全長5.3mの新型「“8人乗り”高級ミニバン」どんなクルマ? 巨大スクリーン&冷温庫採用! “巨体を感じさせない走り”も魅力のメルセデス・ベンツ新型「VLE」をスペインで試す!
メルセデス・ベンツは2026年3月10日、電動ミニバン新型「VLE」を初公開しました。従来の「Vクラス」とは異なり、“グランド・リムジン”を掲げる新型モデルは、どのような進化を遂げたのでしょうか。自動車研究家の山本シンヤ氏が、スペイン・ビルバオでその実力を確かめました。
全長5.3mの巨体を感じさせない走り
このように“語る”ことがたくさんあるVLEですが、実際に乗るとどうなのでしょうか。
ビルバオの街中は道幅が狭い上にタイトなコーナーや交差点が多く、巨大なミニバンには不釣り合いな試乗環境です。試乗前は「持て余すのではないか?」と身構えましたが、走り出すと不思議なほど車体は「小さく」、「軽く」感じられます。これはモーター駆動ならではの応答性とトルク、リアアクスルステア、そして視界の良さが大きく貢献しています。
乗り心地は「アジリティ(俊敏性)」を強調したスポーティで硬めな最新メルセデス・ベンツの味付けとは少し異なります。一言で表現するなら「フワフワなのに、なぜか芯はシッカリしている」という感覚です。
試乗車は285/40R22を履く「エクスクルーシブ」でしたが、それを感じさせない快適性です。19インチ(235/60R19)、21インチ(265/45R21)の試乗車にも乗りましたが、インチが下がるほどに入力がより「まろやか」という程度で、どの仕様も大きな差はなく高いレベルにあります。
乗り心地の指標のひとつに、「バネ上をフラットに保つ」がありますが、VLEは路面の凹凸に対してバネ上はそれなりに動きます。人間の波長に合う絶妙な動き方なのと、入力をあえて素早く吸収させずに時間をかけて「溶けて無くなるように」いなしていくので、何ともいえない“心地よさ”です。ただ、ラフなアクセル/ブレーキ操作をしてしまうと、前後方向はちょっと動き過ぎる印象もありました。

街中を抜け、ミニバンには不向きと思えるタイトなワインディングへ。ここでも街中以上にクルマが「小さく」、「軽く」感じられました。さすがに「俊敏」とまではいきませんが、身のこなしのスマートさはミニバンというよりも目線が高い高級セダンに近い印象です。
これは床下にバッテリーを敷き詰めたことで見た目以上に低重心な基本素性に加えて、車両姿勢を緻密にコントロールしているAIRMATICサスペンションとリアステアの相乗効果によるものでしょう。
コーナリングの扱いやすさにはさらに驚かされました。決してスポーティなキャラではありませんが、タイトコーナーでもフロント外輪に荷重が乗りすぎることなく、4輪を上手に使って気持ちよく曲がっていきます。一般的なミニバンはコーナリング中に前のめりの挙動が出やすく「これ以上は無理だな」と感じる限界が早く訪れがちですが、VLEはセダン系と変わらない見事なボディコントロールを披露。
かなりのコーナリングGがかかる場面でも車体は極めて安定しており、さらにそこから切り増しができるほどの“懐の深さ”を備えています。もちろん超重量級なので無理は禁物ですが、タイヤのグリップも高いので超重量級であることを忘れて走れてしまうことこそが、ある意味最大のウィークポイントなのかもしれません。

しかし、逆をいえばそれだけのポテンシャルがあるからこそ、この余裕がドライバーにとっては意のままに操れる「安心感」、リアシートのゲストは加減速やコーナリングのGをほとんど意識しない「極めて上質な移動空間」に繋がっているのだと確信しました。
一方で、高速道路のようなクルージング区間では逆に重さがプラスに働きます。ミニバンにありがちな横風によるフラつきや、わだちに足元をすくわれるような不安定さはほとんど無く、どっしりと大地を掴む優れた直進安定性を見せてくれました。
パワートレインに関しては「劇的に速いか」と問われれば、決してそうではありません。しかし、Vクラス(ディーゼル)と比べると電動車ならではの優れた応答性や、瞬時に立ち上がるトルクにより、動力性能は確実にレベルアップしています。
ただ、ミニバンが多く使われる常用域ではVLE300とVLE400の差が意外と小さく感じられました。ダイナミックセレクト「コンフォート」は過渡領域のトルク感が非常に扱いやすく好印象なものの、アクセル開度が大きい領域ではスペックの差を考えると少し物足りなさを覚えたのも事実です。
逆にダイナミックセレクト「スポーツ」に切り替えると元気すぎる(0-100km/h加速6.5秒は伊達ではない)ため、その中間くらいの味付けがあるといいな……と思いました。
総じていうと「ミニバン」ではなくコンセプトの「グランド・リムジン」にふさわしい仕上がりです。加えて、最新のメルセデス・ベンツの「先進性」と、かつてのメルセデス・ベンツの「極上の走りと乗り心地」が心地よく融合しており、次世代メルセデス・ベンツの方向性を示す重要なモデルのように感じました。メルセデス・ベンツはこのVLEをセダンに変わる新たなショーファーカーに育てようとしているのでしょう。
今回のモデルはVLEですが、その上に上級の「VLS」がスタンバイ(2026年後半)、さらには極上の「マイバッハ」仕様も計画されているそうです。つまり、今まで以上に“本気”だということです。
日本導入は現時点では未定ですが、間違いなく日本・中国をはじめとしたアジア地域を意識しているのは間違いないでしょう。
唯一の課題は、3500〜3700kgという車両重量です。日本では2017年3月12日以降に普通免許を取得した場合、車両総重量3.5トン以上のクルマは運転できない(準中型免許が必要になる)ため、一部のユーザーが免許の制約に引っかかる可能性があります。
日本法人はどのようなスペックを検討しているのか気になるところですが、個人的にはミニバン大国で“勝負”をするならば、廉価バージョンではなく、最上級の「エクスクルーシブ」とスポーティな「AMGライン」の導入はマストでしょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。











































