デンソーがウーブンシティでEVを“動く蓄電池”として活用!? 充放電エネマネシステムで街の電力安定化を目指す! 「走行中無線給電システム」の実証も

デンソーは実証都市「Toyota Woven City(トヨタ ウーブン シティ)」において、EVの充放電エネルギーマネジメントシステム「EVECOM(イブコム)」および走行中無線給電システムの実証実験を進める予定です。一体どのような取り組みなのでしょうか。

EVを「街のエネルギーの一部」に変えるエネマネシステム

 2025年9月にオフィシャルローンチした実証都市「Toyota Woven City(トヨタ ウーブン シティ)」において、産業を超えた連携による価値の創出=「カケザン」を加速させる施設、「Woven City Inventor Garage(インベンターガレージ)」が稼働を開始しました。

 これに伴い、4月20日から24日の5日間にわたり、完全招待制イベント「KAKEZAN 2026」が開催され、デンソーを含むインベンター(参画企業)が出展。

 デンソーブースでは、EV(電気自動車)の充放電エネルギーマネジメントシステム「EVECOM(イブコム)」と「走行中無線給電システム」が紹介されました。

ウーブンシティで「EVECOM(イブコム)」を用いた実証を予定
ウーブンシティで「EVECOM(イブコム)」を用いた実証を予定

 カーボンニュートラル実現に向けた鍵となるEVと再生可能エネルギー(再エネ)ですが、太陽光や風力などの再エネは気象状況に左右されやすく、電力の安定的な供給に課題があります。また、大量のEVが一斉に充電を行えば、街全体の電力需要を圧迫する懸念も生まれます。

 デンソーはこれらの課題に対し、建物の電力とEVを上手にコントロールすることで解決を図ろうとしています。

 今回、実証実験の主役となる「EVECOM」は、2025年3月に発売されたEVの充放電を最適にコントロールするエネルギーマネジメントシステム(EMS)です。

 名称は「EV・エネルギー(Energy)・コミュニティ(Community)」を掛け合わせた造語で、EVを通じて人と環境、サービスが繋がり、新たな価値を創出するというコンセプトが込められています。

 EVECOMの役割を一言で言えば、EVを単なる移動手段ではなく「街の蓄電池」として機能させることです。

 具体的には、再エネの発電量が多い時には積極的にEVへ充電を行います。逆に、街全体の電力需要が逼迫(ひっぱく)した際や、電力が足りないエリアが生じた際には、EVへの充電量を抑制したり、EVに蓄えた電気をパワーコンディショナー経由で建物側へ戻す「V2H(Vehicle to Home/Grid)」の技術を用いて電力を供給します。

 これにより、電力網(グリッド)の負荷を平準化し、街全体の電力の安定供給に貢献します。

 今回の実証実験の舞台は、実際に人々が生活を送るウーブンシティの居住エリアです。既に現地では充電EMSと充電/V2H機器10台の設置が完了しており、まもなく実証が開始される予定です。

 デンソーの担当者は、「10台規模の充電/V2H機器を並べて実際に制御が行える環境はなかなかありません。ウーブンシティならではの取り組みです」と語ります。

 これまでとの違いは、居住者が実際に生活するリアルな場でデータを取得できる点です。建物の電気の使われ方と、EVがどのように使われるかという生活に密着した生きたデータを蓄積し、フィードバックすることで、より実用的な充放電アルゴリズムの構築を目指します。

 複数のEVを同時に充電する場合、一般的には1台ごとにうまく配分がいかないといった課題が考えられます。しかしEVECOMは、コンパクトな制御デバイスとクラウドシステムを連携させることで、この複雑な管理を可能にしています。

 居住者の利便性を損なうことなく、街全体の電力を最適化するという高度なバランス取りが、デンソーのシステムの強みです。

 自動車部品メーカーとして培ってきた車に関するノウハウと、V2Hなどのエネルギーマネジメント技術を融合させることで、クルマと社会の双方にとって最適なソリューションを提供していきます。

“走りながら充電できる”モビリティ社会の実現に向けて

 もう一方の「走行中無線給電システム」は、現在開発が進められている技術です。

 EVの本格普及に向けた最大のハードルと言えるのが、「長い充電時間」と「航続距離への不安」。この2つの課題を解決する可能性を秘めたこのシステムは、その名の通り、車が走りながら道路インフラから直接エネルギーを受け取る仕組みです。

 具体的には、道路の地下に埋め込まれた送電コイルから、車両の底面に搭載された受電コイルへ、磁界を介してワイヤレスで電力を送ります。

 注目すべきは、受け取った電力を一旦バッテリーにすべて貯めるのではなく、モーターを回すインバーターやエアコンなどにダイレクトに供給する点です。

 走行に必要なエネルギーをリアルタイムで使いながら、余った電力だけをバッテリーの充電に回すという、無駄のないエネルギーマネジメントを実現しています。

 この技術が実用化されれば、EVのクルマ作りそのものが変わります。大きなメリットは電池搭載量減らせること。常に道路からエネルギーを補給できるため、長距離を走るための巨大で重いバッテリーを積む必要がなくなります。

 これにより、車両価格の大幅な引き下げが可能になるだけでなく、車体の軽量化による走行性能の向上や、希少資源の節約にも直結します。

「走行中無線給電システム」実証の構想もあるという
「走行中無線給電システム」実証の構想もあるという

 技術的な完成度も高いレベルに達しています。デンソーのシステムは85kHzの高周波を採用しており、徐行するような低速時から時速130kmでの高速走行時まで、約85%という極めて高い給電効率を維持できます。

 テストコースで行った実証実験では、コースの一部にのみコイルを埋め込んだ状態であっても、時速100kmで走行し続けながらバッテリー残量を減らさずに走り切ることに成功しているとのことです。

「すべての道路を掘り返す必要があるのでは?」という懸念に対しても、現実的なアプローチが示されています。

 同社の試算によれば、高速道路の約30%の区間にこのシステムを敷設するだけで、ドライバーの走行パターンの95%をカバーできるといいます。

 交差点の手前など、車が減速・停止して滞在時間が長くなる場所にピンポイントで設置するだけでも、十分な効果が得られるのです。

 さらに、道路のメンテンナンスについても20年に1度ほどの実施で問題ないといいます。

 ウーブンシティ内での実証実験について、具体的な内容や開始時期は未定とされているものの、街の電力網と車両を連携させる構想が練られています。

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Writer: くるまのニュース編集部

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