新車26万円! 斬新「“3人乗り”ちいさなクルマ」が凄い! 全長2.3mの“屋根なしボディ”に「後輪駆動&4MT」採用! “悪路に強くて”利便性バッチリの割り切り仕様! 「農民車コマツ」とは?
建設機械メーカーとして世界的に知られるコマツですが、かつて農業の現場で活躍する「自動車」を本気で開発していたことをご存じでしょうか。1960年に誕生した「農民車コマツ」は、移動と作業を一台でこなす実用性を追求した独創的な存在でした。その知られざる姿と魅力をひもといていきます。
建設機械メーカーが挑んだ異色のクルマづくり
建設現場で活躍する黄色い重機を思い浮かべると、多くの人は自然とコマツ(小松製作所)の名を連想するのではないでしょうか。
ブルドーザーや油圧ショベルの分野で世界的な評価を得ている同社ですが、その長い歴史をひもとくと、意外にも「自動車」を手がけていた時代があったことが分かります。
その存在は決して広く知られてはいませんが、日本の産業史を語るうえで見逃せない一台です。
その車両は「農民車コマツ」と呼ばれ、現在は石川県小松市にある日本自動車博物館で実車を見ることができます。
1960年に発表されたこのモデルは、日本が本格的にモータリゼーションへと歩み始めた時代に誕生しました。
乗用車がまだ庶民の手に届きにくかった当時、農村部では「移動も作業も一台でこなせる車両」が強く求められており、農民車コマツはまさにその声に応える形で開発されたのです。

外観は現在の自動車の常識からすると非常に独特です。全長わずか全長2300mm×全幅980mm×全高1230mmと、現在の軽自動車よりも小柄な寸法ですが、デザインは洗練とは無縁で、むしろ農業機械そのものといった趣があります。
屋根やドアは最初から備えられておらず、運転席周りも最低限の装備のみで構成されています。
金属製の簡素なシートとハンドルがむき出しになっている様子は、快適性よりも実用性を最優先した思想を強く感じさせます。
こうした割り切った設計は、畑仕事や荷物の積み下ろしを効率よく行うためでした。車体の低さと開放的な構造によって、農具や収穫物を素早く扱えるよう工夫されていたのです。
定員は3名とされていますが、現代の感覚では驚くような配置で、運転手以外は荷台などの空きスペースに腰掛けることを想定していました。当時のおおらかな価値観が、そのまま形になったような仕様だと言えるでしょう。
機関部にも注目すべき点があります。床下には空冷式の4サイクル単気筒エンジンが搭載され、出力は7.5馬力と控えめながら、農作業には十分な性能を発揮しました。
変速機は4速のマニュアルで、駆動方式は後輪駆動です。後輪にはトラクター用のラグタイヤが装着され、ぬかるんだ農道や未舗装路でも確実に走れるよう配慮されていました。
さらに左右のブレーキを独立して操作できる仕組みがあり、狭い場所での取り回しや旋回性能にも優れていました。
農民車コマツを単なる移動手段以上の存在にしていたのが、動力取り出し装置の存在です。
この装置によって耕うん機や防除機などを接続し、エンジンの力をそのまま農作業に活用することができました。
畑で働き、用事があればそのまま街へ出かけることもできるという、まさに多用途を想定した一台だったのです。
発売当時の価格は26万円でした。一見すると手頃に思えるかもしれませんが、当時の物価水準を考慮すると現在の数百万円に相当すると言われています。
それでも実用性の高さが評価され、およそ2年間で4300台が生産されました。農民車コマツは、日本の農業を足元から支えた存在だったのです。
Writer: くるまのニュース編集部
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