なぜ市民の血税1千万円が高級EV「テスラ」に? 千葉県市川市が公用車導入した理由とは
市川市の記者会見、じつは前半が重要案件だった
今回の会見は、大きくふたつの案件についてでした。前半は、市川市が進める新しい街づくり構想「いちかわ未来創造会議」に関するものです。
「人とつくる未来のまち」をテーマに、「飛躍的に進歩する先進的技術を活用し、いちかわ発のイノベーションを起こすことで、便利で暮らしやすいまちの実現を目指す」という理念を掲げています。
その実現に向けて、ベンチャー企業などの異業種のスタートアップ、行政、そして地域の次世代リーダーそれぞれが融合することを目指す、というもので、すでに協力会員として産官学から19の企業や団体が参画しています。
そのうえで、「市川市における都市の課題を解決するための仮想会社」として「ICHIKAWA COMPANY (いちかわカンパニー)」を設立。
スマートライフ、ヘルシーライフ、ワークスタイル、クリエーティブエデュケーション、シェアリングエコノミー、ダイバシティカルチャー、エコロジーライフスタイル、そして市民としてプライドを持つシビックプライド、これら8つの目標の実現に向けた社会実証試験をおこないます。
7月2日の記者会見は、「健康なまちづくり」をテーマとした社会実証実験の公募エントリーの受け付けを開始するという、重要なタイミングだったのです。
ところが、2日記者会見の後半におこなった、副市長向けの公用車であるモデルXの導入ばかりにマスコミの目が集中してしまい、市川市が進める新しい町づくりの全体像がほとんど報道されなかった、という事実があります。
さて、今回の騒ぎの中心にあるのは、テスラの価格です。市川市は一括購入ではなく8年間のリース契約としており、「ビビット」などマスコミでも公開されているリース料は、モデルXの場合月額14万円あまり(消費税込)と、これまで使用している公用車と比べて費用は2倍以上です。
これに対して、市川市市長のコメントとしてTBS「ビビット」向けに提供した文書は次の通りです。すべて原文ママで、書面には日付けや署名はありませんでした。
「循環型社会の形成と再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。環境に配慮した自動車を普及する一環として、EV車を啓発するために、市川市が率先して、公用車に導入します。
車種は、EV車の製造のほか、太陽光発電や家庭用蓄電池による地産地消のエネルギー循環に取り組むテスラ社を選定しました。
テスラ社は最先端の自動運転技術を有しており、今後、地域社会の利便性を高め、市民生活の質を向上させるために、同社と連携・協力を進めていく予定です。車両を公表した際、私が挨拶後に退出したのは予定していた通りです」
7月4日の取材時点で、本件に関する2度目の記者会見の予定は立っていませんでした。
次回の記者会見では、「いちかわ未来創造会議」など、現時点で公開している各種の政策のなかで、2台のテスラ導入が、いつ(いつまでに)、なにを、誰が、どのように、なぜおこなうのか、という具体的な説明が求められます。
そうした総合的な観点から、充電に関する電気代などのランニングコストなどを含めた総合的な必要コストとして、テスラ車と先代公用車の比較表を提示することが必須だと考えます。
さらに、テスラ本社または日本法人との連携・協力について、市川市としてどのような形を目指すのか、仮に予定だとしても指針をはっきりと示すべきです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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