「300馬力超え」の2リッターターボ搭載! 後輪駆動の「“2人乗り”本格スポーツカー」に乗った印象は? サーキット専用のBMW「M2レーシング」の実力とは
BMWが2025年7月に発表したサーキット専用モデル「M2レーシング」。ユーザーが購入してサーキット走行や各種モータースポーツを楽しむためのカスタマーレーシングモデルです。今回は、自動車ジャーナリストの西川昇吾氏が、富士スピードウェイでその実力を確かめました。
扱いやすさを重視したサーキット専用モデル
BMWのモデルラインナップに、サーキット専用モデルが存在しているのをご存じでしょうか。それが「M2 Racing(レーシング)」です。
BMW M社が送り出すこのモデルは、ユーザーが購入してサーキット走行や各種モータースポーツを楽しむカスタマーレーシングモデルとして開発されました。
近年BMWは、レーシングカーとしてエントリーモデルにあたる車両のカスタマーレーシングに注力しています。
先代モデルであるF型の時に登場させた「M235iレーシング」に始まり、それをバージョンアップさせた「M240i Racing」、そして「M2」をベースとした「M2 CS Racing」へと進化させてきました。
そのような流れのなかで、ベースとなるスポーツカーのM2がG型へとフルモデルチェンジしたことを受け、こちらもM2レーシングへとフルモデルチェンジしました。

M2のボディやシャシに、最高出力313馬力・最大トルク420Nmを発生する2リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。駆動方式はFR(後輪駆動)で、トランスミッションには8速ATを組み合わせています。
先代となるM2 CS Racingが3リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載し、設定次第では最高出力450馬力を発生するハイパフォーマンスモデルであったことを考えると、フルモデルチェンジで性能がダウンしてしまったと捉える人もいるかもしれません。
しかし、カスタマーレーシング車両として当初のコンセプトに“原点回帰した”というのが正しい表現でしょう。
この手のレーシングカーはプロドライバーがメインではなく、趣味でレース活動を行うジェントルマンドライバーが多くステアリングを握ります。
それだけに単純な速さではなく、扱いやすさも求められてくるのです。
M2レーシングはFIAのレギュレーションに準拠したロールバーや安全タンク、消火器システムなどを装備していて、2人乗り仕様となっています。多くのモータースポーツカテゴリーに少ない手直しで出場できるようにされています。
実際に日本でもBMW&MINI Racingというワンメイクレースで採用されているほか、今シーズンからスーパー耐久のST-3クラスにこのマシンを投入しているチームもあります。
サーキット専用モデルということもあり、サーキットを走ってもクルマを壊さないための装備も充実しています。
各種冷却系はバージョンアップされ、デフにもオイルクーラーが装備されています。専用のサスペンションや調整可能なスタビライザーなど、各種セッティングがある程度取れるようになっているのも特徴的です。
また、10段階による専用の電子制御も備わっていて、ドライバーのスキルに応じて徐々に電子制御の介入を緩めていくことができます。
なお、標準状態ではグッドイヤー製のスリックタイヤを装着しますが、今回はBMW&MINI Racingのレギュレーションに合わせたダンロップのスリックタイヤを装着した状態でドライブしました。
富士スピードウェイで感じた本格的な速さ
乗り込んで最初に驚いたのは、エアコンがしっかりと効いていることです。
近年はカスタマーレーシングの上級モデルであるGT3やGT4規定のマシンで、エアコンが装備されていることが増えましたが、これだけ快適な空間でサーキットを走行したのは筆者としては初めての経験でした。
エアコンを効かせてハイスピードで走っても特に問題はないとのことで、この快適性は耐久レースなどで大いなる武器になることは間違いありません。
8速ATで気難しい操作もないため、正直ピットロードを制限速度内で走る分には“普通のクルマ”といった印象です。
ただ、それは言い換えてみれば、初めてサーキット専用車両をドライブする人に無駄な緊張感を与えず、落ち着いてドライビングできる空間を提供できているといえます。
そして特に印象的であったのが、挙動が穏やかなことです。

今回は電子制御を効かせての走行であったことも大きな理由ですが、タイヤの限界を超えて何かアクションが起きるときは、徐々にアクションが起こっていく次第で、アンダーもオーバーも手に取るように分かります。
どんな操作が失敗で、どんな操作が成功であったかが分かりやすいので、電子制御の段階的な解除も含めて、ジェントルマンドライバーがドライビングにおいて、ひとつひとつトライをするのにもってこいのマシンだといえます。
エンジンも圧倒的なパワー感はありませんが、低回転からトルクがあり、素直なスロットル制御も含めてとても扱いやすい印象です。
車体とサスペンションがしっかりとしているため、これならば確実に目が追いつくといった雰囲気で、扱いやすく手の内に入るパワー感も、ジェントルマンドライバーのトライを応援してくれる特性といえます。
とはいえ、富士スピードウェイのレーシングコースであっさりと1分59秒フラットを記録してしまうあたりに、クルマのパフォーマンスの高さを感じます。
スポーツ走行枠1本のみだったので、安全マージンを十分に取った走行で、電子制御も最も効かせた状態、タイヤはユーズドでした。
電子制御を緩めて新品タイヤを履けば、より好タイムが記録できるのは確実な状況です。
エアコンが効いて、走りはじめに気難しい操作がなく、ドライバーに対して入り口が優しいクルマがそれだけのタイムを刻むことができるのには驚かされます。
※ ※ ※
価格(消費税込)は2100万円と決して安くはありませんが、モータースポーツを楽しむ素材として考えたら納得感のある価格設定だと筆者は思います。
購入はBMW モータースポーツディーラーである株式会社モトーレン東都とエルベオート株式会社で可能。気になる人はまず聞いてみてはいかがでしょうか。
Writer: 西川昇吾
1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。大学時代から自動車ライターとしての活動をスタートさせる。現在は新車情報のほか、自動車に関するアイテムや文化、新技術や新サービスの記事執筆も手掛ける。また自身でのモータースポーツ活動もしており、その経験を基にした車両評価も行う。


























































