スバルデザインが変わる! 新たな未来像を予言するSUV「アドレナリン コンセプト」とは
ジュネーブモーターショー2019で、スバルは新たなコンセプトモデルを発表しました。これまでのスバル車とは一味違った「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」は、どんな未来像を表現したのでしょうか?
スバルの未来像が新たなモデルの誕生を予言!?
スバルの未来像を表現するモデルに冠される「ヴィジヴ」シリーズの最新作が「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」です。これまでのスバルとちょっと違うクーペルックのスタイルは現在発売されている「フォレスター」や「XV」とは異なる雰囲気を持っています。
このクルマは一体何者なのでしょうか? ジュネーブショー会場で実車を見た筆者(山本シンヤ)は、今回、スバルデザインのキーマンである(株)SUBARUデザイン本部 デザイン本部長の石井守さんに直接お話しを聞いてみました。
山本:これまでの「ヴィジヴ」シリーズは、スバルの“未来”に繋がるコンセプトモデルだと聞いています。
たとえば、「ヴィジヴ2 コンセプト」(2014年)と「ヴィジヴ フューチャー コンセプト」(2015年)は「フォレスター」、「ヴィジヴ パフォーマンス コンセプト」(2017年)は次期「WRX」、そして「ヴィジヴ ツアラー コンセプト」(2018年)は次期「レヴォーグ」など、市販車につながる様々なコンセプトモデルが登場しています。
石井:『ヴィジヴ アドレナリン コンセプト』は、スバルの「安心と愉しさ」を表現する手法である『ダイナミック&ソリッド』をベースに、より大胆な表現を行なう『ボールダーデザイン』を初めて採用したモデルです。ボールダーデザインは、スバルの新中長期計画(STEP)でお伝えしていますが、スバルの新たなデザインの方向性になります。
山本:ダイナミック&ソリッドは一目見てスバルだと解る統一感あるデザインには納得でしたが、安心と愉しさの「愉しさ」の部分がやや薄味だと感じていました。しかし、「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」は一歩超えたような気がしました。
石井:ダイナミック&ソリッドは一目見てスバルだと解るデザインの統一感を持たせることが目的でしたが、ボールダーデザインではユーザーの『楽しい心の動き』も表現しています。
SUVとスポーツを融合したデザイン重視の新機軸
山本:スバルにはスポーツとSUVの二本の柱がありますが、「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」のデザインはこの2つが融合している印象を強く受けました。また、これまでのスバル車はパッケージ優先のモデルが多かったですが、今回のコンセプトモデルはかなりデザインを意識しているよう感じました。
石井:鋭いですね! ボディの厚みや視界性能を考慮していますが、ウェッジシェイプを強調したサイドと前後は大胆にカット(=オーバーハング低減)し、前進感がありどこでも行けると思えるようなデザインを目指しました。また、『どんどん走ってもらいたい』、『スポーツ』と言う想いも強く、イメージスケッチには砂漠を滑走する絵を描いています。
山本:やはりこのモデルの先(=量産モデル)が気になります。ちなみにスバルの新中長期計画には既存の車種とは違う「グローバル戦略SUV」を導入することも発表しています。「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」はこのクルマの原型なのでしょうか。
石井:今回はカテゴリーやモデルなどに囚われず、素直にデザインを表現したので、本当に何も考えていません。ただ、色々検討している中の一つの表現であることは間違いありませんね。今回ジュネーブモーターショーでお披露目したのは、皆さんからどのような反応や意見があるのかを聞いてみたいからです。なので、色々書いて欲しいと思っています。
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「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」のプレスリリースには、「アクティビティをサポートするユーティリティと、道を選ばず、速く、意のままに駆け抜ける愉しさを併せ持ち、アクティブマインドを持つ人の『大自然の中を想いのままに走り廻りたい』という気持ちを駆り立てる、そのような新しいスポーツヴィークルを表現」と記載されています。
個人的にもSUVとスポーツと言うスバルの個性を融合させた新たなフラッグシップになって欲しいと願っています。
ちなみに「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」はボディサイズは全長4490×全幅1900×全高1620(mm)。搭載エンジンの詳細は一切発表していませんが、筆者はこのような事を想像しました。前後オーバーハングを切り詰めたハッチバックボディのサイズを縮尺すると、WRCのベースマシンになりえるパッケージが成立できるのではないかと。
スバルが目指す「スポーツヴィークル」の“スポーツ”には、モータースポーツも含まれているのかもしれないと考えると、「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」の今後の展開が楽しみでなりません。
【了】
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。