポイントではマッド&スノータイヤでクリアして、その後になるべく早めにタイヤチェーンを装着すれば、氷雪路でも安心して走ることができます。

 最近では特定の一般道でも、「タイヤチェーン規制」が実施されるようになりました。この規制が実施された場合、仮にスタッドレスタイヤと4WDの組み合わせでもチェーンなしでは通行できません。

 もちろん、マッド&スノータイヤも同様です。そのため、冬のドライブ時にはタイヤチェーンは必ず愛車に積んでおきたいものです。

【画像】冬用タイヤどこで見分けるの?

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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