車のキズ、自分で直せるのはどの程度? 板金業者に頼むべきキズの大きさをプロに聞いてみた
クルマを運転するなかで、細い道や駐車場でうっかりクルマをキズつけてしまうことがあります。手軽に直せるキズと、板金などかなりの補修が必要な場合もありますが、その境目はどこにあるのでしょうか。板金のプロに聞いてみました。
最近のクルマは意外に塗装膜が薄い?
狭い道ですり抜けや、駐車場に停めて乗り降りの際などに、クルマへキズをつけてしまった経験のある人は多いと思います。ちょっとしたキズだと思っていたら、意外と大きいものだった、ということもあります。
また、キズを自分で直そうとしてうまくいかなかった、という事例も聞かれますが、自分で直すことができるキズとプロに頼むべきキズの違いは、果たしてどういったものなのでしょうか。

本来プロに頼むべきレベルのキズを、DIY補修キットを用いて自分で補修をおこなった場合、期待されるような仕上がりにならない恐れがあります。
そこで、整備だけでなく板金・補修もおこなう関東運輸局長認定の特殊整備事業者「秀自動車」(栃木県宇都宮市)の高島整備士に話を聞きました。高島整備士は、自分で直せるキズとそうでないキズの違いについて、次のようにいいます。
「塗装技術の向上により、最近のクルマは表面の塗装膜が薄くなっています。ちょっとしたアクシデントでも塗装面を大きく損傷して、下地が出てしまう場合もありますので、自分で直せるキズの見極めがだいぶ難しくなってきています。
しかし、よくあるバンパーのこすりキズや、ドアに自転車などが接触してしまったキズなどは、ある程度は自分で目立たなくさせることはできます。ただしキズついた箇所にもよる、というのが正直なところです」
キズ隠しとしてポピュラーな「コンパウンド」は、含まれる研磨剤で周辺の塗装面をキズと同じレベルまで薄く削ることでキズを目立たなくさせるための補修剤です。しかしいままで主流だったコンパウンドによるキズ消しが、必ずしも有効ではないといいます。
「現在のボディカラーは単純なソリッドではなく、微妙にメタリックの要素が入ったカラーも多く、コンパウンドを使うことでキズの周辺が悪目立ちしてしまうこともあります。
それならばパーツクリーナーなどで周辺の汚れをしっかり落とし、コーティング剤などを塗布する方が目立たない場合もあります」(高島整備士)
同じく、タッチペンなどは扱いが難しく、かえって「ここのキズ、補修しました」というのが目立ってしまうこともあるようです。自分で補修できるのは、ヘコミがなく、表面だけにについた(塗装面の下地が出ていない)キズ程度までと考えるべきでしょう。
それでは、どんなケースのヘコミやキズはプロに頼むべきなのでしょうか。高島整備士は次のように説明します。
「左折などで内側を巻き込んでしまうアクシデントがありますが、ぶつかるだけでなく、キズを前後へ引きずってしまうので、かなり大掛かりな補修作業が必要になります。
こういったケースの場合、リアフェンダーだけでなく、リアドアまで引きずったヘコミやキズが付いていることが多く、ドアパネルの場合は、程度によっては補修よりも新品に交換した方が安く済むこともあります。
ただし、リアフェンダーはパネルではなくシャシなどボディに溶接されているケースがほとんどなので、事情が異なります。ヘコミだけでなく衝撃による歪み修正なども必要になるため、プロに依頼しないといけない修理箇所になります」
また、裏側から専用の器具を用いてヘコミを補修する「デント(英語でヘコミという意味です)リペア」もありますが、こちらも一般ユーザーには難しい技術だといいます。
「熟練のデントリペア業者では、塗装面に多少のヒビが入っても上手に補修できる場合もあります。ただこれも程度によって大きくアプローチが変わるので、自分で判断するよりプロに相談するのが賢明です」(高島整備士)
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いずれにせよ、キズの程度によっては自分でDIYできない場合もあるのは仕方ないところといえるでしょう。まずはキズの程度が下地に届いているか、確認が必要です。
Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ
2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。











