三菱ふそうはどう変わる? 新CEOが語った「日野との協業」と商用車市場を生き抜く「次の一手」とは

ダイムラートラックからの独立、そして日野自動車との経営統合による新会社「ARCHION(アーチオン)」の設立など、三菱ふそうトラック・バスはかつてない転換期を迎えています。2026年4月に代表取締役社長兼CEOに就任したフランツィスカ・クスマノ氏がメディアラウンドテーブルに登壇し、就任からの100日間で得た知見と、激動の商用車市場を生き抜くための今後の戦略について語りました。

15年以上の経験をもって転換期に挑む

 2026年7月14日、三菱ふそうトラック・バスの代表取締役社長兼CEO フランツィスカ・クスマノ氏がメディアラウンドテーブルを開催しました。

 三菱ふそうトラック・バスは、世界170以上の国と地域で事業を展開し、1万人を超える従業員を擁する商用車メーカーです。同社は現在、四半世紀にわたり所属したダイムラートラックグループからのスピンオフと、日野自動車との持株会社「ARCHION(アーチオン)」傘下での新体制移行という、大きな変化の只中にあります。

 こうした状況下で2026年4月に代表取締役社長兼CEOに就任したフランツィスカ・クスマノ氏は、1989年生まれ。ドイツ・ハイデルベルク出身で、ダイムラーグループ内で鋳造生産や研究開発など幅広い分野で15年以上の経験を積んできました。

 2013年には日本の三菱ふそうでもハイブリッドエンジンのプロジェクトエンジニアとして活躍し、その後、メルセデス・ベンツのスペシャルトラック部門CEOなどを経て、再び日本で指揮を執ることになりました。

三菱ふそうトラック・バスの代表取締役社長兼CEO フランツィスカ・クスマノ氏
三菱ふそうトラック・バスの代表取締役社長兼CEO フランツィスカ・クスマノ氏

 クスマノ氏は、地政学的な緊張やサプライチェーンの変化、将来技術への投資プレッシャーなどが重なる現在の状況を「新しい現実」と表現。この激動の時代において同氏が就任からの最初の100日間で最も注力したのが、「お客さま第一」の姿勢を徹底することでした。

 日本国内のみならず、インドネシア、ヨーロッパ、オーストラリアといった主要市場に自ら足を運び、顧客やディーラーが直面している課題を直接聞き取ることに時間を費やしたといいます。

 そこで確認されたのは、世界中で日本の品質と信頼性が高く評価されている一方で、変革へのさらなる「スピード」が求められているという事実でした。

多様性を活かし、変化への対応スピードを引き上げる

 激しい市場競争を勝ち抜くためには、自社の強みを再確認し、弱点を克服していく必要があります。

 クスマノ氏が強調したのは、三菱ふそうが持つ「多様性」という強みです。グローバルな視点を持つ人材と、長年勤続する日本人社員が培ってきた知見。これら二つが組み合わさることこそが同社ならではの強みだとした上で、今後さらに磨いていきたい点として「スピード」を挙げました。

 海外の競合他社の動きの速さを肌で感じてきた経験から、変化への対応スピードを一段階引き上げる必要があるという考えを示しています。

 スピードの向上やコスト競争力の強化において、大きな鍵を握るのが日野自動車との協業です。両社の統合については、規模の経済によるメリットや投資負担の軽減に大きな期待が寄せられています。

 クスマノ氏は「共同で投資を分担することを目指している」と述べ、バッテリーEVや水素といった莫大な開発費を要する将来技術において、新体制下での協力が不可欠であるとの認識を示しました。一方で、単に標準化された同じ製品を作るわけではないとも明言しています。

 サプライヤーベースの確認や研究開発の専門知識などを体系的に精査し、両社の最も良い部分を融合させつつも、販売網やサービスネットワークなどの顧客接点においては、それぞれのブランド独自の価値を維持し差別化を図っていく方針です。

電動バスシフトと「自動運転レベル4」の壁

 トラック事業と並んで課題となるのが、より複雑な競争環境にあるバス事業です。バス事業については、日野自動車をはじめとする国内競合がひしめく厳しい市場環境の中、三菱ふそうは投資規模を確保するため、台湾・Foxconn(フォックスコン)とバス事業を合弁化し「ふそうバス」の設立に踏み切った経緯があります。

 クスマノ氏は、当面はディーゼルバスの需要が根強く残るとの見方を示しつつ、実績のある電動バス製品を市場に投入し、顧客の理解と信頼を積み重ねることで、段階的に電動化へのシフトを進めていきたいと語りました。

 具体的には、フォックスコンとの合弁事業を通じて富山の製造拠点を中心に据え、スケールメリットを生み出しながら新たな製品ポートフォリオの創出を目指しています。

 また、商用車業界が抱えるもう一つの大きなテーマが、自動運転技術の実用化です。クスマノ氏が日本の顧客を訪問した際、深刻なフリートドライバー不足や労働力の高齢化を背景に、自動運転に対する強い関心が寄せられたといいます。

 しかし同氏は、レベル4の高度な自動運転の実現には技術開発だけでなく、法規制の整備と社会全体の受容性が不可欠であると指摘しました。

 車両の開発だけで完結するものではなく、社会が新しいモビリティをどう受け入れていくかという観点から、日野自動車との協業も通じて多角的にアプローチしていく姿勢を見せています。

トップ自らが牽引するデジタル変革と変わらぬ理念

 三菱ふそうが目指す変革は、車両の開発や組織の再編にとどまりません。もはや避けては通れないデジタル・AI活用については、すでに社内での小規模なパイロットプロジェクトの段階は一区切りしており、今後は業務プロセス全体を通して改善する取り組みへと軸足を移す方針とのことです。

 例えばサプライチェーンの需要予測や、大量のデータをもとにした課題の早期発見などにAIを活用し、分析にかかる時間の短縮や、人の判断に伴う偏りの排除につなげたい考えです。また、顧客ごとの用途に合わせて最適な車両を提案するデジタルコンフィギュレーターの構築にも意欲を見せています。

 社内では日常的にCopilotなどのAIツールを使うよう呼びかけており、自らも率先して活用しているとのこと。トップ自らが旗振り役となってDXの浸透を図る姿勢がうかがえます。

 様々な変革の波が押し寄せる中であっても、三菱ふそうのすべての活動の根底にあるのは「稼働しているトラックをお客様に提供する」という理念です。クスマノ氏は、顧客が究極的に求めているのは、高い信頼性とビジネスを成立させるための総所有コストの最適化であると語ります。

 万が一の故障時には、修理や部品調達の時間をいかに削るかという目標を掲げ、車両のダウンタイムを最小限に抑えることに注力しています。また、全国の架装メーカーとの連携を強化し、納車までのリードタイムを短縮することも喫緊の課題として取り組んでいます。

※ ※ ※

 就任からの100日間で現場を巡り、顧客のニーズと組織の現状を把握したクスマノ氏。

 新体制の目標として掲げられている2032年までに営業利益率10%以上という数字の達成に向け、自社の多様性を原動力にどのような変革を進めていくのでしょうか。激動の時代における老舗商用車メーカーの今後に注目が集まります。

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Writer: くるまのニュース編集部

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