「答えは1つじゃない!」クラウン スポーツPHEV試乗と開発責任者インタビューで分かったトヨタの最新「マルチパスウェイ」戦略の中身とは?【PR】
自動車の電動化が叫ばれる昨今、トヨタはマルチパスウェイ(全方位で技術の可能性を模索し、複数の経路でカーボンフリー社会を目指す考え方)を軸に、多様なニーズに応える選択肢を増やしながら電動車の普及を目指しています。そんなトヨタの考えるマルチパスウェイとはなんなのか? 自動車研究家の山本シンヤさんが取材しました。
電動化の本当の意味は「車両の動力に電気を使う“全て”のクルマ」を指す
自動車業界のトレンドとなっているのが「電動化」です。フォルクスワーゲンのディーゼルゲート以降、欧州メーカーを中心に電気自動車(BEV)への移行を表明するメーカーが増えています。ただ、現在は“見込み”の発表をした時点で「あなたはすごい、あなたはダメ」と言い合いをしている状況と言ってもいいかもしれません。
そんな中、トヨタはカーボンニュートラルに対して“直球勝負”で向き合っています。それは「正解が分からないから選択肢の幅を広げることが大事」との考えで、一貫してマルチソリューションを唱えています。
確かにBEVはカーボンニュートラル実現に向けた有効なソリューションの一つですが、国や地域によってエネルギー事情も電源事情も異なります。そこで選択肢を絞る(=BEVシフト)と、「移動の自由」を実現できない人が出てしまいます。グローバルでフルラインナップのビジネスを展開するトヨタとしては「誰ひとり取り残さない」というわけです。
HEVを含む電動車の世界累計販売台数は2000万台にも達している
ちなみに新聞・経済紙の多くは「電動化=電気自動車」と勘違いしがちですが、本当の意味は「車両の動力に電気を使う“全て”のクルマ」を指しています。全ての電動化パワートレインに共通する重要な要素技術は、「モーター/バッテリー/インバーター」の3つ。これにエンジンを組み合わせれば「HEV」、充電機能を追加すれば「PHEV」、フューエルセルと水素燃料タンクを組み合わせると「FCEV」、そして、そのまま動力に使えば「BEV」になります。
その中でもHEVはその歴史と搭載されている車種の広がり、また累計2315万台にも及ぶ販売台数から電動化パワートレインの代表格です。1997年に世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売して以降、さまざまな車種に水平展開。現在はコンパクトカー、セダン、SUV、ミニバン、そして商用車とトヨタのほぼ全ての車系にラインナップされ、HEVを含む電動車の世界累計販売台数は2315万台(2023年3月末)を超えています。
日本はCO2マイナス23%という突出した削減実績を持っている
トヨタは初代プリウス誕生からの20年で、モーターは「出力200%アップ、サイズ50%ダウン」、バッテリーは「ウエート30~50%ダウン、サイズ60%ダウン」、インバーターは「エネルギーロス80%ダウン、サイズ50%ダウン」と、小型/軽量/高効率化を実現。さらに累計2315万台の生産/販売の実績で裏付けられた耐久性/信頼性/商品性/コスト競争力など、大量・高品質で生産する技術も構築しています。
BEV推進派の人の中には「ハイブリッドはつなぎの技術」と揶揄(やゆ)する人もいますが、少ないバッテリー容量(1kWh以下)にもかかわらず、燃費を大幅に向上…つまりCO2排出量を大きく低減させているのは紛れもない事実です。
また、トヨタはPHEVを「プラクティカル(実用的)なBEV」と呼んでいます。これは2023年4月に行われたトヨタ新体制による方針説明会で語られたもので、PHEVの電池効率を上げ、EV航続距離を200km以上に延ばすことで、プラクティカルなBEVと再定義し、開発により力を入れていくというものです。
PHEVは近距離をバッテリー走行、遠距離はガソリン走行と使い分けて走ることができるため、BEVに比べて航続距離が延びます。さらに、BEVを1台製造できる量のリチウムで、PHEVを6台、あるいはHEVを90台製造可能で、結果的にはPHEVやHEVを製造する方が、自動車全体のCO2排出量は少なくなります。
ちなみに日本自動車工業会が公開している資料の中に「主要国・地域での過去20年間における自動車のCO2削減状況」のグラフがありますが、これを見ると欧米各国のほとんどが増加または微減(イギリスだけマイナス9%)の中、日本はマイナス23%という突出した削減実績を上げています。これにHEVやPHEVが大きく貢献していることは、言うまでもないでしょう。
「革新と挑戦」を再構築するために、生まれ変わった16代目クラウン
そんなトヨタのマルチパスウェイを象徴するのが、16代目に進化した「クラウン」です。少しだけおさらいしますが、1955年の登場以降、“日本の高級車”という軸足を換えることなく進化・熟成をおこなってきました。
しかし、その長い歴史が逆に足かせとなり、徐々に保守的なクルマになってしまったのも事実です。
それを打破するために14代目はデザイン、15代目は走りの部分に大きく手が入りましたが事態は好転せず…。そこで16代目は豊田章男氏の「マイナーチェンジを飛ばしてもいい。もっと本気で考えてみてほしい」という声から、クラウンのDNA「革新と挑戦」を再構築するために、生まれ変わりました。
開発チームはこれまでの固定概念を一切捨て、決断したのが、クラウンを縛りつける鎖からの解放でした。その実現のために、現代にマッチングする複数のモデルを用意。それがセダンとSUVを融合した「クロスオーバー」、エモーショナルなSUV「スポーツ」、正統派サルーンである「セダン」、そしてアクティブライフを楽しむ相棒「エステート」の4つです。