車の人気色なぜ訴求しない? TVCMやカタログの車体色に奇抜な色を採用する理由とは

クルマの売れ筋カラーといえば、多くの車種で「白」「黒」「シルバー」となるのが一般的です。しかし、広告に登場する車両は「赤」「青」「黄色」と、鮮やかなカラーも多く使われます。なぜ売れ筋のものをアピールしないのでしょうか。

「地味な色」より「派手な色」が広告に起用されやすい訳とは

 新車販売されているクルマのうち、売れ筋カラーは「白」「黒」「シルバー」が一般的です。しかし、クルマのテレビCMやカタログに登場するクルマには「赤」や「青」など、前述した3色以外の色も多く使われています。

 宣伝の目的を考えると、「売れ筋カラー」を積極的に露出するのが1番の方法です。なぜ売れ筋の色が使われず、奇抜な色が使われるのでしょうか。

三菱 eKクロス

 クルマの色は、ユーザーの第一印象に直結する要素でもあるため、どのメーカーも塗装技術にはこだわりを持っています。宣伝活動において「匠塗」という特別な塗装技術をアピールしているマツダはつぎのように話します。

「現在のボディカラーラインナップのなかで、『匠塗』で仕上げられた『ソウルレッドクリスタルメタリック』と『マシーングレープレミアムメタリック』の2色は、ともにマツダのデザインテーマである『魂動デザイン』の美しさをより際立たせる色味と質感の実現を目指しました。

『ソウルレッドクリスタルメタリック』は、生命力にあふれた鮮やかさと濁りのない深みによって生まれる、瑞々しく艶やかな透明感にこだわっています。『マシーングレープレミアムメタリック』は“機械が放つ精緻な美しさの追求”をテーマに、コントラストの力強さと表情の緻密さを高次元で両立することにこだわりました」

 一方、新車販売されるクルマの多くで、人気色上位は「白」「黒」「シルバー」が占める結果となっています。これは日本だけの傾向ではなく、海外においても同様の結果です。

 世界的なペイントメーカー「アクサルタコーティングシステムズ」が発表した「2018年版世界自動車人気色調査報告書」によると、世界全体のクルマの人気色は1位が「ホワイト」(38%)で、2位が「ブラック」(18%)、3位は同率で「グレー」と「シルバー」(各12%)という結果となっています。4位の「ブルー」(7%)を上位が大きく引き離す結果となりました。

 しかし、クルマの広告にはこれらの3色以外が使われるケースも多いです。前述したマツダではグレーのほかに赤が使われることが多いほか、2019年3月に発売された三菱「eKクロス」では黄色が、2019年4月に発売されたトヨタ「RAV4」ではカーキ色がそれぞれテレビCMやカタログなどで使われています。

 なぜ、広告に一般的な「売れ筋カラー」以外が使われるのでしょうか。その理由について、大手自動車メーカーのデザイナーは次のように説明します。

「ユーザーが購入する色として『白』や『黒』が人気なことは把握しています。しかし、カタログやホームページなどの宣伝上では、そのクルマに合う色を訴求色としてメインに使うことが多いです。

 いくつかの理由がありますが、第一にデザインを際立たせる色として、蛍光色やメタリック色を優先して使うことがあります。また、『白』や『黒』はほとんどのクルマに必ずラインナップされるため、そのクルマの個性をアピールするために、あえて目立つ色を使っています」

 宣伝活動は、新型車の登場直後におこなわれることも多いことから、ライバル車に埋もれないよう個性を強調するために、目立つ色が使われているようです。また、ホンダの広報担当者は次のように話します。

「そのクルマのコンセプトやデザイン、世界観をより伝えやすくするために、売れ筋のカラーでなくても訴求色(広告で用いられる色)にすることがあります。またその場合は、そのクルマのために開発された色が多い傾向があります」

 売れ筋以外のカラーが使われる理由からは、そのクルマの性格をよりわかりやすく伝えられるようにするメーカーの積極的な姿勢がうかがえます。

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