アメリカでは「アクア」も「プリウス」 日本と海外で車種名を分ける理由 「86」はスラング!?

2大スポーツカー「86」「ロードスター」、海外では…?

 販売地域からの要望や、その地域の人々へ配慮する形で、車種名が変えられた日本車もあります。

強烈なスラングだったトヨタ「86」

 吉川:トヨタとスバルのコラボレーションによって誕生したトヨタのスポーツカー「86」は、アメリカでは当初、若者向けブランド「SCION」を冠した「サイオンFR-S(FRスポーツの意味)」と呼ばれていました。「86」つまり「EIGHTY SIX」は、「何かをぶっ壊す」という意味のスラングだったからです。

 しかし、昔のAE86(カローラレビン/スプリンタートレノ)がクールだとアメリカのクルマ好きにも評価されるようになり、現代の「86」(2012年~)には、スラングのネガティブな印象はもはやなかったといいます。そこで、2016年夏の「サイオン」ブランド廃止とともに、日本と同じくTOYOTA「86」になりました。

 ちなみに、ヨーロッパでは「86」だけだとどのようなモデルか分かりづらいということで、キャラクターを示すGTを冠した「GT-86」と命名されています。地域に応じてスラングに配慮したり、車両のキャラクターをわかりやすくする狙いから、車種名を分けているのです。

当初「サイオンFR-S」として販売されたトヨタ「86」

「MX-5」その意味は? マツダ「ロードスター」

 吉川:「2人乗り小型オープンスポーツカー」の累計生産台数においてギネス世界記録を更新し続けているマツダ「ロードスター」は、欧州をはじめ世界的には「MX-5」と呼ばれています。Mはマツダの頭文字、Xは「RX-7」のようにスペシャルティモデルに統一して付けられる符号、5は車格的な意味合いです。かつて「カペラ」系クーペの海外名は「MX-6」でした(のちに「クロノス」系クーペの名として国内でも使用)。

 アメリカではさらにサブネームを付けた「MX-5 MIATA」とされています。「ミアータ」はコンピューターで作られた言葉で、「ラテン系と混血の日本の女の子」をイメージさせるということで命名されたものです(「ミアータ」は古いドイツ語で「報酬」「贈り物」の意味もある)。

 このクルマは日本よりもアメリカで先に発売されています。個別の愛称を好む日本では「ミアータ」を推す声もありましたが、国内営業部門からの要望で「ROADSTER(ロードスター)」に決まりました。軽量スポーツカーとして軽さやコンパクトさを実現するため、ソフトトップを重量のかさむ「カブリオレ」「コンバーチブル」タイプではなく、簡便で軽い「ロードスター」タイプにしたことが命名につながっています。これも、地域ごとの要望から車名が別れてしまった例ですね。

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