パナソニックオートモーティブシステムズが2027年に「モビテラ」へ社名変更! 事故を“未然に防ぐ”独自の運転支援技術で安心と「移ごこち」の提供を目指す
パナソニックオートモーティブシステムズは、2027年4月1日付で社名を「モビテラ」に変更すると発表しました。あわせて公開された「モビリティUX戦略」の詳細では、運転シーンやドライバーの感情を検知し、事故を未然に防ぐ次世代運転支援技術について説明。AIやソフトウェアの力で「移動体験」そのものをプロデュースする企業への変革を加速させます。
運転シーンや人の感情を検知、「次世代の運転支援技術」がクルマの移動を変える
パナソニックオートモーティブシステムズは2025年12月16日都内で会見を行い、2027年4月1日付で社名を「モビテラ」に変更すると発表しました。
あわせて、「モビリティUX戦略」やその要となる、ドライバーの感情を読み取り事故を予兆段階で防ぐ運転支援技術について説明。
車載デバイス供給メーカーから、ソフトウェアとAIで「移動の質」を変えるテクノロジーソリューション企業への変革を加速するビジョンを示しました。

経営基盤の「筋肉質化」でIPOを見据えた変革を進行中
パナソニックオートモーティブシステムズは、パナソニックグループの事業会社制開始に伴い、車載事業を担う事業会社として2022年に発足しました。2023年には、米国資産運用会社Apollo(アポロ)とのパートナーシップに基本合意。
2024年12月より資本構成をアポロ80%、パナソニックホールディングス20%とし、新体制での事業運営を行っています。
会見にて登壇した代表取締役社長の永易正吏氏は、現在の経営状況について「持続的な成長を目指し、3〜4年以内のIPO(新規株式公開)を視野に入れた経営強化と変革を進めています」と説明。
同社は現在、キャッシュフローの改善と資本効率の向上を最優先課題に掲げ、徹底した「筋肉質化」を推進しています。
具体的には、全社横断の直轄プロジェクトにより材料費を合理化し、すでに500件以上の施策を創出。
また、グローバルでの品質管理プロセスを見直すことで、検査工数を80%削減するなど、従来の常識にとらわれないオペレーションの効率化を図っています。
永易社長は「2027年度にEBITDA-CAPEX(事業が創出したキャッシュのうち手元に残る額を示す指標)を2024年度比で約3倍にするという中長期目標に対し、初年度である2025年度は達成の見込みです。アポロ社とのパートナーシップを機に進めてきた改革の成果と言えますし、27年度の目標達成に向けてさらに変革を加速させていきたい」と語りました。
さらに、この経営強化の背景には、単なるコスト削減だけではなく、次なる成長への投資余力を生み出す狙いがあります。
永易社長は「キャッシュフローを改善することで生まれたリソースを、成長領域であるモビリティUXやコックピットHPC(高性能コンピューティング)に振り向けていく」と強調しました。
事故が起きる前に”摘み取る”、独自のAIアルゴリズム
成長戦略の柱として今回詳細が語られたのが「モビリティUX事業」のアップデートです。
同社は、「コックピットHPC」(コックピット領域)と「モビリティUX」(移動体験)に重点コア事業としています。
モビリティUXにおいては、2035年度までに売上高を現在の1.5倍超となる約5000億円まで拡大することを目指し、同社が培ってきた「ひと理解」の知見をもとに、センシングやAI、アルゴリズムで「移ごこち(心地よい移動)」を創出します。
交通事故の現況を見てみると、運転支援システム(ADAS)の普及により件数は減少傾向にありますが、未だに日本国内では年間29万件の事故が発生しています(出典:政府統計「道路の交通に関する統計」2024)。
要因の約80%は、油断や不注意、焦りなど、ドライバーの内面的な感情に起因しており(出典:ITARDA「交通統計」2024)、事故を防止するためには、ドライバーを中心とした車内外の状況把握と、それに対する支援が重要です。
現在のADASは、事故の直前にブレーキ制御を行うもので、誤作動防止のため作動範囲も限定的になっています。
一方、モビリティDX事業の運転支援では、事故の予兆段階で車内外の状態を推定し、ドライバーにとって最適な支援を行うことで、そもそも危険状態に陥ることを防ぎ、事故を未然に防止することを目指します。
安心できる運転環境をつくるために、外部要因とドライバー動作から状況を把握を行い、運転で起こるリスクを先回りして抑制する「ヒヤリハットの先回りサポート」、見落としやすい予測ミスなどを防ぎ、高齢者、初心者などの安全運転を支援する「認識能力サポート」、AIがナビゲーション操作や外部への連絡など、運転以外の操作をサポート、代行する「運転以外の操作からの解放」という3つの価値を提供。
その核となるのが、長年のAV機器開発やナビゲーション開発で培ったUX・UIの知見を活用した、独自の「ひと理解ロジック」です。
具体的には、カメラやマイク、バイタルセンサーなどのセンシングデバイスで情報を取得し、ディスプレイやスピーカー、シート、空調などのアクチュエーションデバイスで制御を行います。
この技術の大きな特徴は、表面的な情報処理だけでなく、文脈や意味を理解する「セマンティック・コントロール」にあります。
これは、運転シーンを認知し、危険の優先度を予測することで、状況やドライバーに合わせた警告や案内を可能にする「シーンパーセプション技術」と、ドライバーの状態や個性を推定し、より精度の高い運転支援を提供する「感情パーセプション技術」を組み合わせ実現するものです。
永易社長はシーンパーセプションについて、「視覚特性モデルを用いて、人間が気づきにくい危険だけを選別して警告します。
すべての危険を警告するとドライバーは煩わしさを感じ、逆に注意力が散漫になりますが、私たちの技術なら本当に必要な情報だけを届けることが可能です」と述べ、ドライバーの認知負荷を下げつつ安全性を高めるアプローチの優位性を説きました。
また、感情パーセプションについては、下記のように語り、自信を見せました。
「例えば朝の通勤時、運転中の集中度は人によって異なります。眠気を感じている人もいれば、神経質さや仕事への期待から集中する人もいます。単純な感情推定だけでは見極めが難しいため、我々はさまざまなセンシングで抽出される情報をもとに一般的な感情と実際の感情のギャップ分析を行い、個性を推定することで、ユーザー意図の理解を深めます。
状態検知というと、表情や目の動きなどを見ることが一般的ですが、ここまでの感情検知を行えるのは当社独自の技術です」
今後の展開としては、既存のデバイスを活用しながら、多様なソリューションをカーメーカーやモビリティサービサーへ提供していく予定です。提供形態は、ソフトウェアやECU単体での提供、デバイス一体型、さらにはフルカスタムサービスまで幅広く柔軟に対応するとのことです。



















