“iPhone”デザイン採用の新型「フェラーリ」初公開! 賛否両論の新たな4ドアスポーツカー「ルーチェ」伊国仕様の見た目に隠された“秘密”とは
フェラーリが2026年5月25日にイタリアで世界初公開した、ブランド初の完全電動(BEV)スポーツカー「ルーチェ(Luce)」。創業79年目にして誕生した跳ね馬は、そのあまりにも斬新なスタイリングをめぐってネット上で大きな物議を醸しています。しかし、そのデザインの裏には、これまでの自動車の常識を覆す工業デザインとしての美学と、フェラーリとしての譲れない執念が隠されていました。
賛否両論の新型スポーツカー
フェラーリ初のBEV(電気自動車)「ルーチェ(Luce)」のデザインがネット界隈を賑わせています。
そのほとんどが否定的なもので、なかには「フェラーリ・ブランドを台無しにしている」なんていう極端な意見もあります。
そうした皆さんは、これまでのフェラーリをリスペクトしているからこそ、まったく新しいデザインのルーチェに違和感を覚えているのでしょうね。
クルマのデザインに好き嫌いはつきものです。だから、ルーチェのデザインを見て「自分は好きじゃない」とか「フェラーリらしくない」と思うのは自由です。
ただし、工業デザインの視点で評価すると、ルーチェには優れた点が少なくないのも事実です。
キャビンやメカニズムを中心とする車両本体の上から、スタイリングを規定し、そこに空力的効果まで持たせたカバーを被せた一種の二重構造は、従来の自動車には見られなかったものです。それでいて造形的にシンプルなのに個性的で、高いクォリティ感まで生み出しているのですから、工業デザインとして優れていることは間違いありません。
インテリアは、どこかアップル製品に通じる優しさと機能美を備えているように思えます。それもそのはず、ルーチェの内外装をデザインしたのはアメリカのクリエイティブ集団“LoveFrom”で、その創業者であるジョニー・アイブはアップルで最高デザイン責任者を務めていた人物。

もっとわかりやすく説明すると、あの半透明なプラスチックでブラウン管を包み込んだ初代iMacや、現在につながるスマートフォンの源流といっても差し支えのない初代iPhoneを生み出したのが、このアイブだったのです。
アイブは、同じくアップルでデザイナーを務めていたマーク・ニューソンとともに2019年にLoveFromを設立。現在も「世界中でもっとも注目されているクリエイティブ集団」といって間違いないほど、工業デザイン界では重要な存在とされています。
いっぽう、フェラーリにはチェントロ・スティーレという社内デザイン部門があります。名手フラヴィオ・マンゾーニ率いるチェントロ・スティーレは2010年の設立で、以来、すべてのフェラーリをデザインしてきました。
では、なぜフェラーリはルーチェのデザインをチェントロ・スティーレではなく、LoveFromに委託したのでしょうか?
フェラーリは高性能なエンジンを搭載したスーパースポーツカーとしてこれまで君臨してきました。しかし、ルーチェは創業79周年目にして誕生した初の「エンジンを積んでいないフェラーリ」です。
したがって「フェラーリを買うのはルーチェが初めて」というオーナーが一定数含まれるであろうことは容易に想像できます。そうした潜在的顧客にアピールするためにも、いままでのフェラーリとは大きく異なるデザインが必要だったのではないでしょうか。
いっぽうで、ルーチェは従来のフェラーリ・オーナーにとっても魅力的な存在であることが求められました。
この目標を達成するため、フェラーリは4輪を個別に駆動する4モーター方式により、従来のエンジン車では不可能だった高度で緻密なトルクベクタリングを実現。ここにアクティブサスペンション、独立式4WS、ABS evoといった最新テクノロジーを組み合わせるとともに、それらを統合制御するビークル・コントロール・ユニット(VCU)まで新開発しました。
そうした電子制御に頼るだけでなく、車両を軽量に仕上げ、低重心化やマスの集中化といった物理的な素性を磨き上げることで、これまで「EVでは不可能」とされてきたスポーツカーらしい軽快さを実現しようとしたのです。つまり、走りの点ではフェラーリの名に恥じない性能を備えているのです。
ちなみに、ネット上では不人気なデザインも、実際のフェラーリ・オーナーに聞くと「魅力的」という声が少なからず返ってきます。おそらくフェラーリは、そうした顧客の意向も入念にリサーチしたうえで、ルーチェを作り上げたのでしょう。




































