「いつもより謙虚な姿勢で臨んでます(笑)」豊田章男氏が自ら語った、S耐“3チーム分割”の真意とGRの現在地 未来をつくる“公開開発”とは

TOYOTA GAZOO Racingから原点回帰で「GR」へ名称変更したトヨタ。今年のスーパー耐久にはなぜか3つのチームに分かれて挑む。もてぎでのテストで自らステアリングを握る豊田章男氏に直撃インタビューを敢行! そこには時間軸の異なるクルマづくりを加速させる狙いと、未来に向けた“公開開発”の姿があった。

豊田章男氏に直撃! 3チーム分割の裏にある「教え合い、共創する」姿勢とは

 東京オートサロン2025の直前となる1月7日、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は設立当初の想いに原点回帰すべく、再び「GAZOO Racing(GR)」に名称を変更する事を発表しました。

 GRの原点は2007年にニュル24時間の挑戦でした(当時はTeam GAZOOとして参戦)。

 その本質は「モータースポーツを通じて人とクルマを鍛え、もっといいクルマづくりに繋げること」、つまりトヨタ創業時の“原点”に戻ることでした。

 あの初挑戦から20年あまりが経過し、今ではモータースポーツ活動がもっといいクルマづくりの最前線となっています。

 ただその一方で、それが“当たり前”になった事で“本質”が見失われ始めているのも否めません。

量産車を更に鍛えるGRヤリスDATレーシングコンセプトは「GR Team SPRIT」に乗る豊田章男氏
量産車を更に鍛えるGRヤリスDATレーシングコンセプトは「GR Team SPRIT」に乗る豊田章男氏

 現状に満足せず、カイゼンの手を止めない豊田章男氏は、「MS活動にも“役割”がある」と考え、今回トヨタのモータースポーツ活動を2つの“軸”に分けました。

 1つが「モータースポーツを起点とするもっといいクルマづくり・人材育成の強化」を目的となるGR、もう1つが「パワートレーンや技術に特化したモータースポーツ活動」を目的とするTOYOTA Racing(TR)です。

 ちなみにトヨタが開発した商品・技術を、ユーザー目線で鍛える実践の場としての位置づけられている「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)」は今年も活動を行ないますが、新たにGRとTRの“架け橋”と言う役目も担います。

 そんなTGRRの主な活動の場はニュル24時間とS耐です。

 ニュル24時間は2025年のフィードバックを元に改良が施されたGRヤリスDATで参戦を行ないます。

2026年5月14-17日のレースに向けて、チームは3月14日に行なわれるNLS1と、3月21日(S耐開幕戦と同日)に行なわれるNLS2にテスト参戦を行ないます。

では、スーパー耐久(S耐)はどうでしょうか。

 TGRRとしての参戦は1台(GRカローラH2コンセプト)のみで、2025年の岡山戦で実戦デビューを果たしたミドシップレイアウト採用のGRヤリスMコンセプトは「GR Team ORC Field」、そして量産車を更に鍛えるGRヤリスDATレーシングコンセプトは「GR Team SPRIT」からのエントリーとなっています。

 筆者は「なぜ、全部TGRRじゃないのか?」、「分ける理由は何なのか?」と言った疑問が昨年の体制発表以来ずっと頭の中にありました。

 その答えを探しに3月1日にモビリティリゾートもてぎで開催されたS耐テストデーで取材を行なってきました。

 ピットに行くと、なぜかGR Team SPRITのGRヤリスDATをドライブする豊田氏の姿がありました。(開幕戦のエントリーリストにもドライバー登録されています)。

 ちなみにニュル24時間を戦うGRヤリスDATとS耐を戦うGRヤリスDATは技術・ノウハウをフィードバックし合っていますが、それを踏まえると5月のニュル24時間に向けた“トレーニング”も兼ねているのかなと予想できます。

 走行後に豊田氏に話を聞いてみました。

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―― なぜ、S耐の活動はTGRRを含めた3つのチームに分けて行なっているのでしょうか?

 豊田:3つのチームはそれぞれに役割があります。「未来への種まき(水素エンジン)」、「先行開発(ミドシップ)」、「直近の開発(市販車GRヤリス)」と時間軸が異なりますが、どれもST-Qクラスからの参戦、そしてプロとGRのエンジニアの混成チームです。

 要するに「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」でしっかり繋がっています。

―― 今回GR SPIRITで乗った理由は?

 豊田:ST-Qクラス(=開発の場)において、チーム間で技術を隠すのではなく、「教え合い、共創する」という姿勢を示すためですね。

 ちなみに人(=プロ)が変わると学ぶ事やアウトプットも変わりますから。それぞれのフィールドにプロがおり、そこを人が循環することで、更なる化学変化が生まれるでしょう。

―― いつもと違うチーム、居心地は?

 豊田:TGRRが4人1組で予約する「いつものゴルフ」だとすると、GR SPIRITは「1人でふらっと行って、他の組に混ぜてもらうゴルフ」ような感覚。

 なので、いつもよりも謙虚な姿勢で臨んでいます(笑)。ちなみにSTMO理事長としては、他メーカーのマシンにも乗ってみたいと思っています。
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今年はどんな走りを魅せるのか? GR YARIS M conceptに注目!
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 ちなみに水素エンジンは昨年と同じく限定的参戦だと思われますが(富士24時間と富士ファイナル?)、それ以外の参戦マシンも気になる所です。この辺りはS耐全体リーダーの江口直登氏に聞いてみました。

―― S耐でのTGRRの役割は「未来の種まき」ですが、水素エンジン以外にどのようなマシンでの参戦を予定しているのでしょうか?

 江口:TGRRは、あえて固定の年間計画にせず、その時々で「試したい技術」や「マスタードライバーが乗ってみたいクルマ」をチョイスしていく予定です。

―― と言う事は、GR GTやセリカのようなモデルの参戦もあり得るのでしょうか?

 江口:具体的には何も言えませんが(汗)、ファンを喜ばせるサプライズを仕掛けることができる事も、TGRRならではの枠組みです。

―― ちなみにミドシップのチーム体制がORCに変更されたのは、なぜでしょうか?

 江口:最大の理由は、スポットではなく年間通じての参戦することで、よりスピード感を持った開発をしていきます。
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 これらから解るように、S耐の活動を3つのチームに分けたのは、各々の役割をより明確にすることで「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を、より色濃く、より的確に、そしてよりスピーディに、進めるためです。

 チーム名は異なりますが、言うなればTGRRの中に3つのカンパニーが存在するイメージなのかなと。

 かつて「トヨタには作れるはずがない」と言われましたが、今では「トヨタだからできる」と言う状況に変わっています。

 ただ、もっといいクルマづくりと人材育成に終わりはありません。

 そんなトヨタの未来をつくるS耐を通じて行なわれている“公開開発”。

 その目撃者になるために、皆さんも是非S耐に来てください。

【画像】超かっこいい! これが「GRヤリス」です。画像で見る!(30枚)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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