なぜトヨタは“斬新軽トラ風”モデルを公開? 「1人乗りの未完成車」とは? 軽トラよりも手軽な乗り物? 働き手をサポートする「IMV Origin」 特設サイト公開で振り返る
トヨタの企業姿勢「TO YOU」の取り組みを紹介する特設サイトが公開されました。サイト内では「あなためがけたクルマづくり」を体現する様々な事例が紹介されています。本記事では、そのなかでもアフリカでの展開を見据え、あえて荷台を持たない状態で提供される「IMV Origin」について改めて解説します。
トヨタ特設サイト「TO YOU」公開 未完成モビリティ「IMV Origin」の狙いを改めて振り返る
2025年のジャパンモビリティショーで披露したトヨタの取り組み「TO YOU」。
2026年3月末にその取り組みを紹介する特設サイトが公開されました。
サイト内では「あなたをめがけたクルマづくり」を掲げる事例が紹介されていますが、本記事ではそのなかのひとつの事例となるアフリカでの展開を見据え、あえて荷台を持たない状態で提供されるモビリティ「IMV Origin」の特徴や、開発の狙いについて改めて解説します。
「TO YOU」に込めた想いや取り組みを紹介する特設サイトでは、「あなたをめがけたクルマづくり」や「Mobility for All」といったテーマのもと、同社が世界各地で進める活動が取り上げられています。
その取り組みの一つとして注目されるのが、アフリカ市場に向けた「仕上げはアフリカ」を掲げるモデル、「IMV Origin(アイエムブイ オリジン)」です。
「ジャパンモビリティショー2025」などのイベントにおいて展示された「IMV Origin」は、運転席とシャシという「土台」のみで構成されていました。
ボンネットやキャビンは備わっているものの、その後方には荷台や乗員スペースが存在しません。
従来の完成された自動車を見慣れた目には、生産途中の未完成な軽トラックのように映るデザインです。
しかし、このあえて空白を残した形こそが、新興国、とりわけアフリカの未来を見据えたトヨタの新たな提案の核心部分となります。
開発を担当した太田博文氏によれば、プロジェクトの起点にはアフリカ農村部が直面する移動手段の課題がありました。
都市部では自動車の普及が進む一方、農村部では依然として二輪車が日常的な移動や物資輸送の主役を担っています。
二輪車は機動力に優れますが、一度に運搬できる農作物や商品の量には物理的な制限が伴います。
また、荷物を積載した状態で未舗装路や荒れた道を長距離移動する際の安全性にも限界があります。
現地の人々は「荒れた道を安定して走行でき、なおかつ手頃な価格の四輪車がない」という制約を抱えています。このモビリティの欠如が、生活をより豊かにするための障壁となっている現実がありました。
この状況を解決するため、トヨタは「人々が安全に乗れるクルマの基本構造である、シャシや運転席といった土台まではメーカーとして責任を持って開発・提供し、それ以外の後部構造は現地の手に委ねる」という手法を選択。
あえて完成車として提供しないことで、購入したユーザーが自身の仕事や生活環境に合わせて自由にクルマを組み上げられるようにしたのです。
例えば、サトウキビ農家であれば長く重い収穫物を運ぶために長い荷台を取り付けたり、乗合タクシーとして使うのであれば後部に複数の座席を設けたりと、土地や暮らしのニーズに合わせてクルマの姿を柔軟に変化させることが想定されています。
過去に公開された動画の中でも、現地の人々が牛乳缶を運搬するために自ら構築した荷台を備えたIMV Originを運転する様子が描かれています。
その土地で手に入りやすい材料を用い、現地の人の手によって用途に応じた架装を行うことが、このモデルの特徴です。

トヨタがアジアや新興国を中心に展開している多目的モビリティのラインナップには、「IMV 0(アイエムブイ ゼロ)」というモデルが存在します。
しかし、IMV Originはそれよりもさらに現地の過酷な実情に合わせた設計思想を持っています。太田氏は、両モデルにおけるターゲット層の違いを説明しています。
IMV Originが主眼を置くアフリカ農村部では二輪車が基本であるため、四輪車への乗り換えを促すには車両価格を圧倒的に安価にする必要があります。
加えて、現地の狭い道路環境を走行するため、IMV 0と比較してさらに小型のボディサイズが求められました。
そして、これらと同等以上に重要視されたのが「修理のしやすさ」という点です。
アフリカの農村地域には、メーカーのディーラー網が存在しない場所が多くあります。
仮に片道30キロ以上離れた場所でクルマが故障した場合、自らの手で修理をして帰還しなければならないという厳しい環境に置かれています。
そのため、IMV Originは自動車としての基本機能である「走る・曲がる・止まる」に特化したシンプルな構造を採用。
悪路走行を想定し、障害物を乗り越えやすくするために最低地上高は高く設定されました。さらに、車両を構成する部品には可能な限り汎用部品を多用しています。
これにより、専用の特殊な設備がなくても、現地で手に入る工具キットや溶接機があれば、ユーザー自身で修理や改造が行えるように配慮されています。メンテナンスフリーを追求する先進国の自動車とは異なる、過酷な環境を自力で対処するための堅牢な設計です。
なおIMV Originの動力源となるパワートレインについて、現在は電気自動車(BEV)を想定したモデルが公開されていますが、電力網などのインフラ整備が十分に行き届いていない地域での使用を考慮し、ガソリンエンジンも搭載できるプラットフォームとして設計が進められています。
どのような環境下でも運用を開始できるよう、動力源の選択肢を用意している点も特徴の一つです。
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トヨタが「土台」のみを供給する理由は、単に車両価格を下げるためだけではありません。太田氏によれば、そこには現地の産業や人々と「共創」していくという長期的な展望が含まれています。
アフリカには、クルマの修理や加工を得意とする職人が数多く存在しています。トヨタが提供する基礎となるシャシと、こうした現地の職人たちの技術が融合することで、単なる修理工場にとどまらない、新しい事業やサービスが生まれる可能性を見込んでいます。
完成品を一方的に提供するのではなく、現地の人々が実現したい目的に向けて「一緒に何ができますか」と問いかける姿勢が、このプロジェクトの方針です。
公開された動画では、子供たちが針金や空き缶などの身近な素材を使って、おもちゃのクルマを自作する様子が映し出されています。
自分たちの手でものを作り出すという現地の文化が、将来的にIMV Originの荷台製作やカスタマイズという実社会での仕事へと繋がり、人々の生活を動かしていくというメッセージが示されています。




















