日本で絶大な人気のミニバンがこの10年で10車種以上も生産終了 次々と消える理由とは

エスティマやエルグランドがフルモデルチェンジしないワケ

 トヨタの場合、エスティマは現行型の発売から12年以上を経過しながら、フルモデルチェンジを受けていません。本来であればアルファード&ヴェルファイアと同じプラットフォームを使った新型に切り換わって良いのですが、古い状態で売り続けています。これはミニバン需要の先行きが不透明で「アルファード&ヴェルファイアが新型になればそれで十分」という見方が成り立つからです。

12年以上フルモデルチェンジなしで売り続けるトヨタ「エスティマ」

 日産エルグランドも、発売から8年以上を経過しながら、フルモデルチェンジを受けていません。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備の設計も古く、しかも3.5リッターエンジン搭載車のみに採用されて売れ筋の2.5リッターでは選べません。以前は北米で売られるクエストと基本部分を共通化していましたが、今はこの生産も終わってエルグランドは中途半端な状態です。

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 今の日産は海外市場に力を入れて、国内ではコストを費やさない方針ですから、ミニバンもe-POWERを加えたセレナだけで十分という判断でしょう。そのためにセレナには、スポーティなNISMOも用意されています。

 このような状態ですから、堅調に売られるミニバンは数年前に比べると少なくなりました。トヨタはシエンタ、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード&ヴェルファイア。ホンダはフリード、ステップワゴン、オデッセイ。日産はセレナ、三菱がデリカD:5という具合です。

 ミニバンが減った背景には、人気のSUVが増えたこともあるでしょう。SUVのボディはワゴンに似ていて居住性が優れ、荷物も積みやすいです。荷室に3列目の補助席を装着した車種もあり、以前ならミニバンを買っていたユーザーが、SUVを選んでいる事情もあります。

 またミニバンではなく、コンパクトカーを買うユーザーも増えました。理由は価格の上昇です。今は安全装備や環境性能の向上で、ミニバンの価格も高くなりました。10年前に売られていた先代ヴォクシーXは203万7000円でしたが、現行型は246万6720円です。2世代前のセレナ20Sは210万円でしたが、現行セレナSは244万800円です。安全装備が充実するのは喜ばしいことですが、価格もこの10年間に40万円ほど高まりました。

 以上のようにミニバンは、普及の開始から20年以上を経過して新鮮味が薄れ、SUVが充実したり、日本車の価格が高まったこともあって売れ行きと車種数が減っています。今後もミニバンは車種が少し減ることはありますが、増えることは考えにくい状況といえるでしょう。

【了】

数年前は爆発的に売れた時期も、販売終了となったミニバンたち等を写真で見る(23枚)

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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