トヨタが「ゴツい1人乗り」モデル展示! あえて“未完成な軽トラ”風、なぜ? 丸目が可愛い「IMV Origin」とは
「ジャパンモビリティショー福岡2025」で、トヨタが斬新な「IMVオリジン」を展示します。一見「未完成」に見えるこのクルマは、荷台を“現地で作る”という驚きの発想で開発されました。なぜトヨタはあえて完成車を作らないのか。その深い狙いと実車の特徴を解説します。
トヨタの「未完成車」が福岡へ! 荷台は“現地で作る”新型「IMVオリジン」が凄すぎる
2025年12月18日から21日にかけて開催される「ジャパンモビリティショー福岡 2025」。
ここでは、トヨタが提案する非常にユニークなコンセプトカー「IMV Origin(IMVオリジン)」が展示されます。
一見すると「作りかけ」にも見えるこのクルマ、実は大きな狙いがありました。

マリンメッセ福岡などを会場に、まもなく開催される「ジャパンモビリティショー福岡 2025」。
最新モビリティが数多く集結する中で、来場者の視線を釘付けにしそうなのが、トヨタの「IMV Origin(IMVオリジン)」です。
このモデル、2025年10月-11月に開催された「ジャパンモビリティショー2025」で世界初公開されました。
パッと見ただけでは「キャビンとシャシだけの未完成な軽トラック」のように映るかもしれません。
しかし、この「未完成」であることこそが、IMVオリジンの最大の価値であり、革新的なコンセプトなのです。
IMVオリジンは、アフリカをはじめとする新興国の未来を見据えて開発されました。
その最大の特徴は、トヨタがあえて「完成車」を作らず、シャシや運転席といった「土台」のみを提供し、後ろの荷台部分は現地のユーザーが自由にカスタマイズするという点にあります。
トヨタは、なぜこのような「土台提供」というスタイルに行き着いたのでしょうか。その背景には、開発の起点となったアフリカ農村部における切実な「移動の課題」があります。

開発を担当した太田博文氏によると、アフリカ現地の農村部では、いまだにバイクが主要な移動・輸送手段となっているといいます。
しかし、二輪車では当然ながら運べる農作物や荷物の量に限度があり、悪路の走破性や安全性にも課題が残ります。
「荒れた道を走れて、なおかつ手頃なクルマがない」。この制約が、現地の人々が生活を豊かにするチャンスを阻害している現実がありました。
そこでトヨタは、「人々が安心して乗れるクルマとしての基本性能(土台)まではメーカーが責任を持ち、それ以外の部分は現地の人々に委ねる」という発想転換を行いました。
現地で手に入りやすい材料を使い、現地の人の手によって架装を行う。サトウキビ農家なら長い荷台を載せ、人を乗せるなら座席を取り付ける。
その土地の暮らしに合わせて、クルマ自体が柔軟に姿を変えられるようにしたのです。

トヨタの多目的モビリティといえば、アジアなどで展開される「IMV 0(アイエムブイ ゼロ)」があります。
しかし、IMVオリジンはターゲット層や設計思想において、さらに踏み込んだ特徴を持っています。
特に重視されたのが「修理のしやすさ」です。ディーラー網が整備されていない地域では、「30km先で故障しても、自分で直して帰ってくる」必要があります。
そのため、機能は「走る・曲がる・止まる」に絞り込み、悪路に耐える高い最低地上高を確保。
さらに、汎用部品を多用することで、特殊な設備がなくても修理できる構造を目指しました。これは、先進国の「メンテナンスフリー」なクルマとは真逆を行く、たくましい設計思想といえます。
トヨタが目指しているのは、単にクルマを売ることだけではありません。前出の太田氏は、現地にある産業との「共創」を掲げています。
現地には、クルマの修理や加工を得意とする職人が数多く存在します。
トヨタが提供する「土台」に、彼らの技術が組み合わさることで、単なる修理工場を超えた新しいビジネスやサービスが生まれることを期待しているのです。
「完成品を押し付けるのではなく、『一緒に何ができますか?』と問いかける」。 この姿勢こそが、IMVオリジンの真髄といえます。
パワートレインに関しては、基本的にはBEV(電気自動車)を想定しつつも、インフラ未整備地域のためにガソリン車も搭載可能なプラットフォームとして設計されています。
10年、20年という長いスパンで、その土地と共に成長していくクルマ、IMVオリジン。
今後の展開が気になる1台です。
Writer: くるまのニュース編集部
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