全長4.1mボディに「ガルウィング&後ろヒンジハーフドア」採用! 日産の「フェアレディZ風SUV」の魅力に再注目!伝説の「240Z」彷彿させる2015年公開の「グリップス」とは
日産自動車がかつて提案した「グリップス コンセプト」。伝説のラリーカーとロードバイクから着想を得たという斬新なコンパクトクロスオーバーは、どのような特徴を持っていたのでしょうか。
伝説の「Zカー」再来!? 斬新すぎる「スポーツ・クロスオーバー」
自動車メーカーが未来のビジョンを示すために製作するコンセプトカー。その中には市販化されずとも、後のモデルに色濃く影響を与え、ブランドの転換点となる重要な一台が存在します。
日産が2015年に発表した「Gripz Concept(グリップス コンセプト:以下、グリップス)」も、まさにそんなモデルでした。
グリップスは、2015年9月にドイツで開催されたフランクフルトモーターショーで世界初公開され、翌10月の東京モーターショーで日本デビューを果たしました。
このモデルが掲げたコンセプトは、スポーツカーの情熱的なシルエットと、SUVの実用性を一つに融合させた「デュアル・パーソナリティ(二つの側面)」です。
このユニークな着想の源となったのは、日産の最初のクロスオーバーの一つであり、1970年代にサファリラリーなどの過酷な競技で活躍した伝説の「ダットサン 240Z(フェアレディZ)」と、究極の機能美を持つ「ロードバイク(競技用自転車)」でした。
エクステリアはレッド・オレンジを基調に、Aピラーなどをマットブラック、フェンダーアーチなどをカーボン仕上げとし、ラリーイメージを想起させるコントラストを強調していました。
この斬新な組み合わせは当時大きな話題を呼び、そのコンセプト性の強さから、スポーツカーとSUVを融合した“Z風SUV”として注目を集めました。
デザインは、英国ロンドンの「日産デザイン欧州」と日本の「グローバルデザインセンター」が共同で手掛けたもので、当時の日産の新デザイン言語「エモーショナル・ジオメトリー」を体現していました。
フロントには現在の日産車の顔となっている大型の「Vモーショングリル」を備え、鋭い「ブーメラン型ランプ」を採用。足元には3スポーク形状の22インチホイールを装着し、コンパクトなボディに対して強い踏ん張り感を与えていました。

最大の特徴は、スーパーカーのような跳ね上げ式のフロントドアと、後ろヒンジのリアドアを組み合わせた観音開き構造です。Bピラー(前席と後席の間の柱)をなくしたことで、2+2の室内へのスムーズなアクセスを実現していました。
インテリアはロードバイクの世界観を反映し、サドルを思わせる穴開き形状のシートやスリムなセンターコンソールを採用。スポーツカーの“ワクワク感”を狙った、個性的な空間として提案されていました。
ボディサイズは全長4100mm×全幅1890mm×全高1500mmと、全長はコンパクトながら、全幅は1.9mに迫るワイドボディで、全高を抑えた特異なプロポーションが凝縮感を生み出していました。
パワートレインにはシリーズ方式の「Pure Drive e-Power」を採用。ガソリンエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動する仕組みで、モーターは最高出力80kW(109PS)・最大トルク254N・mとされていました。エンジンで発電しモーターで走る“シリーズ方式”というハイブリッドシステムで、のちに日産が市販車で展開する「e-POWER」に通じる考え方が示されていました。
また、ヘッドランプ部に録画用カメラを組み込み、走行映像を撮影し、共有できる機能が提案されていました。これはサイクリストがヘルメットにカメラを装着する文化からヒントを得たもので、現代のコネクテッドカーやSNS文化を先取りしたユニークな提案でした。
残念ながらグリップス自体が市販化されることはありませんでしたが、そのDNAは確実に受け継がれました。
日産は、このコンセプトモデルについて、2代目ジュークを予告する存在として位置付けており、実際にVモーショングリルなどのデザイン要素はその後発売された2代目ジューク(日本未導入)に継承されました。
そして何より、搭載されていたハイブリッドシステムはe-POWERとして完成し、2016年の「ノート」搭載以降、日産を支える基幹技術として広く普及しました。
グリップスは幻のモデルとなりましたが、その革新性は現代の日産車の中で今も生き続けているのです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。












































