給油時「謎のプシュー!」音はどう対処すべき? 手順間違えると「大炎上」の危険も!? そもそも何が「噴き出している」のか
セルフスタンドで給油しようと給油キャップを回した瞬間、「プシュー」という音がして、一瞬ドキッとした経験はないでしょうか。まるで炭酸飲料を開けたときのようなこの音、はたしてクルマに異常が発生しているサインなのでしょうか。
給油時の「プシュー」音は危険? それとも正常!?
セルフスタンドで給油キャップを開けた瞬間に聞こえる「シュー」という音。特に夏場や長距離走行後に多くのドライバーが経験する現象ですが、初めて体験すると不安に感じる人もいるかもしれません。
実はこの音、現代のクルマに搭載された環境技術が正常に作動している証といえます。
この音の正体は、燃料タンク内の蒸気圧が外気圧より高くなっていることで発生する「正圧解放音」です。
ガソリンは非常に揮発性が高く、マイナス40度という極低温でも気化します。気化したガスの主成分は炭化水素(HC)であり、大気汚染物質として厳しく規制されています。
燃料タンクは密閉構造となっており、内部では常に圧力変動が起きています。気温上昇やエンジン停止後の放射熱によって燃料温度が上昇すると、気化が進んでガスが膨張し、タンク内の圧力が高まります。
この現象は「日周呼吸損失」や「ホットソーク損失」と呼ばれています。そして給油キャップを開けた瞬間、蓄積されていた蒸気が一気に放出されることで「シュー」という音が生じます。
一方、冷えた朝や長距離走行後にタンク内が負圧状態になっていると、キャップを開けた際に「シュコー」と吸い込むような音がします。これも正常に圧力が制御されている証です。

この圧力変動と蒸発ガスの排出を制御しているのが「蒸発ガス排出抑制装置(EVAPシステム)」です。
中心にある「チャコールキャニスター」は活性炭を用いて燃料蒸気を吸着し、エンジン吸気に戻して燃焼させることで再利用しています。これにより排出ガスが低減され、燃料の無駄も抑えられています。
さらにEVAPシステムは自己診断機能も備え、燃料キャップの密閉状態や配管の微小な亀裂まで監視しています。
キャップの締め忘れやパッキン劣化は、故障原因の一つとされています。キャップが緩んだだけでもエンジン警告灯が点灯するのはこのためです。
ただし、「シュー音」が異常に大きい、長く続く、あるいは全くしない場合は、ベントバルブやキャニスターの詰まり、配管の漏れといった不具合の可能性も考えられます。異音や強いガソリン臭がある場合は、早めに専門工場での点検が推奨されます。
また正常の動作だとしても、そもそもガソリンは気化しやすい危険物であるという大前提を忘れてはいけません。
給油中は火気厳禁なのは当然のこと、静電気でも引火する可能性があることをあらためて確認しておきましょう。
セルフ式ガソリンスタンドで給油する人は、備え付けの静電気除去シートに触れるほか、クルマの窓も閉めておき、子どもなどが近づかないようにするなど、万が一に備える必要があります。
なお近年のハイブリッド車やプラグインハイブリッド車では、エンジンが長期間作動しないケースも多いため、より高度なEVAPシステムが搭載されています。リーク検知ポンプが追加され、ごくわずかな漏れも検出可能となっています。
こうした技術は、規制の強化とともに年々進化を続けています。
EVAPシステムは1970年代から日米欧で段階的に法制化が進められてきました。日本では1972年に導入され、2000年代以降は日中の温度変化による蒸発ガスも規制対象に。アメリカではOBD-II規制によりリーク検知まで義務付けられました。
なお、ディーゼル車ではこのような「シュー音」は基本的に発生しません。軽油はガソリンに比べ揮発性が極めて低く、タンク内の圧力変動がほとんど生じないためです。そのため、EVAPシステム自体が搭載されていません。
将来的には水素燃料電池車や合成燃料(e-fuel)でも蒸気管理の課題は形を変えて残ります。
たとえば液体水素タンクでは「ボイルオフガス」の管理が新たな技術課題となりつつあります。今後もEVAP技術の基本思想は、さまざまな燃料体系に応用されていくと見られます。
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結論として、給油キャップを開けた際の「シュー音」は正常な現象であり、故障のサインではありません。
むしろ、現代の自動車が積み重ねてきた環境保護技術の成果が静かに機能している証です。もしも普段と異なる異音を感じた場合のみ、冷静に点検を検討するのが正しい対応といえます。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。






















