全長5.3mの新型「“8人乗り”高級ミニバン」どんなクルマ? 巨大スクリーン&冷温庫採用! “巨体を感じさせない走り”も魅力のメルセデス・ベンツ新型「VLE」をスペインで試す!
メルセデス・ベンツは2026年3月10日、電動ミニバン新型「VLE」を初公開しました。従来の「Vクラス」とは異なり、“グランド・リムジン”を掲げる新型モデルは、どのような進化を遂げたのでしょうか。自動車研究家の山本シンヤ氏が、スペイン・ビルバオでその実力を確かめました。
“バン感”を消した新世代ミニバン
最新のメルセデス・ベンツはモダナイズされ、「洗練さ」を前面にアピールしていますが、その中でも伝統の「質実剛健」の思想を色濃く受け継ぐモデルがミニバンの「Vクラス」です。1998年に初代が登場して以降、欧州のミニバン市場をけん引してきましたが、現行の3代目が登場したのは2014年のこと。
かつてはミニバンといえばファミリーユースもしくはビジネスユースが主でしたが、最近はセダンに変わる「新たなプレステージモデル」という役割が与えられ、日本や中国を中心にそれに見合った高級モデルが数多く登場しています。
Vクラスもそんなライバル相手に進化を続けてきましたが、商用車派生モデルという枠組みの中で戦うのは限界があったのも事実でしょう。
そこで、すべて刷新して登場したのが今回試乗した「VLE」です。「ミニバンの評価は日本人が一番適任でしょ」ということで、スペイン・ビルバオで行われた国際試乗会に赴き、一足お先にその実力を確かめてきました。
ちなみにVLEは今回の試乗拠点からクルマで約1時間の場所にある「ビトリア工場」で、VクラスやVITOとともに生産されます(ICEとBEVの混流生産)。
2026年はカール・ベンツが自動車を発明してから140周年、実は同氏による動力付き配送バン……つまり商用車の発明から130周年でもあります。商品概要のプレゼンではバン部門の広報責任者・ヤニーナ・クルンツェ氏がこのように語りました。
「VLEはこれまでの商用車派生のVクラスの枠組みを超え、最大8席の広大な空間を持つ『グランド・リムジン』という独自のセグメントを定義して開発されました。顧客の声を反映し、日常生活に寄り添う高い適応性を持たせています」

エクステリアはVクラスのイメージを踏襲しつつも、より流麗なワンモーションシルエットへと生まれ変わりました(商用モデルとは完全に別デザイン)。フロントはクラシカルな大型グリルを構え、サイドは四隅にレイアウトされたタイヤによる踏ん張りの強さを表現。リアは逆U字型のライトを採用するなど、一気にモダナイズされて“バン感”は一切ありません。
仕様は、ベーシックな「スタンダード」、スポーティな「AMGライン/AMGライン・プラス」、そしてゴージャスな「エクスクルーシブ」を用意しています。
パッと見はVクラスよりも凝縮感があるものの、実際のボディサイズは全長5309mm×全幅1999mm×全高1943mm、ホイールベース3342mmとかなりの巨体。特に全長はVクラスのエクストラロング並みとなっています。
驚くべきは、この巨体でありながら、空力特性ではミニバンとして驚異的なCd値0.25を実現している点です。車体全体の空力を徹底的に最適化し、特に車両後方のルーフラインを僅かに下げる設計にすることで、走行時の乱流を最小限に抑えています。
インテリアもVクラスと比べると隔世の感があります。インパネ周りは10.25インチドライバーディスプレイ、14インチセンターディスプレイ、14インチフロントパッセンジャーディスプレイ(グレード別)で構成された「フルデジタルコクピット」を採用。センターにはワイヤレス充電スポット2箇所とカップホルダーを統合したショートセンターコンソールが装着されています。

デジタルコクピットは最新のメルセデス・ベンツではおなじみの光景ですが、水平基調のインパネデザインに合わせたレイアウトも相まって非常にスマートに仕上がっています。
セカンドシートはアルヴェル顔負けの豊富なバリエーションを用意しています。スタンダードは手動シートでベンチシートかキャプテンシートが選択可能。車両からの脱着が容易になったのとシート下部に4つの車輪が組み込まれる(取り外した後の移動が楽)など、利便性を大きく向上させています。
AMGラインは電動調整式キャプテンシートを採用。脱着はできませんが、用途に応じてセンターディスプレイからシートアレンジを行うことができます。
そして、エクスクルーシブはシートの電動操作はいうまでもなく、シートベンチレーション&ヒーター、オットマン、マッサージ機能、カップホルダー&格納式テーブル、ワイヤレス充電まで付く「グランドコンフォートシート」を設定。
加えて、後席用に31.3インチの格納式大型スクリーン(8K解像度、画面の分割表示可能、8メガピクセルカメラ内蔵)や冷温庫などなど、まさに“全部盛り”の内容となっています。
細かい部分では「スライドドアの窓が開閉式になったこと(Vクラスはできなかった)」、「デュアルバックドア(リアウィンドウのみの開閉が可能)」、「ハンズフリーアクセス(スライドドア&バックドア)」など、個人的には日本のミニバンの“当たり前”の便利機能がしっかりと採用された点も、高く評価すべきポイントでしょう。
メカニズムはどうか。パワートレインはBEV(電気自動車)のみの設定です。欧州ではビジネスユースがメインなので「選択と集中」なのかと思いきや、BEVのみだからこそ勝負できる“武器”を数多く用意しています。
その核となるのが、BEV専用プラットフォーム「VAN.EA(Van Electric Architecture)」の採用です。フロント(全モデル共通)/センター(バッテリー容量やサイズで可変)/リア(後輪用モーター有無)の3つのモジュールの構成となっており、高い拡張性を誇ります。
これにより、ひとつのプラットフォームでありながら、今回のVLEのような乗用モデルとVITOをはじめとする商用トランスポーターとの明確な差別化・ポジショニングを可能にしています。
車体はアルミニウム比率50%を誇るマルチマテリアル構造を採用。軽量化に加えてメルセデス・ベンツの同セグメントモデル史上、最も高い安全性も実現しています。
サスペンションは連続可変ダンパーとエアスプリングを組み合わせた「AIRMATICサスペンション」を搭載。車高調整幅80mmを活かし、停車時には車高を40mm下げて乗降性アップ、悪路では40mm上げてロードクリアランスを確保する万能っぷりです。
さらに後輪には最大7度の操舵角を持つリアアクスルステアリングを採用。これにより全長5309mmの巨体でありながら、最小回転半径は約5.5mとコンパクトカー並みの取り回しの良さを実現しています。
4輪駆動の「VLE400」のリアセクションは後輪用モーターを横に寝かせて搭載、エアマティックサスペンションのダンパーも約45度寝かせて配置する超低パッケージ化と、日本車顔負けのアイデアで、室内高を犠牲にすることなく完全フラットフロアを実現しています。タイヤはグレードに応じて19〜22インチまで用意されています。
パワートレインは「VLE300」がフロントにモーターを搭載する前輪駆動(FF)でシステム出力は276ps、VLE400がフロント/リアにモーターを搭載する4輪駆動でシステム出力は407ps。バッテリーはNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)で容量112kWh(重量は約640kg!)となっています。ちなみに車両重量は3500〜3700kgとトラック並みです(驚)。
気になる航続距離は欧州測定モードで700km以上。プレゼンでは「東京から岡山までノンストップで走れます」と日本メディアでも分かりやすい説明がありました。
電費向上のために空力向上(Cd値0.25、高速走行時にAIRMATICサスペンションで車高を下げる)、熱マネジメント(最新世代のヒートポンプ)、ディスコネクトユニット(VLE400)など、様々な工夫が盛り込まれています。当然、充電性能も抜かりなしで、800Vテクノロジーの採用により、僅か15分の急速充電で355km分の航続距離を回復できるといいます。











































